2009年8月4日(火)
タイガ(針葉樹林帯)の広がる酷寒のシベリアの大地で狩猟やトナカイの遊牧を行い、現在も主に物々交換で生計をたてているエべンキの人びと。子どもたちが家族と共に遊牧生活を続けながら学ぶことを可能にした移動学校は、エべンキの人びとを10年以上にわたり研究してきたフランス人の文化人類学者がロシア政府にかけあって実現した。
移動学校は、小さなテントをトナカイにひかせて遊牧について行く。年に2回、子どもたちは数日かけて近くの村まで出かけ、ロシア全土で実施される共通テストを受けて学力がついているかを確認する。
エべンキの人びとは今も、森や動物を信仰する。自然を大切にする心を育てなければこのタイガの大地では生きていけないと長老たちは語る。移動学校のおかげで、子どもたちは熊を狩猟する方法や熊の魂を沈める伝統的な儀式を親たちから学び、厳しい大地で暮らしていくための様々な知恵を長老たちから受け継ぐことができるようになった。
しかし、このシベリアの酷寒の地にも温暖化の影響が見られ、トナカイに以前よりも寄生虫や病気が多く見られるようになった。永久凍土が溶け出している地域もある。また、物々交換に頼る伝統的な暮らしがどこまで維持できるのかも問題だ。そんな現代社会の波の中でエべンキの人々の今の暮らしを描きながら、子どもたちがどのように成長していくのかを静かに見つめる。
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