ストーリー
すみれ。それがこの物語のヒロインの名前です。昭和のはじめ。神戸の山の手で生まれたすみれは、早くに亡くなった母から教えられた刺繍や手芸が大好きな女の子でした。会社を経営していた父、活発な姉のもとで何不自由なく育ち、18歳でお見合い結婚、ほどなく娘を授かります。
順風満帆に思われた人生でしたが、戦争ですべてが変わります。
夫は出征し、家は焼け、戦争が終わると財産は没収。おっとりとしたすみれはどうしていいかわかりません。そんなとき、幼い娘のために手作りした服を見た人から「それを売ったらいいんじゃないか」と言われたことをきっかけに、すみれは生きていくために子供服作りを始めます。
そんなすみれの周りには、様々な事情を抱えた女性たちが集まってきます。働いたことなどない女同士で「ああでもない、こうでもない」と言い合いながら、気づけば会社まで起業、子供服作りにのめり込んでいきます。
戦地から復員した夫は、当初、妻たちが働くことに猛反対。すみれの夫・紀夫は戦前の「男が働き、女は家の中」という考えが捨てきれず、また、儲けをあげることより「子供のため、ママのためによりよいモノを作りたい」という彼女たちの仕事のやり方も理解できません。
しかし、やがて彼女たちの意気込みに触れ、子供服作りに一途な彼女を陰ながら支える生き方を選び、「最強のパートナー」となっていきます。
「婦唱夫随」のすみれと紀夫は、仲間たちとともに「こだわりのモノづくり」を貫き、やがて宮内庁御用達と認められるまでになっていきます。そして後年、すみれは、大人になった娘たちとともに、念願だった「子供のモノなら何でもそろう」日本初の総合子供用品店をオープンさせることになります。
※実在の人物をモデルとしますが、激動の時代を生きた女性たちの人生の物語として大胆に再構成し、登場人物や団体は改称し、フィクションとしてお届けします。
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各回のあらすじ
第1週「想いをこめた特別な品」
昭和9年。主人公・坂東すみれ(渡邉このみ)は、繊維会社を営む父の五十八(生瀬勝久)、姉のゆり(内田彩花)と一緒に神戸の洋館で暮らしていた。ある日、すみれは入院中の母・はな(菅野美穂)にあげようと、初めて刺しゅうに取り組むが上手くできず、はなに渡すことができずにいた。そんなある日、すみれは屋敷に出入りする靴屋の麻田(市村正親)の下を訪れる。真剣に靴作りに取り組む麻田の姿を目にしたすみれは「下手でも思いを込めてものを作ることが一番大事」という麻田の言葉を胸に刻みこむ。その後、はなに会いに行ったすみれは、幾度となく作り直した刺しゅうを手渡す。それを見たはなは「べっぴんやな。一生の宝物や」と喜ぶのだった。それから8年後、17歳になったすみれ(芳根京子)は、女学校に通っていた。仲間の多田良子(百田夏菜子)、田坂君枝(土村芳)と3人で手芸倶楽部を結成していたが、太平洋戦争の影響で生活の変化を余儀なくされる。そんなある日、すみれは幼なじみの潔(高良健吾)に召集令状が届いたことを知り、自分の恋心に気がつく。しかし、姉のゆり(蓮佛美沙子)も潔に好意を寄せていて……。
第2週「しあわせの形」
坂東すみれ(芳根京子)は幼なじみの潔(高良健吾)に思いを寄せていたが、姉のゆり(蓮佛美沙子)と結婚することになり、思いを告げることなく失恋する。潔とゆりの結婚式の時、祖母のトク子(中村玉緒)から父・五十八(生瀬勝久)と母・はな(菅野美穂)の苦労話を聞いたすみれは家への思いを強くし、五十八からきた縁談話をすぐに承諾するが、その相手は幼なじみの田中紀夫(永山絢斗)だった。つかみ所のない性格の紀夫との生活が始まるが、ある日、妊娠したことを告げると感情を爆発させて喜ぶ紀夫の姿に、改めて愛情を深めるのだった。しかし、紀夫に召集令状が届き、お腹の子供を託されたすみれは、夫不在の中、娘のさくらを出産する。戦況が厳しくなり、近江の坂東本家に疎開するすみれとゆりだったが、おじの長太郎(本田博太郎)一家の態度は冷たい。そんな中、神戸で大きな空襲があったと五十八からの知らせが入る。昭和20年8月、終戦の日を迎えたすみれは、様子を確認するため、神戸に戻る。そこで目にしたのは、焼け野原になった街と、焼け崩れた屋敷の姿だった。大きな衝撃を受けたすみれだったが、娘・さくらのため、母として前を向くのだった。
