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  • “いのちの記録”を未来へ~震災ビッグデータ~ ディレクター取材ノート 総合 3月3日(日)午後9時00分~9時58分

2011年3月11日に発生した東日本大震災。あれから2年、いま当時のさまざまなデータから、被災地の人々の行動や思いが明らかにされようとしています。関係各機関と手を携え、膨大な災害情報=震災ビッグデータを解析。震災からおよそ1週間の“命の記録”を見つめ直してきた阿部博史ディレクターに、そこから見えてきた事実や、これからのビッグデータの活用などについてうかがいました。

報道局 社会番組部 ディレクター 阿部博史

ビッグデータの原点・津波石

震災ビッグデータとは、被災地の方々や自治体、民間企業など、さまざまな人たちによって記録された震災時のデータのことです。いま、それぞれのデータを持ち寄り分析することで、震災当時のことを明らかにするだけでなく、今後の防災に活用しようという取り組みが進められています。
その原点は、古くからある“津波石”です。津波によって陸に打ち上げられた大岩のことで、津波がどこまで到達したのかというデータですから、きちんと記憶しておけば津波石より低いところに集落を作らない。つまりデータの活用によって命が助かるのです。津波石には何メートルまで津波が来たのかという数字とともに、後ろには何名が亡くなったということも合わせて刻まれています。データの一点にはそういう重さがあるんですね。
今回の東日本大震災では、沿岸部で津波の観測情報も記録されましたし、人の動きも携帯電話のGPS機能や車載カーナビに残された車の走行記録で追うことができました。さらに膨大な数のツイートが発せられたことで感情も記録されたのです。
津波石1個でも価値のあった情報が、数万数億という数で記録されたわけですから、このビッグデータを活用することで、人々の行動や感情までも浮かび上がり、次の防災にもつながるきっかけになるのではないかと思っています。津波石の一点が記録したデータの重さというものが、ビッグになっても大切にされていれば、ものすごく価値のあるものになるということですね。

震災当時の推計人口分布
震災当時の推計人口分布
地震直後の人の動き(首都圏):写真
地震直後の人の動き(首都圏)

行動記録から見えてきた思いがけない事実

震災1週間 1億7900万件のツイートマップ:写真
震災1週間 1億7900万件のツイートマップ
地震直後の石巻市の推計人口分布
地震直後の石巻市の推計人口分布

携帯電話のアプリケーションによってとられた位置情報(利用承諾を得て集められ、個人情報が取り除かれたデータ)を解析することで、地震の瞬間から人がどういうふうに動いたのかということがわかってきます。速やかに逃げたのか、留まったのか、それとも浸水域に入ってきたのか。
そうした行動分析から思いがけない事実が浮かび上がってきました。たとえばリアス部の人たちは、ほとんど浸水域から出ていなかったのです。一方、名取市では浸水域を出て避難する人よりも危険が迫る地域に入ってくる人のほうが多かった。NHKでも「逃げてください」と避難を呼びかける放送を続けていましたので、データを見るまでは、いっせいに逃げていく様子が再現できるものだと思っていました。しかし、地震の瞬間よりも30分後、1時間後に人口が増えていた地域もあったのです。これまでの防災では、逃げるということを前提に避難路の確保などを行ってきたはずで、人数もそのエリアにいる人たちだけを考えればよかった。しかし、実際には戻ってくる人たちも避難計画に入れて考えなければならない。「津波が来るから逃げる」そんな前提すら崩れていたことがわかったのです。

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