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放送内容

医療・健康

認知症の第一人者が認知症になった

初回放送

総合 2020年1月11日(土)
午後9時00分~9時49分 総合

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〝君自身が認知症になって初めて君の研究は完成する″かつての先輩医師の言葉を胸に、自ら認知症であるという重い事実を公表した医師がいる。認知症医療の第一人者、長谷川和夫さん(90)。「長谷川式」と呼ばれる早期診断の検査指標を開発、「痴呆」という呼称を「認知症」に変えるなど、人生を認知症医療に捧げてきた医師だ。NHKはこの1年、長谷川さんとその家族の姿を記録し続けてきた。認知症専門医が認知症になったという現実をどう受け入れ、何に気づくのか。カメラには、当事者としての不安、家族の葛藤…その一方、専門医ならではの初めての気づきも記録されている。認知症になったら、不確かな状態がずっと続くと思っていたが、正常な状態も確かに存在するということ。言葉が分からくなって話せないのではなく、「自分の言葉」に自信がなくなり、殻に閉じこもってしまうということ。確かさを取り戻すためには、他者との絆が重要であること…。
人生100年時代を迎え、誰もが認知症になりうる時代。長谷川さんが気づいた新たなメッセージを届け、認知症新時代を生き抜くための「手がかり」と「希望」を紡ぐ。

放送を終えて

およそ500日にわたった取材。長谷川さんは取材を受けることを「仕事」という言葉で表現することがあります。「認知症とは何か」カメラを通して伝えることは、現役の医師時代と同じ〝仕事″だったのではないかと…。
撮影の終盤、「最近こんな本を読んでいる」と仰って、恩師の著作を見せてくれました。「心に残る言葉はありましたか」と伺うと、ある一節を読み始めました。
「老人で一番嬉しいことは、まだ社会の役に立つことができると自覚できることである」
認知症になっても、症状が進行しても、「社会の役に立ちたい」という思いが長谷川さんを突き動かしているのではないかと強く感じました。
番組で紹介できなかった長谷川さんの言葉…。「認知症の人は、急にぱっと認知症になったわけではない。通常の状態と連続しているんだ。だから普通の人なんだよ。」
私たちは、無意識に〝認知症の人″と線引きして接していないか。とても大切なことを問われたような気がしています。私たちの取材に、〝仕事″として向き合い続けて下さった長谷川さん、ご家族に心から感謝申し上げます。
加藤 弘斗ディレクター



長谷川さんとの出会いは12年前。長年、私が担当している認知症フォーラムへの登壇の際にお会いしました。誰もが認める第一人者。「認知症を考えることは社会のあり方を考えること」と明快に語る姿は、まばゆいばかりに輝いてみえました。再会を果たしたのは2年前。熱く語る認知症論と、屈託なく笑う表情は以前と同じでした。「認知症になっても変わらぬ長谷川さんをありのままに伝えたい」。この時そう強く思いました。
印象に残る取材の一つがデイサービスでした。その日は、長谷川さんが一年ぶりにデイを再開した日で、奇しくもご自身90歳の誕生日でもありました。実はあの時、長谷川さんはある本を手にしていました。それはかつて自らが執筆した認知症の本。「日中に読むために持ってきた」と私たちに話してくれましたが、何か別の理由がある気がしてなりませんでした。ただ実際、長谷川さんが、その本を読むことはありませんでした。
そして後日、長谷川さんは“デイサービスで感じた孤独”を口にしました。それを聞いた時、「あの本は他の利用者やスタッフに自分を紹介するために持って行ったのではないか」、「医師として半世紀を生き抜いた証として持ち歩いていたのではないか」…様々な思いが交差しました。長谷川さんが手にしたあの本が何を物語ろうとしていたのか、今も深く考えさせられます。
神 悟史ディレクター

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