これまでの街歩き

愛の天国
アビニョン/ フランス

2019年2月12日(火) 初回放送

語り:田畑智子

撮影時期:2018年11月

街の「愛の教会」

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 路地を抜けると緑が豊かに生い茂る一角が。どうやら公園。入ってみると、奥には古そうな壁に小さな入口を発見。入っていくと、地元の住民らしき人々がアーチの壁の近くで集まって話し込んでいます。聞こえてきたのは、「愛こそすべて」とか「愛は深い」など・・・。声を掛けると、皆さん「小さい天国」と呼ばれるこの地区で暮らし、愛の詩について語り合っているとのこと。突然、大人顔負けの「愛の詩」を詠み始めた少年には思わず、あんぐり…。
 この一角、かつて教会の礼拝堂があった所で、法王庁が置かれた時代に、イタリアから来た詩人ペトラルカが街の娘と恋に落ちた場所なんだそう。悲恋に終わった後も、自分の最期まで、愛の詩を書き続けたというペトラルカは、街に大きな影響を与えた人なんだとか。700年経った今も、人々に語り継がれるペトラルカの恋物語。

街の「洋裁学校」

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 やけに若者たちがいっぱいいる…と思いながら歩いていると、道端に気になる物を見つけました。何かの葉っぱのよう。なぜこんな所に?と気になっていると、若者たちが現れ、"葉っぱ"を片づけ始めました。聞けば近くの洋裁学校の学生たち。「バナナの皮とパイナップルの葉を乾かして洋服を作るんだ」というからビックリ!若者たちを呼びにきた先生に誘われて拝見させて頂くことにしました。
 学校を訪ねると、若者たちが本当にバナナの皮でブラジャーやスカートを作ったり、パイナップルの葉1枚ずつをミシンで縫い合わせたり。なぜバナナとパイナップルで服作りを教えているのか先生に尋ねると、「資源のない時代を生き抜く知恵と力を養うため」なんだとか。「やれないことはなにもない」ということを知ることが未来を切り開くことになるのだそう。

街の「みんなの天国に集う愛の詩人たち」

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 夜も趣のある路地を歩いていると、ガラス窓に真っ赤な特大のハートを発見!そのインパクトに釣られて中をのぞくと、ハートの裏側に何やらいっぱい小さな紙が貼ってあって、みんな楽しそうに眺めています。入口で話し込んでいた男性に声をかけると「ここは、みんなの天国なんだ」。誰でも自由に入れるという天国に、ちょっとお邪魔することに。
 ハートに貼られていた小さな紙には街の人たちが書いたという、心がくすぐられるような「愛の詩」がたくさん!周りから、「人生においては誰もが詩人だよ」、「詩は言葉の音楽なの」という言葉が聞こえてきます。愛の詩人ペトラルカに憧れて詩を書き始める人も多いそう。アビニョンの夜は、優しい愛の言葉に包まれ、更けていきます。

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