NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

バックナンバー↓

インタビュー 太田雅英

勝負所を伝えたい。
8/05
剣道に打ち込んだ学生時代。
  • 剣道をはじめたきっかけは何ですか?

    小学校1年のとき、剣道をしていた父にすすめられたことです。
    以来、中学、高校、大学では剣道部に入り、全国大会出場を目標にしていました。

  • 剣道にはどんな思い出がありますか?

    大学2年生のとき、団体戦で全国大会出場が決まった瞬間、客席を見上げると剣道部の先輩たちが大手を振って喜んでくれていました。部にとっても久々の出場で、中には泣いている先輩もいたんです。これは今も忘れられない出来事ですね。

  • 念願の全国大会出場を決めて、先輩が喜んでくれたことが忘れられないのですか?

    実は、その前の年、1年生で団体戦のレギュラーとして関東学生剣道優勝大会に出場したのですが、私が負けたことで、全国大会(全日本学生剣道優勝大会)出場がかなわなかったんです。本当につらかったし、剣道部のみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも、そんなとき、4年生が「お前には来年もチャンスがあるから頑張れ!次は絶対に全国へ行け!」と励ましてくれました。学生最後の大会で、私より悔しかったはずの先輩たちが・・・。
    私が2年生になって全国大会出場を決めたとき、その先輩たちも応援に駆けつけてくれていました。全国大会出場は、何より、先輩との約束を果たせたことがうれしかったんです。

  • 剣道を通してどんなことを学びましたか?

    目標を立てて、そこに向かって努力することの大切さです。
    私は、中学生のとき、全国大会に出場したいと思いました。当時は、とても高い目標でしたが、そこに向かって稽古を続けたからこそ、大学生になって全国大会に出場することができたのだと思っています。

8/13
放送は感動を伝えられる仕事。
  • アナウンサーを志望したきっかけを教えてください?

    就職活動をはじめたころ、スポーツの感動を伝えるドキュメンタリー番組を制作したいという思いがあったので、NHKに就職した先輩に話を聞くことにしました。そのとき先輩から「NHKではアナウンサーも番組制作ができるよ」とアドバイスされたんです。それで、悩みましたが、剣道をやっていて声も大きかったので、アナウンサー志望でNHKを受けました(笑)。

  • 新人時代にはどんな思い出がありますか?

    初任地は熊本だったのですが、新人のころは何をやってもうまくいかなくて・・・毎日が勉強でした。「肩ひじ張らず自然に文章を読む」「滑舌よく話す」など、小さな目標を立てて、コツコツ練習しました。

  • 特に印象に残っているのはどんな仕事ですか?

    剣道のドキュメンタリー番組の制作です。
    それは、スコットランドで行われる剣道の世界大会(世界剣道選手権大会)に出場する日本選手を追いかける番組でした。
    その選手は、日本代表チームの大将を務め、団体戦の韓国との決勝戦で、優勝を決める勝利を収めました。その瞬間、会場中から歓声が上がったのですが、日本の選手たちは表情一つ変えず美しい礼をして下がっていきました。そして、控え室に入った途端、喜びを爆発させ、抱き合って泣きはじめたんです。「日本の剣道が海外に負けるわけにはいかない」その大きなプレッシャーから解き放たれたのだと思いました。

  • 番組づくりを通して得たものはありますか?

    番組を通して、真剣に努力してこそ報われる可能性があるというスポーツの素晴らしさを伝えることができたこと。そして、放送は、こういう感動を伝えられる仕事なのだと実感しました。

8/19
大相撲にはドラマがある。
  • 今、担当している大相撲の実況を志望したのはいつごろですか?

    2004年の夏、大阪局にいたときに甲子園で高校野球のラジオ実況を担当したころから、本格的にスポーツアナウンサーを志すようになりました。
    そして、数多く担当したいと思ったのが、子どものころからよく見ていて、剣道と同じ一対一の対人競技の大相撲だったんです。
    今はもう亡くなりましたが、祖母が大の大相撲ファンだったので、自分が実況すれば喜んでくれるかなという気持ちもありました。

  • 大相撲の魅力はどんなところにありますか?

    大相撲は人間ドラマだと思っています。力士たちの世界はとてもシビアです。誰もが上を目指しているし、番付が下がることを恐れています。たとえばケガをして十両から幕下に下がってしまえば無給になってしまいます。
    取組を見ることは、その力士の人生を見ているとも言えるのではないでしょうか。

  • 大相撲を実況する上でどんなことを心がけていますか?

    力士たちの内面も伝えられる放送です。
    「この一番で白星を上げれば大関への道がぐっと近くなるかもしれない」、「この取組で負けたら番付が下がってしまうかもしれない」、様々な状況に置かれた力士の気持ちに寄り添いたいですね。
    そして、こちらが押し付けないように、雰囲気をそのまま伝える。力士の感情、観客の興奮といった現場の空気感が、放送を通じてみなさんに伝わると良いなと思っています。

8/26
勝負所をとらえる力。
  • いま、どんな趣味がありますか?

    今年の4月から久しぶりに剣道を再開しました。稽古がとても楽しくて、リフレッシュにもなっています。

  • 改めて、剣道のどんなところに魅力を感じていますか?

    剣道の稽古では、高齢でも高段位の先生は、20代、30代の強い選手を打ち負かしてしまうんです。若いほうがスピードも体力も瞬発力もあるはずなのに。私が知らない剣道があるのかなって、少しでもその核心に迫ってみたいと思って剣道場に通っています。

  • スポーツアナウンサーにとって大事なことは何だと思いますか?

    勝負所を逃さず伝えることだと思います。
    私が尊敬している先輩アナウンサーたちは、勝負所のとらえ方がうまいんです。「次の瞬間に勝負が決まりそうだ」とか、「この体勢で勝負がつきそうだ」とか、そういう瞬間をとらえる「力」がずば抜けています。
    結果をどう伝えるのかも大切なことです。でも、そのひとつ前の「ここで勝負が決するかもしれない」という場面を、解説の方にどう話していただくかで、見る人の臨場感が変わってくるのではないでしょうか。

  • そのためにはどうすることが必要ですか?

    競技に精通すること、選手のクセや心理を読み解く力をつけること・・・、まだまだ自分は力不足だと思うので、もっともっとスポーツを見たり、先輩たちの実況を参考にしたりしながら、勉強しなければいけないと思っています。

  • ありがとうございました。

ページトップへ↑