NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 森下絵理香

生き方や経験は、声に出る。
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さりげなくプラスの情報を。
  • 現在担当している番組を教えてください。

    『NHKニュース おはよう日本』で5時台のキャスターを担当しています。
    ニュースや地域の話題など、朝いちばんにお伝えする番組です。担当日は深夜1時に起きています。

  • 深夜1時!早起きは大変じゃないですか?

    それが、意外と!シャキッと起きるためのワザもたくさん編み出しました。起きてすぐに目薬をさすとか、陽気な音楽をかけるとか・・・。最近、5時台を隔週で担当している山内アナに、「熱いシャワーで首まわりをほぐすと声が良く出る」と教わり実践中。おはよう日本のアナウンサーはみんなそれぞれ工夫しているみたいです。

  • 『NHK ニュース おはよう日本』のツイッターアカウントにも掲載されていますよね。

    【おはよう日本 朝の必勝法】とぜひ検索してみてください!画像で紹介しています。番組ではデジタルにも力を入れていて、最新のニュースはもちろん、キャスターのこぼれ話なども掲載しています。 また、私のイラストで熱中症対策や水害対策のポイントなどを伝えている動画コンテンツもあります!番組のメインキャスターを務める高瀬アナや桑子アナに似せたキャラクターを描いています。これはもしや〇〇アナ!?と、想像して楽しんでいただきながらも、大切なニュースや防災情報にふだんから接してもらえればと思って制作しています。

  • どんな風に制作しているのですか?

    スタジオではなく普通の会議室で、本格的なテレビカメラではなく普通のスマホで、ワンコインで買えるホワイトボードとペンで描いて、早回し編集しています。最初に原稿を作り、それに合わせた絵コンテを紙に描き、そのあとホワイトボードに描いていきます。実際にペンを動かすと、さらにイメージが膨らむので、少しずつ配置を変えたり目立たせたりしながら、2時間くらいかけて一気に描き上げます。

  • イラストは昔から得意だったのですか?

    いいえ。学生時代の美術の授業で、成績はいつも悪かったんです。でも、先生や友だちの似顔絵や、黒板への落書きなど、一本のペンでさっと描くイラストは得意でした。教科書の端に描いたパラパラ漫画の経験は、確実に今に生きていますね。
    いま、NHKの番組情報誌『ステラ』で、何人かのアナウンサーとコラムを担当していて、ほかの人たちは文章と写真ですが、私は志願して文章と4コマ漫画を掲載しています。こちらは、おはよう日本の気象予報士ふたりが登場する回。独特の味はあっても、学校の授業で評価されるような芸術性はないことを感じていただけると思います(笑)。

  • そのほかにも担当している番組は?

    不定期ですが『ウチのどうぶつえん』という番組のナレーションを担当しています。その番組のCP(チーフ・プロデューサー)さんがおもしろい方で、ナレーションに演技指導が入るんです(笑)。
    「そこは、芸人の◯◯さんみたいな感じで言ってみて」とか「ここは、楽しいコメントだけど、あえて抑えめな感じで読んで」とか・・・。きっと、CPさんの頭の中には全体の完成図が出来上がっていて、ここはマックスで盛り上げる、ここはあえて引くという計算が出来上がっているのだと思います。完成したものをオンエアで見ると、メリハリがあってとても楽しい番組になっています。

11/15
調べ、取材し、自分の言葉で伝えたい。
  • 学生時代のことを教えてください。

    大学在学中に気象予報士の資格を取りたくて、その勉強に集中していました。授業に出たり、友人と遊んだりしつつも、「絶対に気象予報士の資格を取る!」というのを目標にしていました。

  • 気象予報士の資格を取りたいと思うようになったのは?

    中学2年のある冬の日、学校が休校になりました。どうして休校になったかというと、気象予報士の資格を持っていた当時の理科の先生が「明日は予報よりも大雪になります」と校長先生に進言したのがきっかけだったんです。
    そのことをあとから聞いて「気象予報士って、すごい!」と思って、すぐにその先生に「私も気象予報士の資格を取りたいです」と相談。そして学校帰りに本屋さんで分厚い参考書を買いました。
    でも、参考書の数ページ目に難解な数式が出てきて、そこで撃沈(笑)。理科は得意なほうでしたが、当時の私には理解不能だったんです。

  • そこで1度、断念したのですね?

    ところが、大学受験が終わったときに何気なく本棚の隅にあったあの参考書を開いてみたら、中学生の私を打ちのめした数式と受験で勉強した数式が同じだったんです。そのとき「あっ、あのときこの参考書を手にしたのは、この日のためだったんだ!」とすごく感動して、今度こそ絶対に気象予報士の資格を取るぞ!と。

  • 気象予報士ではなくアナウンサーを目指したのは?

