世界ふれあい街歩き

場所

　フランス南東部、パリの南南東700kmに位置するアビニョン。ローヌ川左岸、山峡から平野に開いた三角州の頂点に位置する街は、古くから交通の要地として栄え、12世紀にはプロバンス地方の辺境地区の中心都市となりました。 14世紀、ローマからカトリック法王庁が移され、約100年にわたってキリスト教の要の地として発展。法王が7代にわたりアビニョンに暮らし、この時期は最も繁栄した時代です。多くの王侯貴族や学者、詩人、芸術家がイタリアから移り住み、人口が急激に増加したといわれます。
　以後、フランス革命に至るまで大司教区が置かれ、フランス・カトリックの中心地であり続けました。旧市街のシンボルとなる旧・法王庁宮殿とその周辺の歴史地区は、1995年にユネスコ世界遺産に登録されています。全長4.3kmに渡る城壁に囲まれた旧市街には、およそ15000人が暮らしています。

アビニョンと橋の歴史

　♪アビニョンの橋の上で踊るよ踊る…、今や世界で有名な『アビニョンの橋の上で』の舞台になった「サン・ベネゼ橋」から、街の歴史を紹介します。
　もともと橋はローヌ川を通る船から通行料をとる目的で造られ、川の中ほどまでしかありませんでした。対岸まで続く美しい橋に生まれ変わったのは、法王庁がアビニョンに置かれた14世紀。中世最大級といわれるゴシック建築様式の宮殿で暮らした歴代法王たちによって、イタリアから呼び集められた芸術家や職人たちは、この橋を渡ってやって来ました。その後、ローヌ川の度重なる氾濫で橋は何度も崩壊。7世紀以降、修復費がかさみ、再建は断念されます。400年たった今、フランス国内の専門家が集まり、橋の姿をCGで再現するプロジェクトが発足。ローヌ川の上を蛇行するように延びる、全長900mの、美しい橋の姿がよみがえります！

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介！

案内人は、中世をこよなく愛する楽団４人組。アビニョンの歴代の法王たちは、なんと何十人もの専属のコックに新しい料理を開発させたのだそう。芸術だけでなく食文化も発展させんですね。そんな法王たち、ゆかりの食べ物を探し歩くのが4人の趣味。当時の楽器を手にして街を練り歩きながら、中世オタクならではの品々を紹介してくれます！

法王庁

第1位はアビニョンのシンボル「法王庁」と名付けられたチョコレート。中世から食べられてきた「ピスタチオ」や「アンズ」「イチジク」がトッピングされています。この3つの材料に、法王にまつわる意味が隠されています。茶色やカーキ色、赤色やオレンジは、聖職者が身にまとう衣の色！深い味わいと、法王庁時代の面影を楽しめます。

パパリン

第2位は、アビニョンの人なら、誰もが一度は食べたことがあるというお菓子、パパリン。その名も「法王さま」というこのお菓子は、いわゆるボンボン。チョコレートでコーティングした中に65種類もの薬草を煮詰めてつくられたお酒がたっぷり入っています。カカオも薬草酒も体に良いと評判で、特に年配の人たちに愛されています。

ブラサド

第3位は、中世から食べられてきたというパンの一種「ブラサド」。朝ごはんの定番と言われるだけあってボリューム満点。昔はドーナツ型をしたブラサドを女性たちが腕に通し、市場で売り歩いたそう。材料も、作り方も当時のまま。練り上げた生地をオレンジの皮を煮立てて香りづけしたお湯で、ゆでるんです。かみごたえたっぷりです！

街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます！

世界遺産の巨大水道橋を歩こう！

語り：温水洋一

　アビニョンからバスで西へ40分ほど、ローマ時代の水道橋「ポン・デュ・ガール」へ！世界遺産です。朝霧が立ちこめる中にそびえたつ巨大な水道橋は圧巻。高さ48m、全長は275m。1世紀に造られたという水道橋は3層構造で、一番上は35個のアーチ、真ん中は11個、一番下は6個のアーチで支えられています。2000年前に橋を造り上げた職人さんたちの技術の高さが伺い知れます。
　対岸まで歩ける一番下の橋の上を歩くと、橋桁の石に何やら刻まれています。その前で話し込んでいた2人の女性に尋ねると、刻まれているのは、修復に使った道具や年号だそう。また、昔の職人さんは修行のために全国を歩き回って技術を磨いたと教えてくれました。こうした石の記録は、この橋に300以上もあるんだそう。女性の一人がちょっぴり恥ずかしそうに「野うさぎ」の彫刻について教えてくれます。建築当時、橋の永続を願って刻まれた橋のシンボルなんだとか。でも、その野うさぎに、ちょっとびっくりな裏話が…！