自殺について知ろう

同性愛者の自殺について考える(2)

(2008年度掲載)

平田俊明(ひらた・としあき)さん
AGP(Association of Gay Professionals in Counseling and Medical Allied Fields : 同性愛者医療・福祉・教育・カウンセリング専門家会議)所属。同性愛者向けの電話相談等を行う。京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科専任講師。LGBTフレンドリーで知られる都内の診療所で心理カウンセリングも行う。

社会に見えてこない同性愛者の自殺率の高さ

欧米の調査では、同性愛者の自殺企図率がそうではない人と比べて数倍高いという結果がくり返し報告されています。LGBTと自殺に関する調査研究は数多く行われていますが、過去20年間の文献をレビューした結果、(米国の高校生全体の自殺企図率が7~13%程度と推定されるのに対し)思春期のLGBの自殺企図率については一貫して20~40%程度の数値が報告されていると、ある米国の文献で述べられています。
日本でも、LGBTの自殺念慮や自殺未遂については研究調査の結果があり、それを見ると欧米同様に日本も深刻な状況にあることがわかります。

ゲイ・バイセクシュアル男性を対象として、2005年、京都大学大学院医学研究科の日高庸晴氏(当時。現在は関西看護医療大学講師)らが国の補助を受けてインターネット・ホームページ上で行ったアンケート調査(2005年8月~11月調査実施)によると、約6000人が回答したうち、3人に2人がこれまでに自殺を考えたことがあり、14パーセントは実際に自殺未遂の経験があるとの結果が出た(有効回答数5731)。この割合は1999年実施調査(有効回答数1025)とほぼ同率であった。

※文献
  • ・Hidaka Y, Operario D(2006)
    Attempted suicide, psychological health and exposure to harassment among Japanese homosexual, bisexual or other men questioning their sexual orientation recruited via the Internet. Journal of Epidemiology and Community Health, 60, 962-967

ただし一方で現実に自殺した同性愛者の実態ということで言うと、亡くなったその人がゲイやレズビアンであったかどうか、あるいは性的指向に悩んでいたことが自殺の原因だったのか、などを明らかにできないケースが多く、事実が表面化してこないんです。実態把握の難しさを持っています。

なぜ同性愛者たちが高い自殺リスクを負っているか。ひとつはやはりメンタルヘルスのわるさが挙げられると思います。思春期に自分が同性愛者であると気づく人が多いと思いますが、思春期に至る前までに、同性愛をすごく「ネガティブなもの」としてとらえざるを得ない体験を色々させられてしまっています。

たとえば学校で、教師が(自分のクラスの中にゲイやレズビアンの当事者がいると知らずに)同性愛をからかいのネタにしたり、親もわが子がゲイやレズビアンであるとは思わないで、テレビに出て来た当事者を見て笑ったりバカにしたりする。そうすると、当然、子どもたちは同性愛は「いけないこと」「他人には言えないこと」だと感じてしまいます。

医師やカウンセラーの中にも、同性愛についての正確な知識を持っていない人もいると思います。また一応は同性愛に関する知識を持っていても、ゲイやレズビアンが生きる上での生き難さを知識や実感としてわかっている医師やカウンセラーは少ないと思います。せっかく当事者が思い切って主治医にカミングアウトしたのに、「同性愛は病気ではないし、悩むことではないでしょう」と軽く言われてしまい受け止めてもらえなかった、という当事者の嘆き、不満の声を耳にすることがあります。患者さんが真剣に自分が悩んでいることを伝えた時に、他の訴えだったらちゃんと受け止められる医師でも、同性愛のことをふだん身近なものとして捉えていないために、その重みを受け止めそこねてしまうことがあるようです。

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