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Nスペeyes

時代のニーズにあわせて変化を遂げてきたNHKスペシャル。テレビが完全デジタル化し、
インターネットが発達したいまのNスペのありようと未来の姿について、角英夫事務局長に
お話を伺いました。

第3回 2012年5月1日更新

NHKスペシャルはチャレンジする

インタビュー 角英夫事務局長

1983年NHK入局。Nスペ誕生の頃から20年
以上にわたって制作。主な番組に「社会主義の
20世紀」「家族の肖像」「激流中国」「マネー資本
主義」「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」など。
05~07年「クローズアップ現代」編責。11年より現職。
角英夫事務局長

NHKスペシャルの生命線、サムシング・ニューの精神

 前身番組であるNHK特集から引き継がれた「サムシング・ニュー」というキャッチフレーズ。その精神はNHKスペシャルが24年目を迎えた今でも番組制作の生命線となっています。我々が目指す「サムシング・ニュー」とは何か?それは「見たことのないものをお見せする」ということに尽きるのですが、一口に「見たことのないもの」と言ってもその方向性はさまざまです。
 最先端技術を駆使した映像美、世界や日本で起きている出来事の深層に迫るジャーナリズム、心の琴線に触れる感動的なドキュメンタリー、まだ世に知られていない学問の分野をいち早くご紹介することもあります。
 作られる番組のジャンルに制限はありません。ただひとつ、各提案がNスペとして採択される際の条件は、どこかに突き抜けた「すごさ」があること。私も20年Nスペの現場で苦しみながら制作を続けてきましたが、この突き抜けた「すごさ」の有無で番組の価値が変わると感じてきました。
 感動的であったり、スクープであったり、チャレンジングであったり、そのベクトルはどこを向いていてもかまいま
せん。それがサムシング・ニューの継承であると思います。

銀河宇宙オデッセイの画像

夢を育む番組づくり

 「銀河宇宙オデッセイ」(1990年放送)シリーズなど、宇宙を扱った多くの番組を制作
してきたNHKスペシャル。実は日本人宇宙飛行士にお話をうかがうと「Nスペを見て
宇宙への夢を膨らませた」とおっしゃる方もいらっしゃるんです。
 そんなふうにNスペが若い人たちの将来の志につながっていけばうれしいですね。
そういった意味でも、宇宙はもちろん、さまざまな分野の学問、あるいは産業の最前
線をご紹介していければと思っています。

Nスペを支える柱

 多岐にわたるテーマを扱うNスペのなかで大きな柱となるのが、当然ではありますが、世界や日本で起きている事実を他に先駆けていち早く伝えるジャーナリズムの追求です。中東や北朝鮮、中国など世界各地のホットイシュー、リーマンショックやユーロ危機などの経済問題にも真っ向から切り込んできました。日本国内では水面下で進行している深刻な実態にも大胆に光をあてます。「ワーキングプア」(2006年放送)や「セーフティーネット ・クライシス」(2008年放送)など、日本が直面する雇用や社会保障のひずみの実態を描いて世論を喚起した番組もあります。
 また、東日本大震災が起こった去年は、公共放送の使命としてあらゆる組織を結集して取り組みました。およそ100本のNスペのうち47本を震災関連の番組が占めました。今年3月には記者やディレクターが震災直後から地道に記録を続けてきた番組を9日間連続で放送。多くの反響をいただきました。そして、Nスペのスタート以来、20年以上にわたってさまざまな切り口で取り上げてきた原子力問題についても追い続けています。
 もうひとつの柱はテレビ表現の可能性の限界に挑戦しフロンティアを広げることです。さまざまな最新技術を駆使して、未踏の領域にカメラが入り、見たことのない映像をお届けすると言えばよいでしょうか。その歴史は、秘境にカメラが入ったN特「シルクロード」(1980年放送)から始まり、Nスペ「驚異の小宇宙 人体」(1989年放送)のように人知を超えた世界を特殊撮影やCGで映像化することにも力を注いできました。今日では高感度カメラを宇宙ステーションに持ち込んで宇宙飛行士しか見ることのできなかった風景をお届けする「宇宙の渚」 (2012年4月放送)やハイスピードカメラで世界的アスリートの肉体の可能性を捉える「ミラクルボディー」(2012年7月放送)など、よりスケールアップしながら様々な挑戦を続けています。