第3週「とにかく前に」
米軍による本土への空襲によって神戸の家を失ったすみれ(芳根京子)は、疎開先の近江で姉のゆり(蓮佛美沙子)とつらい生活を送っていた。義兄の潔(高良健吾)が戦地から帰ってきたことをきっかけに、神戸に帰って夫の紀夫(永山絢斗)を待つことにしたすみれだったが、戦後の混乱期で預金をおろすことも制限される中で、生活に困窮していく。持っているものを売ってしのごうとするすみれだったが、潔にこれからは自分で仕事をして自分の力で生き抜かねばならないと諭される。新しい道を模索したすみれは、幼い頃からなじみの靴屋・麻田(市村正親)の店の一角で、手作りの手芸品の販売を開始する。しかし、趣味の品が売れることはほとんどなく、悩ましい日々を送るすみれ。ある日、客の一人で外国人通訳のジョンの依頼を受け、妻・エイミーと会うことに。エイミーから外国式のおむつの存在を知ったすみれは、昔、外国人を相手に育児の講習会を開いていた看護婦の明美(谷村美月)を思い出す。外国式のおむつの作り方を教えてもらおうと、神戸中の病院をしらみつぶしに訪ねながら明美を探すすみれ。そして、ついに明美をみつけるのだが……。
第4週「四つ葉のクローバー」
生活のため外国式のおしめを作って売ろうと考えたすみれ(芳根京子)は、育児に詳しい看護婦の明美(谷村美月)に作り方を教えてもらおうとするが、必要な生地を手に入れるのは無理と相手にされない。そんな時、母親となった女学校時代の親友の良子(百田夏菜子)・君枝(土村芳)と再会したすみれは、子供のための品物を作って生活していこうと誘うが、二人は戸惑うばかり。その後、闇市で商売をしている義兄の潔(高良健吾)と潔の友人・栄輔(松下優也)の協力で、良質の生地を手に入れたすみれは、再び明美の元を訪れて説得し、妊娠中の友人・エイミーに外国式のおしめを売ることに成功する。無事に娘を出産したエイミーは、「代々大切に着続けられる特別な服」を作ってほしいと新たに依頼。すみれは良子と君枝に相談するが、ドレスの生地に困ったすみれは、戦災で焼け焦げた母の形見のウエディングドレスを材料にすることを決意。その覚悟に打たれた二人は協力を決め、一回限りで手芸倶楽部を再結成する。完成したドレスを手渡され感激するエイミーを見て喜ぶすみれは、改めて特別な品「べっぴん」を作る喜びをかみしめる。その後良子と君枝、そして明美がすみれの元を訪れ……。
第5週「お父さまの背中」
すみれ(芳根京子)は、仲間の明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と協力して、靴職人の麻田(市村正親)の店の一角を借り、子供服の店「ベビーショップあさや」をオープンする。テーブルクロスを作るという新しい仕事も舞い込むが、良子の接客の態度を明美が注意したことをきっかけに、4人の関係がぎくしゃくし始める。そんな中、良子の夫・勝二(田中要次)が戦地から帰還。良子は「夫を支えたい」と言って店を辞めてしまう。さらに君枝の夫・昭一(平岡祐太)も帰還し、君枝までもが店を離れることに……。一方、大阪・梅田の闇市で生活するすみれの姉・ゆり(蓮佛美沙子)は、夫の潔(高良健吾)が闇市の元締め・根本(団時朗)の一派のやり方に反発しないことに不満を募らせていた。ゆりは、父の五十八(生瀬勝久)に自分で直接意見を伝えるよう促され、根本と対じするが鼻であしらわれてしまう。傷ついたゆりの姿を見た五十八は、「娘を頼みます」という妻・はな(菅野美穂)の言葉を思い出しながら、父の背中をみせるため自ら立ち上がる!
