2015年8月4日(火) 初回放送
語り:勝村政信
撮影時期:2015年5月
大きな通りを歩いていくと、モダンなオフィスビルの前で男の人が2人、手に長いものを持って話し込んでいます。聞けば、農機具で、2人は農家なんだそう。こんな所で農業を?と聞くと、「ついて来なよ」と、オフィスビルの中へ。うながされるままエレベーターで屋上へ上がると、そこはなんと、一面の畑です。
ここは2人が経営する屋上農園。5年前に農園づくりから始め、今では、ルッコラ、水菜、ラディッシュ、キュウリ、トマトなど、実にさまざまな野菜を育てています。2人は、ニューヨークに立ち並ぶビルの屋上が、ほとんど有効利用されていないことに目をつけ、このビジネスを始めました。屋上の緑化は、温暖化の緩和や雨水の吸収に有効で、更においしい野菜が作れれば一石三鳥、というわけなんだそうです。すでに2つ目の屋上農園もつくり、夢はニューヨーク中のビルの屋上を農園にすることなんだと教えてくれました。
ギリシャ系の移民が多く暮らす地区を歩いていくと、なにやら陽気な音楽が。見れば、理髪店の店内でおじさんが気持ちよさそうに弦楽器を奏でています。楽器はブズーキと言って、ギリシャのもの。元々プロの音楽家だったおじさん、店が暇なときにはギリシャの音楽を奏でているんだとか。
おじさんは音楽家になるためにギリシャからアメリカに渡って来ました。39年前に故郷の村から連れて来た奥さんと結婚すると、この国で娘2人を授かり、更に6人の孫を授かりました。奥さんは最初、2〜3年でギリシャへ帰る予定だったとのことですが、大家族になったことで、アメリカに住み続ける決心をしたのだそうです。
「人生は予定通りにはいかないわ。だからロマンチックなのよね。」奥さんは笑います。移民の人たち、いろんな人生を経てアメリカで暮らしているんですね。
閑静な住宅街で、散歩中の親子に出会いました。見ていると、家と家の間の細い路地へ曲がっていきます。どこへつながっているんだろうと、その路地へ入っていくと、立ち並ぶ家々の裏に、緑あふれる大きな中庭が。数人の大人と子供たちが、イスをならべてくつろいでいます。
聞けば、このエリアはサニーサイドガーデンズと呼ばれ、人口増加によりマンハッタンの住環境が悪くなっていった1920年代に、緑あふれる風通しの良い住宅街を作る目的で建設されたんだとか。中庭は住民によって共有され、休日などには住民たちが集まり、バーベキューをしたりするんだそうです。この中庭には子供たちもよく遊びに来て、居合わせた大人たちが、目を配って、時には遊んであげるんだとか。
移民たちが集まり、発展し、姿を変えていく巨大都市ニューヨーク。しかし一方で、中庭には昔ながらのご近所のつながりが残っていました。