NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 今井翔馬

想像力と、一瞬の判断。
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原稿を読むだけでは伝わらない。
  • 担当している『国際報道2021』について教えてください。

    番組では、さまざまな国のニュースをお伝えしています。
    大国の動きや複雑な外交関係、世界の課題、紛争などのニュースですが、そうしたニュースは日本や私たちのふだんの生活に影響を与えることも多いと思います。しかもそのスピードは日に日に増しているように感じます。
    番組では、いま世界で何が起きているかを知っていただくとともに、明日の仕事や生活に繋がるような情報もたくさんお届けしています。

  • キャスターとして心がけていることは?

    テレビの前のみなさんにプレゼンテーションするつもりでやっています。
    用意された原稿を読むだけでは、ダメなんです。「今、この場所でこういうことが起きています!」と『ニュースウオッチ9』のリポーター時代にやっていたように、スタジオでもそのニュースをプレゼンテーションするように伝えたいと思っています。
    自分がその現場にいるように想像し、番組を見ている人もその世界に入り込めるようなニュースの読み方ができたらいいなと思っています。
    また、できるだけ話し言葉で、臨場感を持ってわかりやすく伝えたい。そして、どうすればそのニュースに興味を持ってもらえるか、次のVTRを見てもらえるかを常に考えています。

  • 国際報道ならではの難しさはありますか?

    海外ニュースの場合、その国の歴史や隣国との関係などを知らないと理解できないこともあります。そのため、海外特派員としての経験も豊富な油井キャスターに毎日解説をしてもらいながら、自分でも勉強しています。自分がある程度わかっていないと議論もできないので・・・。その議論はみなさんによりわかりやすく伝えるためのものだったり、そのときに取り上げているニュースをより身近に感じてもらうためのものです。

  • 番組を通して今後やってみたことは?

    世界で取材がしたいです。今はインターネットを使えば、世界中とすぐにつながることができます。最近、コロナ禍ということもあり、リモートでウクライナの少女を取材しました。それはそれでいいことですが、僕は現場に行きたい!現地の空気を吸って、現地の人に直接会って取材をしたいのです。

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人間関係を広げていく仕事。
  • 学生時代は、どんなことに夢中になっていましたか?

    アナウンサーにつながるようなことは何もやっていなくて、高校時代はバスケットボールとバンドに熱中していました。海外のアーティストのコピーバンドで、そこでボーカルを。音楽はずっと好きで、大学でもバンドサークルに入っていました。実は、東京の大学に進学したのも音楽がしたかったからなんです。

  • ミュージシャンを目指していたのですか?

    さすがに難しいと分かっていましたが、それでも、なんとなく音楽に関わる仕事ができればいいなと思っていました。

  • いつからアナウンサーを目指すようになったのですか?

    大学2年生のときに、東京で高校の同窓会があって、そこにアナウンサーを目指している先輩がいたんです。そのときはじめて、アナウンサーって就職活動をしてなれるんだ!って(笑)。テレビでアナウンサーの姿はたくさん見ていましたけど、先輩との会話で、一気にアナウンサーという仕事を身近に感じました。

  • 音楽関係の仕事に対する夢は?

    実際にアナウンサーを目指している先輩に出会ったことで、音楽関係の仕事に就きたいという漠然とした夢より、アナウンサーになるという目標のほうが現実味を帯びたのだと思います。
    アナウンサーになったら、いろいろな人に出会って、いろいろな話を聞けるはずだ。そんなことを想像していると、ドキドキして2日くらい寝られなかったくらいです(笑)。

  • アナウンサーになるためにやったことは?

    テレビ局の人や内定をもらっている先輩に話を聞いたり、アナウンススクールにも通ったりしました。
    あと、新聞の1面に出ているニュースを自分なりに要約して5行にまとめる、ということを日課にしました。これによって、世の中の仕組みや制度など、「社会ってこう動いているんだ」という大きな流れを学ぶことができたような気がします。そういう意味では、今の仕事にも役立っていると思います。

  • NHKの面接でどんなことを話したか覚えていますか?

    「人間関係をつくる仕事、それがアナウンサーだと思います」と言ったのを覚えています。
    取材を通して人の話を聞き、その話をもとに、スタッフとコミュニケーションをとりながら番組を作り、視聴者のみなさんにお伝えする。取材対象者との1対1の人間関係が、仕事仲間へ、そしてテレビを通してですが何百万、何千万人の人たちへと広がっていく。
    アナウンサーはたくさんの人間関係をつくっていくことが仕事だと思う、ということを話しました。

  • そのころから報道の仕事に興味があったのですか?

    僕は心配性というか、漠然とした不安をいつも抱えているんです(笑)。たとえば、今のコロナ禍もそうですし、この先、年金は大丈夫なのだろうか?とか、いつもいろんな不安を感じています。
    でも、そういう不安は僕だけでなくみんなの不安でもあると思うので、報道を通して、世の中にあるさまざまな不安を少しでも解決するお手伝いができればいいなと思っていました。

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大切なのは、次を予測する想像力。
  • 新人のころに苦労したことは何ですか?