第6週「笑顔をもう一度」
すみれ(芳根京子)と明美(谷村美月)は、徹夜でテーブルクロスを完成させる。依頼主のランディ夫妻はその出来栄えに大喜びし、君枝(土村芳)にも感謝を伝えるが、その光景を見た君枝の夫・昭一(平岡祐太)に働いていたことを知られてしまう。君枝も一度は昭一を説得し、再び働くことを許されるが、無理がたたって体調を崩して入院し、結局店を辞めてしまうことになる。しばらくしてすみれと明美が見舞いに行くと、君枝の容態は悪化していた。心配する昭一と義母の琴子(いしのようこ)に、生きていくには希望が必要だと訴える明美。その言葉とすみれの君枝を思う気持ちに動かされた昭一は…。一方、すみれは突然店を辞めた良子(百田夏菜子)のことも気にかけていた。良子の夫・勝二(田中要次)に会い、夫婦の思い出の品を取り戻すよう提案。すみれの気持ちに動かされた勝二は、再び良子と向き合うのだった。明美の看護婦としての知識を生かして開いたベビー相談室の効果が上がり、店には多くの客が訪れるようになる。そんなある日、すみれのもとを戦地から帰らず行方不明となっていた夫・紀夫(永山絢斗)の両親が訪れる。すみれは二人からの提案に大きな衝撃を受け…。
第7週「未来」
すみれ(芳根京子)の元を紀夫(永山絢斗)の両親が訪れ、「息子は戦死したかもしれない、どうかもう待たないでくれ」と懇願、すみれは困惑する。麻田(市村正親)が商店街の空き店舗に、ベビーショップを移転したらどうかと提案する。見学をするとアイデアが膨らみ、すみれたちはぜひ挑戦してみたいと思う。試作品づくりで夜遅くなったある日、栄輔(松下優也)がすみれを家まで送っていくことに。すると、さくらが栄輔を「お父さん」と呼んでしまう。潔(高良健吾)は栄輔に、すみれを好きになってはならないとくぎを刺すが、気持ちは押さえられない。翌日、すみれは戦死者を弔う葬列を目撃。さらに父・五十八(生瀬勝久)からも紀夫は帰ってこない可能性がある、前を向くことが大事だと言われ、涙がこらえきれなくなるすみれ。明美(谷村美月)は「生きているか死んでいるか、自分で決めれば楽になる」と励ます。翌朝、栄輔がすみれに思いを告げようとすると・・・。
新しい店は、すみれたち4人の名前から一文字ずつとり「キアリス」と名付けられた。
第8週「止まったままの時計」
ようやく帰還した紀夫(永山絢斗)は、戦地での過酷な経験から、人を信じられなくなっていた。すみれ(芳根京子)が友人たちと協力してお店をやっていると聞くと、そこには裏があると言いだしたり、歓迎会でも横柄な態度をとってしまう。さらに自分が「坂東営業部」を立て直すと宣言するが、潔(高良健吾)とゆり(蓮佛美沙子)がすでに動いていることを知ると、ふてくされて他の仕事を探し始めてしまう。オープンした「キアリス」は、初日から大盛況。それぞれの家族がお祝いに集まる中、紀夫だけは姿を見せない。一方、坂東営業部復活の目玉として、ゆりと潔は、婦人服のファッションショーを計画する。すみれたちもドレスの縫製を手伝うことになる。五十八(生瀬勝久)の説得もあり、紀夫は再び坂東営業部で働くことになるが、ファッションショーの仕事を最後にすみれにお店を辞めるように言う。困惑するすみれに栄輔(松下優也)は、紀夫にきちんと「自分にとっての店は何なのか」伝えるべきだと助言する。ファッションショー当日、すみれたちはモデルとして登場。その壇上で、すみれは店への思い、人を信じることのすばらしさを観客席にいる紀夫に向かって語りかける。
第9週「チャンス到来!」
終戦から3年、ベビーブームの影響でキアリスは順調に客足を伸ばし、新聞の取材の申し込みがくる。そんなある日、紀夫(永山絢斗)と潔(高良健吾)は大急百貨店の社長・大島(伊武雅刀)がキアリスの商品を扱いたいと思っていることを知る。百貨店への出品をめぐり、勝二(田中要次)ら夫たちは舞いあがり、店に集まって経営のあれこれに口を出す。しかしマイペースなすみれ(芳根京子)たちはそこまでやろうとは思っておらず、断ると言いだして夫たちをあきれさせる。ところが翌日、キアリスを取材した新聞記事が。「お母さんがお母さんのために」と強調された記事には、独身の明美の名前だけが載っていなかった…。