世界ふれあい街歩き

場所

　サンティアゴ・デ・コンポステラはイベリア半島北西端に位置するガリシア州の州都で、人口は約10万。この一帯は大西洋からの湿潤な風の影響で1年を通じて雨が多く、緑に恵まれていることから「グリーン・スペイン」ともよばれています。
　またアイルランドやスコットランド、フランスのブルターニュ地方と同じケルト文化圏に属し、スペインの中では異色の存在です。
　サンティアゴ・デ・コンポステラの歴史は紀元1世紀、キリスト十二使徒のひとり、聖ヤコブがこの地に葬られたことに始まります。
　9世紀に、羊飼いが星の光に導かれてその遺骨を発見。ここからラテン語で「星の野原」を意味する「コンポステラ（Campus Stellae）」の名がついたとも言われています。

巡礼入門

　最近は日本人の巡礼者も増えてきました。サンティアゴ巡礼の基本情報をお教えしましょう！
　巡礼路には代表的な「フランス人の道」の他、「ポルトガルの道」「銀の道」などがあり、地形や気候もさまざまです。自分に合った道を探してみてください。
　巡礼のシンボルは、飲料水を運ぶひょうたん、つえ、そしてホタテ貝。特にホタテ貝は街の至る所にあり、これをたどれば、迷わず大聖堂まで行けるようになっています。道沿いに宿泊施設が用意されているので、宿に困ることは、ほとんどありません。
　服装や持ち物に決まりはありませんが、巡礼手帳は必携です。通過した場所のスタンプを押して、歩いた距離を証明するのです。
　サンティアゴに着いたら、ミサに出る前に巡礼事務所へ行くのをお忘れなく。巡礼手帳を見せて、証明書を発行してもらってください。

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介！

ルシア・カサルさんはサンティアゴ・デ・コンポステラ大学で幼児教育を学んでいます。おいしい物が大好きなルシアさんが、この街を代表する味を紹介してくれます。

ケイマーダ

ブドウの搾りかすからつくった「オルホ」というブランデーがベースの、食後に飲むカクテルの一種。特徴的なのはその作り方です。焼き物の器に注いだら、砂糖、コーヒー豆数粒、レモンの皮を加えて、火をつけ、右手で時計回りにかき混ぜながらこんな呪文を唱えます。「ミミズク、フクロウ、カエルに魔女よ。悪霊、鬼に悪魔よ。霧に包まれた沃野（よくや）の精霊よ。まじない師の呪文よ。このひしゃくで地獄の火にも似た炎を掲げれば、魔女もホウキに乗って逃げだすだろう。海に身を投げるために」ガリシア地方に根づく、ケルト民族の神秘主義的な信仰のひとつなんです。

タコのガリシア風

「タコのガリシア風」はスペインを代表する料理のひとつですが、本場はここ。ガリシア州はスペイン全体の漁獲量の4割を占める、シーフード天国なんです。やわらかくゆでたタコを、ゆでたジャガイモにのせて、塩とパプリカとオリーブオイルをかけるだけ。超シンプルだからこそ、素材のよさがものを言うんですね。

エンパナーダ

エンパナーダはここガリシア地方の典型的なパンで、パイのように、中にさまざまな具を包んで焼き上げます。魚が豊富なガリシアでは貝やタラなどシーフードが人気。ボリュームがあり、おかずとパンが一緒になっていて持ち運びに便利なことから、昔は巡礼者に重宝されたんですよ。彼らのエネルギーの源だったんですね。

街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます！

地の果てで夕日を見る！フィニステーレ

語り：温水洋一

　サンティアゴにゴールした巡礼者たちが最後の最後に目指すという最果ての地へ！
　フィニステーレとは「地の果て」という意味。スペインの西の外れにあるここから海に沈む夕陽を見るのが、巡礼の総仕上げなんだとか。
　バスでおよそ1時間半。海が見えてきました。ビーチでは貝殻を探す巡礼者カップルに出会いました。その昔、巡礼者はここまで来た証（あかし）に貝殻を持ち帰り、やがてそれが巡礼のシンボルになったんだそうです。
　街なかのバルに立ち寄ると、お店の中には貝殻やサングラス、瓶詰めの砂、等々、巡礼者の置き土産がたくさん。バルのご主人いわく「フィニステーレは巡礼のエピローグ」なんだそうです。ここは旅の思い出を閉じ込めておく、タイムカプセルのようなバルなんですね。
　巡礼者が目指すのは岬の突端です。新大陸が発見されるまでは、ここが世界の終わりだと信じられていました。昔はこの場所で服を燃やし、沈む夕日を見て、それまでの人生に別れを告げたんだとか。今もたくさんの巡礼者がここで夕日を眺め、巡礼の旅を締めくくっていました。