日本のデザインは奥深くておもしろい!

デザイン トークス+(プラス)

毎週火曜[Eテレ]後10:50

「デザインの力ってなんだろう?」そんな好奇心をもとに、そこに宿る精神や哲学をひも解きながら日本のデザインの世界を探求する番組「デザイントークス+(プラス)」。
2013年度から海外向けに放送しており、昨年度にEテレでも放送を開始。日本人もあまり気づかなかった日本のデザインの奥深さを改めて発見する番組となっています。

これまで、文房具、お風呂、アシンメトリーなど、いろいろなテーマからデザインの魅力を届けてきました。

あらゆる角度からデザインを見つめる切り口はどのように決まるのか。その舞台裏と、今後の放送内容について、熊田健プロデューサーにお聞きしました。

 日本のデザインの精神を世界と国内に発信

──番組自体はNHKの国際放送で始まり、現在ではEテレでも放送されていますが、どんな思いで制作されていますか?

もともとは海外向けの番組なので、日本のデザインを世界に伝えることが目的としてあります。内容は大きく分けて三つのカテゴリーになっており、ひとつは“素材”をテーマにしたデザインです。これまで放送したなかでいうと、「鏡」や「石」などがそれにあたりますね。日本では古代から鏡を神聖なものとして扱っていて、光を当てて反射させると絵が浮き上がる「魔鏡」というものもあり、独自の考え方を持って鏡が使われてきました。また、シンメトリーを美しく見せる西洋の庭園とは違い、日本では石を使った左右非対称の日本庭園が多くあります。

鏡を使用した建築

もうひとつは“概念”です。世界共通の概念もありますが、日本独特の概念というものがあります。たとえば、四季の変化や時間経過を大事にする精神が昔から日本にはあり、うつろっていくその姿を楽しむ思考が日本人は自然とできています。「はかなさのデザイン」や「一期一会」をテーマにした回では、まさにそういった日本的な考え方、“概念”がデザインに現れたものを紹介しています。

そして三つ目は、日本の地域に根差したデザインです。2016年度に「デザインハンティング」というシリーズが始まりましたが、これは都道府県それぞれのデザインに焦点をあてたものです。その地域はどういうところなのか、どんな風土や歴史があって、どういう伝統が受け継がれてきたのか。そうやって見ていくと、そこで生まれたデザインにはその地域ならではの物語がちゃんとあるんです。地域振興や都市再生もすごく重要なワードですね。番組に出演していただく方の多くは、なんらかの形で社会創生プロジェクトなどに関わっていたりします。地域のブランディングにはデザインの方法、知識が必要だということがわかってきています。

──ひと言に“デザイン”といってもいろいろな切り口があるんですね。

そうですね。僕もこの番組に携わるまで、ビジュアル的なアウトプットがデザインだと思っていたのですが、具体的に見えているもののうしろにある哲学や概念、それらをどう表すかという手段や方法を全部含めたものがデザインなんだということを知りました。表に出てくるものの裏側にはいろいろなストーリーがある。それ込みで“デザイン”なんですね。

──取り上げるテーマはどのように決めているのですか?

常にディレクターたちがさまざまなアンテナを張り巡らせていますが、制作の手順でいうと、テーマから入ることもあれば取材対象となるクリエイターやトピックから入ることもあります。ですから制作チームは、デザインの世界でどういうことが起きているのかに目を向けています。
スタジオに呼ぶゲストが決まると、その方の創作活動をどういうキーワードで解くか、そのキーワードで紹介できる日本のデザインでほかにはどういうものがあるか、キーワードから派生するもの、引っかかるものを探して、番組全体としてストーリーを組み立てていきます。

──驚くのは毎回、ゲストの方々のトークがとてもわかりやすいことです。

そこがすごいところで、やはりデザインを自分で考えている皆さんは、自分のなかに確固たる哲学がしっかりあるんですね。だからこそトークもおもしろいのだと思います。

左から建築家・田根剛さん、アンドレア・ポンピリオさん、シャウラさん

──MCのアンドレア・ポンピリオさんとシャウラさんはどんな方たちですか?