すみれはきちんと4人の店ということを知ってほしいと思い、百貨店への出品を決める。さまざまな問題を抱えながらも、商品作りを始めたすみれたちだったが、担当者からキアリスのタグをすべて外し、百貨店のマークを付けるように言われる。更に量産のために工程を省略するようにと言われる。我慢ができなくなったすみれは、これまでの話はすべてなかったことにしてほしいと声をあげる。その翌日、百貨店の社長大島がすみれに直接会いたいと言ってくる。しかし大量の商品をどうするのか、製作場所はどうするのか、子供たちはどうするのか?、その場で話を断ったすみれに、紀夫はなんでもっと考えてものを言わないのかと怒るが、すみれの気持ちは変わらない。
第10週「商いの聖地へ」
大急百貨店へのキアリスの出店を断ったすみれ(芳根京子)は、社長の大島(伊武雅刀)に理由を求められる。製品作りの工程を減らすよう求められたことや、売れ残り品が処分されることは受け入れられないと説明したすみれに、大島は試しに10日間だけ大急百貨店で委託販売をすることを提案。夫の紀夫(永山絢斗)は心配するものの、キアリスを広めるチャンスだと引き受けたすみれは、仲間の明美(谷村美月)・良子(百田夏菜子)・君枝(土村芳)と一緒に、百貨店への出店準備を始める。友人や知り合いに縫製や接客の手伝いを頼みつつ、百貨店での目玉商品を制作していく。そして迎えた百貨店での期間限定の出店。初めは苦しんだものの、手作りポスターの効果もあって、次第に繁盛していくように。大きな成功をおさめたすみれたちに、社長の大島はさらに驚くべき提案をする。一方、紀夫は、すみれの姉・ゆり(蓮佛美沙子)が企画した洋裁教室の説明会を担当することになり、人前に出るのが苦手な性格もあって慣れない仕事に苦しんでいた。ある日、司会を任された紀夫は、緊張のあまり客を前にして突如倒れてしまい…。
第11週「やるべきこと」
すみれ(芳根京子)たちは、キアリスの支店を正式に大急百貨店に出すことを決める。一方、すみれの夫・紀夫(永山絢斗)は、会社の説明会で司会を任されたが、極度の緊張のため仕事中に倒れてしまい、ショックのあまり家で寝込むように。すみれの姉・ゆり(蓮佛美沙子)と義兄の潔(高良健吾)は紀夫を心配するが、同僚の間での信用は地に落ちてしまう。さらに、家事や育児を手伝っていた喜代(宮田圭子)が腰痛を悪化させ、入院することに。紀夫に負担をかけないように、すみれは仕事に加え、家事や育児も全て自分がこなしていくことを決意する。再び会社に出るようになった紀夫だったが、ある晩、家に帰ると、部屋は暗く誰もいない。心配した紀夫は、慌てて商店街の本店や友人たちの家へ探しにいくが、すみれの姿はみつからない。紀夫は一睡もせずにすみれを待ち続けるが、仕事のトラブルで朝帰りとなったすみれに、激しく感情をぶつけてしまう。仕事と家事の両立に悩むすみれは、過労で倒れたことをきっかけに、ある決意を固める。後日、すみれはキアリスの仲間の明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)に、誰も思いもよらなかった、ある願いを伝える。
第12週「やさしい贈りもの」
キアリスを辞めると決めたすみれ(芳根京子)は、着々と仕事の引き継ぎを進めていく。引き止めたい気持ちはあるものの明るく送り出そうと決める明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)ら仲間たち。すみれは、キアリスでの最後の仕事として、ベビー相談室で書き留めてきたお母さんたちの悩みやその解決法をまとめ、キアリスガイドとして冊子にして配りたいと提案する。すみれが抜けたあと、キアリスでは君枝が百貨店での打ち合わせに出るようになるが、クリスマス商戦に向けた目玉商品を用意するように言われ、頭をかかえる。一方、潔(高良健吾)は子供をみごもった妻のゆり(蓮佛美沙子)に突然家出をされてしまう。近江の実家に迎えにいくが、気持ちはすれ違うばかり。そんな時、夢の中に潔の父・正蔵(名倉潤)が現れる。クリスマスの日、すみれはさくらと共にキアリスのクリスマスパーティーに参加する。すみれのキアリスへの思いを痛いほど感じ続けていた紀夫は、すみれと集まった人々の前で重大な決断を宣言し、皆を驚かせるのだった。聖夜。雪が降りしきる中、サンタにふんした麻田(市村正親)が歌うクリスマスソングが商店街に響きわたる。
