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Nスペeyes

朗読の第一人者であり、NHKスペシャルのナレーションといえば“この人”といわれたのが長谷川勝彦さん。
話題作や受賞作を含め、担当された作品は100本を超えています。
20年以上、Nスペを語りで支えてきた長谷川さんに当時の思い出などを伺いました。

第4回 2012年5月30日更新

ドキュメンタリーのなかのドラマを語る

インタビュー 長谷川勝彦さん

元NHKアナウンサー。
NHKスペシャルをはじめドキュメンタリー番組
の語りやニュースで活躍。2009年、ドキュメンタリーの
ナレーションで放送文化基金賞受賞。
現在はフリーとしてNスペなどの番組のナレーションを
続けているほか、講演会や朗読教室の活動も行っている。
著書『メディアの日本語』(万葉新書)
長谷川勝彦さん

原点は『ドキュメント 大平洋戦争』

——Nスペの最高視聴率を記録した「オウム真理教~暴かれた“王国”の軌跡~」(1995年)も長谷川さんが語りをつとめられたんですね。
あのころはNスペだけでなく、ラジオでも連日オウム関連のニュースを読んでいた記憶があります。

——そんななか、とくに思い出深い番組は?
いまの私の原点であり、ナレーターとしてのたしかな手応えを得た「ドキュメント 大平洋戦争」(1992~1993年 全6集)です。いまでも覚えているのですが、番組が終了してしばらく経ったころ、局内のエレベーター前で一緒になった山川静夫アナウンサーから「長谷川ちゃん、あの番組よかったよ」と声をかけられたんです。それがとても嬉しかったし、大先輩の山川さんから言われたことである種の自信につながりました。

——すでに十分なキャリアを積まれていた長谷川さんが、改めて自信を得られたというのが少し意外です。
若手アナウンサーの話のように聞こえるでしょう(笑)。50歳を過ぎたころで、たしかにキャリアは積んでいました。だけど僕だけじゃなく多くのアナウンサーは、いつまでたっても自分は未熟だという意識があるんです。40歳過ぎたら一人前になっていなければダメというふうにも思っていましたが、一人前感を持てたのは定年退職をしてからかも知れません。

——「ドキュメント 大平洋戦争」で得た手応えというのは?
未熟感を持ちながら無我夢中で取り組んでいたのですが、「ああ、こういうドキュメンタリーのナレーションって面白いな」と思ったのが、第4集「責任なき戦場~ビルマ・インパール~」でした。無謀な作戦の裏で何が起きていたのか、ふたりの中将の意見の対立などを描いたものです。つまりドキュメントでありながら対立のドラマだった。そのドラマを語る快感というようなものを感じたことが大きな手応えとなりました。

——あの第4集は文化庁芸術作品賞を受賞、内外でも高く評価された番組でしたね。
Nスペのような映像構成番組のナレーションのカギは、物語=ドラマをどう読むかということ。それにたどり着いたのは、それからさらに4,5年経ってからでしたが、いま振り返るとあの第4集のときにつかんだのかも知れません。ドキュメントは事実、ドラマはフィクションで全然違うものだというふうに思ってしまいます。しかし、事実の中にドラマを見出す。それがNスペのような番組で行われていることで、そんなディレクターの苦心が、そのころから少しわかってきたような気がします。

語りを通して見つめたNスペ

——Nスペの制作者は『ここぞ』という自信作を長谷川さんに依頼していたとか。
Nスペだからといって、他の仕事と区別したということはありません。建て前上は、何にでも全力を傾注してきましたよ(笑)。ただ、Nスペは文字通り看板番組ですから、現役時代は指名されるたびに嬉しかったですね。

——そこで意識されたことは?
たとえば戦争をどうとらえるのか、それぞれの視点で自覚的に番組を作ってこられた優れたディレクターがいっぱいいると思うんですよ。「ドキュメント  大平洋戦争」の中田整一さんもそんな一人ですね。私は残念ながら大平洋戦争に対して、そういう自覚的な取り組みはしていません。でも、あの戦争についてどれだけ知識があるかということが問題なのではなく、今の社会に生きている一人の市民として、その番組が示す事象にどう向き合えばよいのか、「台本を読む」とはそのことを探るのだ、と考えてきました。 私は、ディレクターたちが何か月も現場で取材した結果の番組を、最後の仕上げにつきあうだけなんです。逆に言えば辛いんですよ。一緒に苦労してしんどい目にあっていれば、少々できが悪くても、一生懸命やったんだから勘弁してよってなるけど(笑)、そんな言い訳はききませんから。Nスペというのは特に手間ひまをかけた番組です。それだけにナレーションというのは、何をどうすることなのかということを本当に考えてやって来ましたね。

——現在、そして明日のNスペへの思いは?
長谷川勝彦さん 私が追求してきたのは顔の見えないナレーション、機能としてのナレーションということでした。しかし、最近はNスペと限らず、顔の見えるナレーションが多くなってきましたね。しかし、Nスペクラスの長さの番組は、やはり物語化が必要だと思います。ことにNスペは複雑な事象を語っていくことが多い。シンプルに映像だけに語らせるというわけにはいかない。そのときの語り口というのかな。それは言葉を選ばなければいけないし、わかりやすさを追求しなくてはいけないわけです。 総合テレビで放送されていることも当然意識されるべきです。幅広い対象、大勢に見てもらうために作っている。そのためには、どんな語り方がいいのかと考えたとき、これまで私が追求してきたものの延長線上でいいんだというふうに思っています。Nスペのナレーションは、理解しやすく、やさしく、そしてゆっくりと視聴者に届くようにということを心がけたいですね。それはディレクターが書くコメントにも必要なことではないでしょうか。 複雑で難しいことだからといって、難しい言葉を使わず、いかにわかりやすく、しかも間違いなくお伝えするのか。ある種の知恵比べですが、Nスペというのは、いつの時代もその先頭を走っていってほしいと願っています。

長谷川勝彦さんがナレーションを担当した主なNスペ

・シリーズ「ドキュメント太平洋戦争」(92年~93年)

・「オウム真理教~暴かれた“王国”の軌跡~」(95年)

・「誤算~山一証券・極秘プロジェクトの100」(98年)

・「ロシア 小さき人々の記録」(00年)

・シリーズ「激動 地中海世界」(01年)

・「9.11テロ 一年目の真実~ビンラディンVSアメリカ~」(02年)

・「幻の大戦果~台湾沖航空戦の真相~」(02年)

・「いつもと同じ春が行き 樹齢千年 大桜の里の物語」(04年)

・「靖国神社~占領下の知られざる攻防~」(05年)

・「硫黄島 玉砕戦~生還者 61年目の証言~」(06年)

・「日中戦争~なぜ戦争は拡大したのか~」(06年)

・「日本国憲法 誕生」(07年)

・「果てなき消耗戦 証言記録 レイテ決戦」(08年)

・シリーズ「揺れる大国 プーチンのロシア」(09年)

・「真珠湾の謎~悲劇の特殊潜航艇~」(09年)

・「引き裂かれた歳月~証言記録 シベリア抑留~」(10年)

・シリーズ「証言記録 日本人の戦争」(11年)

次回ご期待ください

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