    企画や中継を出したり、番組を作ったりしていましたが、なかなかうまくいきませんでした。どうしても納得のいくものができない。自分が伝えたいことを魅力的に届けるための、手法や技術が足りなかったのだと思います。

  • それを克服するためにしたことは?

    福島放送局時代には、全国放送になっている5分ほどの企画を、とことん研究しました。毎日2本くらい、コメントを全て文字起こしして、どんな映像に、どんなコメントとテロップ(字幕)をつけているのかを全部ノートに書き出したんです。
    すると、企画のテーマをより明確にする作り方や、全体のストーリーやコメントの起承転結を学ぶことができました。そうやって、少しずつ勉強していきました。

  • 先輩からのアドバイスで印象に残っているものは?

    「第一声に集中する」というアドバイスです。松江放送局に赴任して間もないころに教えてもらい、今でも大事にしています。やり直しのきかない生放送や生中継などでは、ああやってこうやってと先々を考えてしまうのですが、第一声のコメントや挨拶がしっかりきまると、あとは気持ちも乗っていけます。ですから今も第一声は特に集中するようにしています。

  • 今の自分に大きな影響を与えた仕事はや出来事は?

    福島放送局時代のことですが、大雨の中継をしました。現場に出て刻々と変化する状況を1日に7回、8回と中継しました。その中継は、自分としては満足できる、ちょっと成長できたかなと思えるものでした。 でも、翌日、同じ東北の岩手県でその雨が引き起こした濁流で大きな被害が出たという速報が入ってきました。
    自分は前日の放送で、避難するようにもっと呼びかけるべきではなかったのか? 誰に向けて中継するべきだったのか?と悩みました。

  • そのときに学んだことや、次回に生かそうと思ったことは?

    避難のための第一歩をつくれるかどうかが大切だと思います。目の前で起きていることを伝えることで満足するのではなく、今日のこの豪雨が明日にはどの地域でどんな災害を引き起こす可能性があるのか?そこまで想像力を働かせるべきだったのではないか?
    この件をきっかけに、自分の中で仕事や報道に対する意識が変わりました。

  • アナウンサーとしてのやりがいを感じたのは?

    『国際報道』のキャスターとして、世界中からのたくさんの情報を、整理してポイントを伝えていくことはとても面白いです。その力を培えたのは、東京勤務になって『ニュースウオッチ9』のリポーターのときです。今、何が起きているのか?なぜ、起こったのか?これが、この先どのような影響を及ぼす可能性があるか?その答えを見つけるために、毎日全国を走り回って、いろいろな人に話を聞いた経験が生きています。大変でしたけど、とても楽しかったです。

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一瞬の判断が大事。
  • これからの目標ややってみたい仕事はありますか?

    新人のころは『ニュースウオッチ9』を担当することが目標でしたが、今は目標を立てないようにしています。自分の名前が「今井」ということもあり「今」を大切にしたい。
    『国際報道』で、その日1日のニュースをしっかり、全力で伝えることに集中しています。その積み重ねの先に、何か新しい仕事や番組に出会うこともあるでしょうが、大事にしているのは「今」です。

  • 理想とするアナウンサー像は?

    あえて、誰かに憧れたり、その人のようになることを目指すことはないですね。憧れるというのは、自分には無いものをその人が持っているから憧れるのだと思います。それよりも、自分が持っているものを伸ばしていきたい。誰かと比べて、劣っている、優れているではなく、自分が勝負できるものを磨いていきたいですね。

  • 日々の暮らしで大切にしていることはありますか?

    仕事だけして、仕事のことだけ考えていてもダメだなと。アナウンサーとしてではなく、ひとりの生活者として自分の中からふと出てくる不安や疑問ってとても大切だと思います。そこに、いつもテレビをみてくれているみなさんとの接点があるはずです。ですから、リフレッシュしたりスーパーで買い物したり、そういうふだんの生活も仕事と同じくらい大切にしたいと思っています。

  • 今は音楽はやっていないのですか?

    僕の音楽への夢は「Official髭男dism」に託しました(笑)。
    というのも、初任地の松江放送局にいたとき、バンド結成前のメンバーを取材しているんです。それがきっかけで、その後全国へと活躍していく姿を追い、今では『紅白歌合戦』に出場するような国民的バンドになりました。当時、大学生だった彼らが多くの人たちに元気を与えている。最近一緒に仕事もできましたし、僕も彼らの曲を聴きながら「自分も頑張らなきゃ!」と勇気をもらっています。

  • アナウンサー志望の人たちにメッセージを。

    周囲の目を気にし過ぎて、必要以上に遠慮したり、自分を抑えたりしないでください。アナウンサーは、一瞬の判断を求められる仕事です。生放送中に何に反応するか、災害などの緊急報道で何を呼びかけるか、現場で1回しかロケのチャンスがないとき何を撮るかなど、その場の一瞬の判断で、大事なシーンに出会えたり、カメラで切り取ることができます。
    周りの目をあまり気にせずに、自分で決断して、自分で行動するクセを今から身につけてほしいですね。

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