第13週「いつものように」
すみれ(芳根京子)たちは、大急の社長・大島(伊武雅刀)からの提案を受け、将来を見据えてキアリスを株式会社にすることを決める。融資の話をするため銀行員が店を訪れるが、すみれたちは女学生のような振る舞いが抜けず、夫たちは心配を募らせる。そこで、経理として正式にキアリスに入った紀夫(永山絢斗)は、毎日朝礼を実施することやお互いを名字で呼び合うことを独断で決め、キアリスの雰囲気を変えようと意気込む。そんなある日、姉・ゆり(蓮佛美沙子)の相談を受けたすみれ。ゆりの話を聞き、おなかの大きなお母さんが、さまざまなものをそろえる苦労をなくしたいと思ったすみれは、キアリスを子供のものなら何でもそろう総合店にしようとひらめくのだった。まずは子供用の食器を作ろうと、早速工場と話を進めるのだが、話を聞いていなかった紀夫は激怒。リスクを心配し、キアリスの社長となった靴屋の麻田(市村正親)や義兄の潔(高良健吾)に相談した結果、ようやく話を進めることを認めるのだった。完成した食器は販売を開始すると即完売して大成功をおさめる。しかし、無邪気に喜べないすみれは、紀夫に思いを訴える。
第14週「新春、想いあらたに」
紀夫(永山絢斗)や娘のさくらと一緒に近江の坂東家でお正月を過ごすすみれ(芳根京子)。おめでたい元日になるはずが、そこには重々しい空気が。すみれの父・五十八(生瀬勝久)と義兄・潔(高良健吾)は、会社の経営方針で意見が合わず討論に。また五十八の兄・長太郎(本田博太郎)とその息子・肇(松木賢三)も商売のやり方で対立した状態が続いていた。さらに、五十八と長太郎が口ゲンカを始めると、すみれの祖母・トク子(中村玉緒)は声を荒げて二人を叱るが、無理がたたって倒れてしまう。床にふせったトク子だったが、夢の中で亡くなった夫からお告げがあったと五十八と長太郎を枕元に呼び…。一方すみれたちは、新年早々からキアリスを子供用品の総合店にするための準備を進めていく。ベビーベッドなどを仕入れるため、アメリカのメーカーと英語で取り引きができる担当者が必要になり、すみれは大学で英語を熱心に学んでいた姉のゆり(蓮佛美沙子)に相談する。しかし、子供が生まれたばかりのゆりは「子育てに専念したい」と話を断り、困ったすみれたちは、外国人相手に英語で話をしていた明美(谷村美月)を頼るが…。
第15週「さくら」
すみれ(芳根京子)は、靴職人の麻田(市村正親)のもとを訪れ、娘のさくら(粟野咲莉)の入学式用の靴を作ってもらえないかと頼む。麻田はすみれの注文を引き受けるが、実はある悩みを抱えていたのだった。一方、子供服店・キアリスでは、急激に売り上げが落ちるという事態が起きていた。原因はわからないままだったが、ある日キアリスの商品の偽物が出回っているという情報が入り、真偽を探ろうとすみれたちはその店に乗り込んでいく…。
そして時代は進み、昭和34年。キアリスは10周年を迎え、全国的に知れ渡る企業に成長。すみれは、お客さんの対応に追われ日々忙しく働いていた。すみれの娘・さくら(井頭愛海)と君枝(土村芳)の息子・健太郎(古川雄輝)は15歳になっていた。ある日、さくらと健太郎の高校入学祝いが開かれるが、さくらと健太郎は良子(百田夏菜子)の息子・龍一(森永悠希)に連れられ、ジャズ喫茶「ヨーソロー」を訪れる。さくらはママの大村すず(江波杏子)、アルバイトの山本五月(久保田紗友)、そしてプロを目指すドラマーの河合二郎(林遣都)と出会う。二郎に恋心を抱いたさくらは、本気で演奏する姿を見ようとナイトクラブを訪れ…。
第16週「届かぬ心」
