これまでの街歩き

フランドルの香る街
リール/ フランス

2018年10月9日(火) 初回放送

語り:キムラ緑子

撮影時期:2018年7月

街の「フランドル」

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 リールはもともとベルギーやオランダと同じフランドル地方であったため、フランスの他の街とはちょっと違う街並みが見られます。旧市街の中心にあるのが「グランプラス」という広場。ここにあるルネサンス期に作られた証券取引所はフランドル建築様式の代表。装飾性にあふれたカラフルな外観が特徴です。四方をきれいな建物に囲まれた広場は、市民ならだれでもわかる待ち合わせの場所だそうです。20世紀初頭に作られた商工会議所もフランドル様式。豪華な建物の中にオフィスを構える若者たちは、ちょっぴり自慢そうでした。建築以外にも、ゴーフレットという焼き菓子や、結婚式で華やかな帽子をかぶる習慣、地ビールなど、フランドルの伝統が今も息づいています。

街の「産業遺産」

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 リールは、中世以降は主に繊維取引、19世紀半ばからは繊維業や重工業と、常に商業、工業の街として発展してきました。旧市街を離れると、そこここにレンガ造りの煙突や元工場が見られます。大部分が繊維工場で、現在は郊外に移転しましたが、建物は壊さずに、文化センターや住宅などさまざまな形で再開発を進める動きが進んでいます。
 大きな製糸工場跡をキャンパスに転用したリール大学はその典型。中は大改装されていますが、地下に一か所、建物の古い土台をそのまま残してある場所があります。案内してくれた法学部の先生は、歴史的に重要な建物だけでなく、工場がある街のたたずまいを保存し、労働者の歴史を忘れることなく残していきたいと語ってくれました。

街の「労働者の文化」

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 商業、工業の街リールでは、工場などで働く人たちから生まれた独自の文化があります。リールの人形劇は、19世紀末に生まれました。今では子ども向けの作品を上演していますが、もともとは大人向けの内容で、主なお客は工場で働く労働者だったそう。時事ネタを人形を使って面白おかしく伝えるスタイルが大人気だったそうです。
 また、「ファンファーレ」と呼ばれるブラスバンドは、もともと炭鉱や工場で働く人たちがクラブ活動的に始めたものですが、そのうち勤務時間中に練習する許可が出るほどの人気になったそう。こうした文化は街の人々に引き継がれ、出会ったミュージシャンの女性は、仲間と「同じ時間を分かち合う」ことが何よりも楽しいと語ってくれました。

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