アンドレアさんは、東京育ちで高校からイタリアへ。シャウラさんはハワイ育ちというバックグラウンドをお持ちです。日本のさまざまな文化、社会をよくご存知で、臨機応変にかみくだき、言いかえをして発信してくださっています。

日本以外の文化圏でのご自身の体験や感覚などを、比較材料としてお話になることもありますね。英題やテーマのコンセプトについても、お2人と相談しながら決めることがあります。「一期一会」は「Treasure every encounter(すべての出会いを大切にすること)」、「はかなさ」は「Transience(一時的なもので、常に変化すること)」などのように、「言い換え」で乗り切ることもありますが、言い換えが困難だった「ふるまい」の回は、「furumai」を英語版のエピソードタイトルにして、冒頭のスタジオで「furumaiという日本語は、行動behaviorや動作movemnt、作動action、行為conduct…など、身体や物の動きをあらわす独特の言葉」という説明をお2人にしてもらったりもしました。

 テーマは「織る」「天象」「ハンティング」

──今後の放送内容について教えてください。

これから放送するテーマのひとつは、「織る」です。西陣織は1200年間ひたすら美を求め発展してきた緻密な織物で、“世界で最も複雑な構造が作れる”と言われていますが、その伝統にあぐらをかくのではなく革新的な挑戦もしています。大手老舗の12代目は、たとえば大手電機メーカーのエレクトロニクス技術とコラボして、織り込んだ金箔や銀箔がセンサーとなって手をかざすと音が鳴る織物を作り出しました。一方で“織る”という行為自体は、太古から続く誰でもできるシンプルな創作活動ですが、そのことを通じて人と人とのつながりを作るムーブメントに取り組んでいるアーティストもいます。そうした意味で、ものづくりの根源的な側面を考える回になっています。

「天象」は耳慣れない言葉かもしれませんが、太陽、月、星、空の表情などのことです。たとえば地球規模の環境問題や気候変動などは知識としてはあっても、なかなか実感できない。それが実感できる「触れる地球」を作った研究者をスタジオに招きます。IT技術を使った直径1m少しの“インタラクティブ地球儀”で、そのときそのときのリアルタイムの気象情報などを映し出すものです。世界のどこかで起きている現象は、ほかのどこかで起きていることとどうつながっているのか、それを触りながら知ることができます。また、都心でありながら太陽や月のあかりのちょっとした変化を室内で感じられる建築や、プラネタリウムの世界に革命をもたらしたと言われるクリエイターも登場します。

「デザインハンティング」では、2つの県に行きます。山形県の回では、世界に誇る木工家具に込められた思いや、わら細工を独自の感性でよみがえらせた作家、パッケージデザインなどを通して地域のアイデンティティーを追求するデザイナーなどを紹介します。岐阜県では、食品サンプルの開発秘話や和傘のニューウェーブ、次世代の地域発のクリエイターを育てる教育機関の取り組みなどを紹介します。バラバラに見えるそれぞれのプロダクトや取り組みをつなぐと、その県ごとの物語が浮かびあがってきます。

 国際放送番組をEテレで放送する意味

──もとは国際放送向けに制作したからこその強みもありそうですね。

NHKワールドJAPANがスタートだったので、日本のものの考え方を特徴的にピックアップできたというのはありますね。僕もこの番組に関わってから、「日本のデザインってこんな考え方をしていたのか」というおもしろい発見が多く、常に学んでいる状態です。この番組を通して、表に出ているものだけがデザインではなく、いろいろな人やモノの関わり、歴史があってこそのデザインだということが見てくださる方に伝われば、デザインの世界に携わらない人にとってもなにか新しい“気づき”を共有できるのではないかと思っています。

深く濃厚なデザインの世界を、ぜひお楽しみください!

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