キアリスの新入社員採用試験の準備で帰りが遅くなったすみれ(芳根京子)は、駅前の繁華街で娘のさくら(井頭愛海)らしき影を見かける。紀夫(永山絢斗)と一緒に帰宅すると、やはりさくらは家にいなかった。探しに行こうと慌てて外に出たところに、さくらが幼なじみの健太郎(古川雄輝)、龍一(森永悠希)と帰ってくる。3人がナイトクラブに行っていたと知り、紀夫とすみれは激しく怒るが、親の心配をよそにさくらは大人の世界へ進んでゆく。誕生日にジャズ喫茶「ヨーソロー」を訪れたさくらは、アルバイトの五月(久保田紗友)とドラム演奏者の二郎(林遣都)にサプライズで祝福される。感激したさくらはそのまま再びナイトクラブへ。帰りが遅いさくらを心配したすみれも、ナイトクラブを訪れるが、そこで偶然居合わせた栄輔(松下優也)と10年ぶりに再会する。驚きと混乱の中で、さくらを強引に家に連れて帰ろうとするすみれ。しかし、さくらはそんなすみれに反発する。言うことを聞かないさくらにいらだったすみれは思わず手をあげてしまうのだった。翌朝、和解しようとすみれがさくらの部屋に入ると、ベッドはもぬけの殻で…。
第17週「明日への旅」
すみれ(芳根京子)は、任されていた大急百貨店の展示のテーマを「女の一生」に決め、明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と準備を進めていく。一方で、家出中の娘・さくら(井頭愛海)は姉のゆり(蓮佛美沙子)の家からいまだ帰らない。すみれは夫の紀夫(永山絢斗)に「会いに行かないか」と誘われるが、「今はまだかける言葉が見つからない」と断るのだった。一方、潔(高良健吾)は紀夫から、昔一緒に働いていた岩佐栄輔(松下優也)が神戸に戻ってきたという情報を得る。若者に大流行している洋服店「エイス」を経営しているのが栄輔だと思い当たった潔は、早速大急百貨店に推薦の話を持ちかけていく。しかし、若者向けの女性ファッションに進出しようと事業を進めていた潔は、栄輔も同じ分野に進出しようとしていることを知り、ふたりは対決必至な状況に…。そして、展示の制作を通じて思いを固めたすみれは、家出中のさくらに会いに行く。すっかり心を閉ざしてしまっているさくらに、すみれは自分の気持ちを必死で伝えるが…。
第18週「守るべきもの」
すみれ(芳根京子)のもとに一通の手紙が届く。キアリスが作る赤ちゃん用の肌着の素材となるメリヤスを作る工場が廃業するという知らせだった。父・五十八(生瀬勝久)と共に工場を訪ねるすみれだったが、すでに権利は新しい経営者に移ってしまっていた。その経営者は、若者に大人気の「エイス」を率いる栄輔(松下優也)だった。すみれは栄輔にメリヤスを卸してくれるよう頼むが、栄輔に冷たく断られてしまう。すみれは仲間の明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と一緒に新しい仕入れ先を探すが、なかなか納得できるものがみつからず……。一方、すみれの娘・さくら(井頭愛海)は、相変わらず家出を続けていた。ある日、ジャズ喫茶「ヨーソロー」で働いていた五月(久保田紗友)が、何も言わずに姿を消してしまう。恋人の二郎(林遣都)は五月を探すがみつからない。五月の代わりに「ヨーソロー」で働くようになったさくらは、五月への思いを断ち切り、東京でプロのドラム演奏者になろうと夢見る二郎を応援していく内に再び思いを募らせていく。そんな時、すみれは行方知れずとなっていた五月をみつけ、彼女が妊娠していることを知ってしまう。
第19週「希望」
すみれ(芳根京子)は無断で東京に行こうとしていた娘のさくら(井頭愛海)をジャズ喫茶「ヨーソロー」でみつける。ドラム奏者としてプロを目指していた二郎(林遣都)は東京のスカウトから誘いを受けていたが、すみれに促されたさくらから、恋人の五月(久保田紗友)が妊娠していることを伝えられる。五月が姿を消した本当の理由を知った二郎は、すぐに五月が居るすみれたちの家を訪ねるが、五月には「重荷になりたくない」と拒まれてしまう。そんな中、執事の忠一郎(曽我廼家文童)から、父・五十八(生瀬勝久)が倒れたという連絡が入る。すみれたちは急いで近江の実家を訪ねるが、心臓の病に侵された五十八は寝込んだまま目を覚まさない。夢の中で亡き妻・はな(菅野美穂)と話をする五十八。翌日、目を覚ました五十八は、すみれと姉のゆり(蓮佛美沙子)、それぞれの夫の紀夫(永山絢斗)、潔(高良健吾)に思いを伝える。五十八の思いを知ったさくらは、自分のやりたいことをみつけるため、幼なじみの健太郎(古川雄輝)や龍一(森永悠希)と一緒に「キアリス」でアルバイトを始める。すみれの仕事に対する姿勢や、商品に込めた深い思いを知り、さくらが変わり始める。
第20週「旅立ちのとき」