人が作るNHKスペシャル

 「ふだんは見ることができないものをお見せする」ことがNスペの使命であるとお話しましたが、そうした番組づくりを支えているのが、何代にもわたって引き継がれてきたノウハウや人脈、そして専門性を備えた豊富な人材です。
 特にジャーナリズムの分野では、何年にもわたる交渉や人とのつながり、そして何百という人へのきめ細かな取材が、近い将来に噴出するであろう問題を浮き上がらせていきます。
 テーマによっては、ひとりの取材者がノンフィクション的に追うスタイルが効果的なものもありますし、多くの記者やディレクターが足で稼いだ地道な取材を結集することで真実が浮かび上がってくる場合も数多くあります。
 インターネットが発達して、情報を持つ組織や個人がダイレクトに情報発信する時代となりました。受け取る側も欲しい情報だけをキャッチするスタイルが増えています。しかし、情報の「発信」と「ニーズ」の交換だけでは、抜け落ちてしまう大切な事実や視点は数多くあります。Nスペでは、あるときは記者やディレクター個々の専門性を生かし、あるときは組織力を生かして、このジャーナリズムの領域で貢献し続けなければならないと思っています。また、それは必要とされ続けるだろうと考えています。

角英夫事務局長

Nスペの今と未来

今の日本では、世界で起きていることをはじめ、難しい社会問題や一見地味に見えるテーマへの関心が総合的に低下しているように感じます。一方で、刺激的な映像がますます氾濫する傾向があります。視聴者を飽きさせず、かつ複雑化する世界を丁寧に伝えること、その両方を満たすのは、非常にハードルが高くなってきているわけです。そんななか、どうすれば、ワクワクしながら番組に触れてかつ見識を深められる、あるいはジャーナリズム的・学問的関心を維持していただけるようにできるのか。テーマの選択や映像づくりはもちろん、新しい話法の開発やテレビ技術の革新を取り込んだ研鑽(けんさん)が不可欠ですね。
 地デジ化によって大画面のデジタルテレビが一層普及したことで、映像表現も変化してきました。高精細映像での撮影が当たり前となり、大きな画面で高画質な迫力あるスペクタクル映像をお見せできるようになり、その場に居合わせているような没入感がテレビの新しい魅力になっています。Nスペはこの領域のフロントランナーでありたいと願っています。大型画面で見ることを前提とした撮影や編集の工夫が欠かせません。その一方で、携帯端末での視聴にも対応した番組作りの研究も進めています。
 また、視聴者との双方向性にも力を入れています。みなさんとのコミュニケーションという点では、ネットを使った意識調査や、その結果を瞬時に画面に反映できるような仕組みを駆使した番組制作に挑戦。シリーズ日本新生では、さまざまな視聴者参加型ドキュメンタリーの形を模索しています。
 さらにいま取り組んでいるのが、急速に進むグローバル化への対応です。NHKスペシャルは、この20年、イタリア賞、国際エミー賞、モンテカルロ国際映像祭など権威ある国際コンクールで何度もグランプリを受賞していますし、各国のゴールデンタイムで放送されるという機会も増えてきています。去年を例にとるとNスペのほぼ半数を英語化し、なんらかの形で国際発信しています。今後、ますます制作プロセスや放送のグローバル化が進みますので、国際マーケットを意識した作り方が重要になってきています。
 常に新しさを取り入れて革新すべきところは変え、変えるべきでない大切な部分は守っていく−−−。NHKスペシャルはテレビドキュメンタリーのフラッグシップであり、かつ実験場でありたいと願っています。チャレンジすることがNスペの存在意義と信じていますからね。

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