    大学3年で資格を取って、気象予報の会社でアルバイトしていたとき、「卒業したら、ここで気象予報士としてここで働きたい」と相談したことがありました。そのとき「将来をすぐに決めないで、もっといろいろな仕事を見て、それでもまだ気象の仕事がやりたかったら、また戻っておいで」と。
    ふりかえれば、気象予報士の勉強でも、大学の理工学部の勉強でも、私は、いろいろなことを自分で調べたり、取材したりすることはもちろん、それを人に話すことにも面白さを感じていた。テレビが好きだったこともあり、アナウンサーに挑戦したいと考えるようになりました。

  • アナウンサーと気象予報士は両立できていますか?

    現状、ニュースを伝えながら、気象もしっかり把握しておくことは難しくて・・・。今は次々と届けられるニュースのことで精いっぱいです。
    それでも印象的だったのは、ことし7月の大雨。島根県と鳥取県に、立て続けに「顕著な大雨に関する情報」が発表されました。このとき私は、担当する5時台の放送を終えスタジオの近くにいました。その時点では、情報が発表されていたのは島根県のみ。しかし気になって今後の雲の動きをチェックしていたら、雨雲が鳥取県の方に移動していくんです。番組担当の予報士さんなどにも確認し、『おはよう日本』の7時台のキャスターさんにも伝えました。その後、実際に鳥取県でも大雨になり、番組内でも警戒を呼びかけることになりました。
    気象予報士としての知識や経験をもっと防災減災にいかせればと思いますが、それはまだこれからの課題ですね。

11/22
「力を抜く」ことの大切さ。
  • 新人時代のことを教えてください。

    できない新人でした(笑)。研修のときは「きみは話が長いし、何を伝えたいのかわからない」と言われたし、初任地の福井でも悩んでばかりいました。ニュースを伝える仕事以外に中継や企画のための取材もするのですが、自分の得意分野である気象のテーマだけではやっていけないことにも戸惑いました。

  • どのように克服していきましたか?

    お天気を封印しました。今振り返ると、それが前に進むきっかけになったように思います。
    初任地の福井では、2年後に国体が開催されることになっていたので、スポーツを取材して発信することは地域のためになるのでは、と思い、夕方のニュース番組で企画を出すことにしました。約2年間、月1回担当し、シブ5時などの全国放送に展開した回もありました。今年(2021年)のオリンピックで当時取材した選手が活躍している姿は、何だか自分のことにようにうれしかったですね。取材をして自分の言葉で伝えるアナウンサーの仕事の面白さを知りましたし、「お天気以外のものを見ておいで」という就活時代の先輩の言葉の意味も分かったような気がしました。

  • 先輩や上司の言葉で助けられたことはりますか?

    仙台放送局でお昼の情報番組を担当していたときのことです。それは明るく楽しい番組でなければいけないのに、私は進行や細かなことひとつひとつを考え過ぎていて、いつもピリピリしていました。
    そんなときに「ダメだと思う日があってもいいんだよ、もっと力を抜きなさい」とアドバイスしてもらいました。最初それを聞いたときは、まだまだ力不足の自分が力を抜いたら、やる気のないアナウンサーに見えてしまうんじゃないかと・・・。でも、違いました。

  • それは、どういうことですか?

    上司が言ってくれた「力を抜く」というのは、いい加減にやるということではなく、周りの人やその場の空気に身を委ねることがあってもいいんだということです。
    上司の言葉をそう捉えられるようになったのは、ある日、一緒に共演していた子が「つまんないなあ」と言ったことがきっかけでした。何気ない一言でしたが、それが、私はすごく寂しかった。と同時に、あれ?私のせいじゃない?とハッとしたんです。自分が楽しめていないのに、一緒にいる人や見ている人が楽しいわけがないんですよね。力を入れるべきは、台本や進行だけではないと学びました。

  • 福井と仙台時代で印象に残っている仕事は?

    仙台時代に、カメラマンと一緒に潜水してダンゴウオを番組で紹介しました。あまり知られていませんが、ダンゴウオって本当にかわいいです。

  • ダイビングのライセンスは持っていたのですか?

    大学時代にライセンスは取っていましたが、本格的に潜り始めたのは社会人になってからです。写真で紹介したような、体長1センチほどのダンゴウオのような小さな魚を撮影するのが楽しくて夢中になり、豊かな海をもっと多くの人に知ってほしいと思うようになりました。
    でも、NHKでは潜水班に所属していなければ、仕事で潜ることはできません。そこで、潜水班の先輩に自分の提案書と資料を送って「こういう番組を作りたいので、ぜひ潜水班の研修を受けさせてください!」とお願いしました。

  • 海中でのリポートで大変なことは?

    実はこれも、「力を抜くこと」です。海の中には限られた量の空気しか持っていくことができないので、焦りや考えすぎで呼吸が早くなると潜水時間も短くなってしまいます。さらに、体に力が入って無駄な動きが多いと、浮き沈みのバランスが崩れやすくなり、これまた空気をたくさん消費するんです。でも海の中では、コメントや身振り手振り(泳ぎ振り?)だけでなく、身の安全も考えなければいけません。しっかり準備をして、本番はほどよく力を抜きつつ、海に潜るメンバー全員で力を合わせる。本質は、陸上の番組作りと同じなんです。

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勉強もポジティブに楽しむ。
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