昭和37年6月。ある日、すみれ(芳根京子)と娘・さくら(井頭愛海)は、すみれの父・五十八(生瀬勝久)に長年仕えてきた忠一郎(曽我廼家文童)と女中の喜代(宮田圭子)が、「二人で旅に出よう」と話しこむのを耳にする。二人の決断を尊重しようと決意するすみれと紀夫(永山絢斗)だったが、さらに自分の将来に悩んでいた龍一(森永悠希)も「世界中を旅したい」と言いだし…。一方、すみれ、明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)は、15歳の時から「キアリス」のために働き続けてくれているタケちゃん(中島広稀)に縁談相手をみつけようと奔走する。しかし、タケちゃんの心の中には未だに明美への思いがくすぶっていた。タケちゃんは酔った勢いでその気持ちを後輩の中西(森優作)に漏らしてしまう。またたく間にその思いは周囲の知るところとなり、後押しを受けたタケちゃんは再度明美に告白することに。そして秋になり、さくらと健太郎(古川雄輝)は大学受験の願書提出の時期を迎える。関西の大学に行って欲しいと家族に期待されていた健太郎だったが、本当は東京の大学に行きたいという思いを抱えており…。それぞれの旅立ちの時が迫る。
第21週「新世界へ、ようこそ」
昭和44年4月。株式会社「キアリス」は、創業20周年を記念してパーティーを開いていた。社員数は大きく増え、専門知識を持った若い社員も働くように。会社の成長に深い感慨を得るすみれ(芳根京子)、明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)。秋になり、「キアリス」の新入社員採用面接が実施される。その候補者の中に娘のさくら(井頭愛海)や君枝の息子・健太郎(古川雄輝)の姿を見つけ驚くすみれたち。すみれや社長の紀夫(永山絢斗)、君枝は「身内を入れれば会社に悪い影響を与える可能性がある」と二人の採用に反対するが、人事部長の中西(森優作)は、「ひとりの人間として会社に有益であるかどうかを判断したい」と主張する。社内でも意見は割れるが、義兄の潔(高良健吾)の助言もあり、最終的には試験を受けさせ、実力をみて判断するということに。試験は公平性を保つため無記名で実施。果たしてその結果は…。一方、万博の開催を受けて沸き立つ大阪。万博関連の番組には大手商社「KADOSHO」社長・古門(西岡德馬)と「エイス」の社長・栄輔(松下優也)の姿が。栄輔は時代の波に乗り、大きく成長していた。
第22週「母の背中」
キアリスですみれ(芳根京子)たちの下で働くようになったさくら(井頭愛海)は、念願のデザイン部に配属される。意気込んださくらは、女の子用のワンピースのデザインを提案するが、すみれたちにはっきりと改善点を示されないまま却下され、「キアリスらしさ」について思い悩む。君枝(土村芳)の息子・健太郎(古川雄輝)は開発宣伝部に配属されるが、経営陣の身内が入ってきたことを快く思わない社員たちには歓迎されない。問題を知った紀夫(永山絢斗)は、老朽化が進んでいたキアリス本店を改修する2週間の期間限定で、若手社員だけで仮店舗を営業させ、結束を強めようと考える。しかし、仮店舗オープンの初日、客はほとんど訪れず…。一方、大阪万博が開幕し、世界中から多くの外国人が日本を訪れていた。日本中が沸き立つ中、すみれと紀夫は大手商社の「KADOSHO」を訪れる。そこで待ち受けていたのは、「エイス」社長として時代のちょうじとなっていた栄輔(松下優也)だった。「KADOSHO」社長の古門(西岡德馬)の協力を得て、万博のショーを演出することになっていた栄輔は、子供たちに着せる衣装の提供をキアリスに依頼する。突然訪れた大仕事に、すみれたちは奮起する。
第23週「あいを継ぐもの」
