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ディレクター取材ノート

報道局 報道番組センター社会番組部 専任ディレクター 福田和代

9月1日、防災の日に放送される「釜石の“奇跡”」。東日本大震災直後から番組制作を進めてきた福田和代ディレクターが、取材を通して知ったいのちを守る教育と子どもたちが身につけた知恵。そして、釜石の“奇跡”から学ぶ防災についてご紹介します。

取材で感じた「教育のチカラ」

未曾有の被害をもたらし、多くの人が犠牲となった東日本大震災。そんななか釜石市では、およそ3000人の小中学生のほとんどが無事という “奇跡”が起こりました。あの日、子どもたちはどのようにして自分の命を守ったのか…。
大人顔負けの判断と行動力は、危機対応のモデルケース として国内外から注目され、“釜石の奇跡”と呼ばれています。

番組では、184人の児童全員が津波を逃れた釜石小学校の取材を昨年3月から進めてきました。この“奇跡”に対し「子どもは多くの経験をしていな いから、本能的な行動をとったのでは?」と大人たちは考えているようでした。しかし、私自身は取材のなかでそうした考えとは真逆とも言える 「教育のチカラ」を強く感じることとなりました。

防災教育が生かされた “釜石の奇跡

揺れたら逃げるというのは、当たり前のように感じられるかもしれませんが、そうではありません。実際、釜石市の防災・危機管理アドバイザーで ある群馬大学の片田敏孝教授が指導される前は「家に1人でいるときに地震が来たらどうしますか?」というアンケートに、「家族の帰りを待つ」 「家族と連絡を取る」と答えた子が多かったそうです。子どもたちの頭には逃げるという選択肢がなかったのです。

こうしたアンケート結果を見た先生や親たちは危機意識を持ち、防災教育を広げていきました。その成果が“釜石の奇跡”に結びついたのです。 大人を頼ろうとしていた子どもたちに、ひとりでも生き抜く知恵を身につけさせ、それが実を結んだ。今回の震災では、小学校3年生の子でさえ 、自分の命は自分で守らなくてはと思ったのだそうです。教育のチカラはすごいですね。

目の当たりにした 子どもたちの強さ

取材中には、子どもたちの心の傷のことを考えると、こんなこと聞いていいのか、話していいのかと迷う気持ちがありました。しかし、そんな 思いに反して「津波を見ておいて良かったと思う」、「もし3月11日に戻ったとしたら、もう一度あの津波を見るんだ」といった力強い言葉が子 どもたちから飛び出しました。そして津波の映像を見せることを躊躇すると「見せた方がいい。そうしないと学べないから」とも言ったのです。

もちろん、こうした子たちばかりではありません。言葉や映像で深く傷ついてしまう子もたくさんいます。でも、こんな風に現実を受け止めて、 そこから学ぼうとしている子どもたちが少なくないことに驚かされました。子どもたちは目の前で家が流され、目に涙をいっぱい溜めてそれを 見ていたのだそうです。それでも自分たちは逃げられるんだ。だから絶望しないで。あきらめないで。生き抜いて。という彼らからのメッセー ジが伝わってきました。番組をご覧になる方にもそうした力強い思いを感じていただけたらと思っています。

知恵をつかんでほしい

井上ひさしさんが作詞を手がけた釜石小学校の校歌。その3番に自分の力で智恵をつかむことの大切さを歌う詞があります。子どもたちはその 歌詞のとおり、命を守る知恵を身につけて生き延びました。それは、子どもたちに災害時の心構えや行動を指導してきた片田教授、そして先生方の災害教育の結果です。

番組では震災時の児童たちの行動をアニメーションと実写で詳細に再現。子どもにもわかりやすく“釜石の奇跡”の全ぼうをお伝えします。また、教室風のスタジオで は国分太一さんと首藤奈知子NHKアナウンサーの司会で、親世代のゲスト・堀ちえみさん、つるの剛士さん、今井絵理子さん、サンドウィッチマンさん、そして子ど も世代のゲスト・本田望結ちゃん、熊田聖亜ちゃん、まえだまえださんが、片田教授とともに「いのちを守るために大事なこと」を考えていきます。この番組がご家族で 防災を考えるきっかけとなれば、そして釜石の子どもたちの知恵を少しでもつかんでいただけたらと思います。

 

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