これまでの街歩き

ロンドン・ウェストミンスター界わい/ イギリス

2013年2月12日(火) 初回放送

語り:松田洋治

撮影時期:2012年12月

街の「パブの退役軍人」

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 ウェストミンスターで働く人たちが集まるパブの中に入ると、赤い制服を着たおじいさんの姿が目に留まりました。声を掛けてみると、このパブの常連客の一人で元軍人さんなのだとか。退役した陸軍兵士のために建てられたチェルシーの王立保養院で暮らし、ほぼ毎日、ここに通っているそうです。王立保養院は1682年に当時の君主・チャールズ2世が設立した、由緒ある施設。イギリスでは昔から、最前線で戦った軍人を手厚く保護してきた歴史があるんですね。「その赤い制服は軍服なんですか?」とおじいさんに聞くと、「保養院から2マイル以内は青い制服、2マイル離れたら赤い制服を着るんだ」と教えてくれました。
 「保養院ではいい子にしていないと、追い出されることもあるんだよ。喫煙したせいで3か月も放り出されたことがあるんだ」と、元気に笑うおじいさん。第二次世界大戦など、さまざまな苦労を経験してきたはずなのに、ユーモアを忘れない明るい笑顔がステキでした。

街の「広場の人気者、タカ匠(じょう)」

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 1805年の“トラファルガーの戦い”で、イギリス軍を勝利に導いたネルソン提督の像がそびえるトラファルガー広場。ここにあるライオンの像を見ると、なんと本物のタカが止まっています!やがてタカは飛び立ち、広場にいるおじさんの腕に止まります。話を聞いてみると、この男性は“タカ匠”で、タカを操ってハトを追い払う仕事をしているそうです。この広場だけでなく、オフィスビルやウィンブルドンのテニスコートでも仕事をしているのだとか。
 彼がタカを飼い始めたのは、20年ほど前。もともとの猛きん類好きが高じて、タカ匠になったのだそうです。“リジーちゃん”という名前のこのタカとおじさんは、みんなの注目を集めています。おじさんは話し掛けてくる人たちに、ハトよけの仕事について丁寧に説明しています。仕事をしながら、いろいろな人とタカの話をするのが楽しみのひとつなんだ、とうれしそうでした。

街の「王室御用達の紳士服店」

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 裁判所の近くで、高級そうな紳士服のお店を見つけました。大きなウィンドウ越しに、何か不思議なものが見えます。お店のマネージャーのジェラルドさんが中に案内してくれました。
 先ほどの不思議なものを見せてもらうと、なんと“かつら”でした!中世の人がかぶりそうなクラシックなかつら、一体誰が使うのでしょうか?実は、現役の弁護士や判事が今でも法廷で使うものだそうです。隣には、法廷用の黒いローブもあります。このお店は300年の老舗、王室御用達の紳士服店だったのです。
 地下の工房では、女性たちが静かにかつらを作っていました。その一人、サンドラさんは、かつらを作り続けて30年になる大ベテランです。昔、イギリスでかつらが大流行した時、このお店は手入れのいらないかつらを発明し、特許を申請したのだとか。それ以来、200年近くもその技法が受け継がれているんですって。イギリスの伝統は、こんなところにも残されているんですね。

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