すみれ(芳根京子)・紀夫(永山絢斗)夫婦と君枝(土村芳)・昭一(平岡祐太)夫婦は、さくら(井頭愛海)と健太郎(古川雄輝)の結婚を受け入れようとするが、一人息子と一人娘の結婚のため、家の継承問題でこじれてしまう。すみれ夫婦は、潔(高良健吾)とゆり(蓮佛美沙子)の家を訪ね、坂東家の存続について相談する。潔からの提案もあり、紀夫は実父である田中五郎(堀内正美)と会い、自分を婿養子として坂東家に出した際の親の気持ちを知り、考え方を変えていく。それから3年後、キアリスの開発宣伝部長となった健太郎は、大手商社社長の古門(西岡德馬)から「成長のスピードが重要」という助言を受け、売り上げを上げるためキアリスを大きく変えようと奔走する。健太郎の言動に違和感を抱くすみれだったが…。一方、オイルショックによって日本の経済は大混乱に陥った。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった栄輔(松下優也)のエイスは、売り上げが下がり始めたことを理由に、古門から見放され、資金繰りに失敗してしまう。エイスはついに破綻し、社長の栄輔も行方をくらませる。
第24週「光の射す方へ」
エイスが倒産し、家も仕事も失った栄輔(松下優也)は、潔(高良健吾)とゆり(蓮佛美沙子)の家に居候の身となっていた。一方、エイス倒産のニュースを受け、キアリス・社長の紀夫(永山絢斗)は、これまでの積極的な経営から、慎重な方向に舵を切ろうとしていた。しかし、開発宣伝部の部長となった健太郎(古川雄輝)はその方針に反対。議論が進まない中で、すみれ(芳根京子)が突然、「創業の思いを次世代に引き継ぐための映画を作ろう」と提案し、キアリスの映画作りが始まることに。龍一(森永悠希)に紹介されたプロカメラマン・亀田(上地雄輔)の助けを借りて、内容や役割分担が決められていく。監督は紀夫、助監督は武(中島広稀)、脚本は明美(谷村美月)が担当することに。そんな時、明美は会社が倒産して生気を失っていた栄輔と再会し、映画作りに誘う。あまり気乗りしないまま制作を手伝うことになった栄輔だったが、一歩先を読む段取りの良さで力を発揮していく。映画制作と並行して、「日本中の男をおしゃれにしたい」という栄輔の志を引き継ぎたいと考えていた潔は、ある新事業を始めようとしていた。
第25週「時の魔法」
すみれ(芳根京子)たちは、東京の銀座に空きビルを借り、子育てに必要な物ならなんでもそろうキアリスの「ワンダーランド」を作ろうと意気込んでいた。しかし、君枝(土村芳)の夫・昭一(平岡祐太)が勤務先の銀行で必要な資金を調達できないかと動くが融資は認められなかった。そんな時、大手商社「KADOSHO」の古門(西岡德馬)から資金提供の申し出が。古門は栄輔(松下優也)がエイスを倒産させる元凶となった存在。すみれたちの決断は…。一方で、自分たちの思いが健太郎(古川雄輝)、さくら(井頭愛海)ら次世代のキアリス社員たちに受け継がれていることを確信したすみれたちは、キアリスを引退しようと考える。それを知った栄輔は、明美(谷村美月)に長年抱えていた思いを告白する。すると明美から思いもよらぬ提案が飛び出し…。さらに、キアリスを引退したすみれたちのもとを、ある女性が訪ねてくる。持参した風呂敷を広げると、中から現れたのは28年前に店の看板代わりに作ったワンピースだった。美幸(星野真里)との再会をきっかけに、すみれたちは第二の人生で自分たちがやるべきことを見いだしていく。
最終週(第26週)「エバーグリーン」
昭和59年3月。すみれ(芳根京子)は、月に1回のペースでキアリスに出勤。紀夫(永山絢斗)は趣味のカメラを片手に隠居生活を送るようになっていた。春休みに入り、さくら(井頭愛海)が10歳になった娘の藍(渡邉このみ)を連れてすみれの家を訪れる。藍は、春休みの間はすみれの家で過ごすのが毎年の恒例となっていた。そんなある日、すみれ、明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)は、健太郎(古川雄輝)に呼ばれ食堂「レリビィ」に集まっていた。そこで健太郎が取り出したものは、アメリカから送られてきた一通の手紙。4人は、手紙の中に出てきた「エイミー」という名前を聞いてはっとする。一方、塾に通っていたはずの藍が、数日間も塾に通っていなかったことがわかり、心配するすみれとさくらたち。話を聞こうと帰りを待つものの、夜になっても帰りがない。警察に連絡し、手分けして探すことになるが、すみれは一人自宅で待機することに。藍の無事を必死で祈るすみれだったが、ふと懐かしい声が聞こえてきて…。「べっぴんさん」最終週。思いを込めた特別な品、べっぴんを作り続けてきたすみれたちの最後の物語。