恐竜CG制作の裏側【恐竜モデル制作&アニメーション】

NHKスペシャル「恐竜超世界」

7月7日(日)、14日(日)[総合]後9:00

【再放送】
第1集 7月17日(水)[総合]前0:35 ※火曜深夜
第2集 7月18日(木)[総合]前0:55 ※水曜深夜

NHKの恐竜番組の集大成とも呼べる、NHKスペシャル「恐竜超世界」が7月に2週連続で放送!

先日ご紹介した、制作者インタビュー(1)演出&CG・VFXチームに続き、今回は番組に登場する恐竜のモデルを制作した担当者と、その恐竜に動きをつけるアニメーションチームのインタビューをお届けします。

 現代の生きものを参考に恐竜をつくる!

恐竜の形を作り、色を決めるチームの遠藤龍一さん、加藤久典さん

──今回の「恐竜超世界」では、今までの恐竜番組以上にたくさんの恐竜が登場すると伺いました。加藤さんたちは、どんな風に恐竜のモデルを作っていったのですか?

加藤:まず、考証の先生から資料をいただきます。骨格なども種類によって異なっているので、その資料をもとに僕らやCGアーティストさんがデザイン画を描いて…というのがスタートですね。いきなり細かく作り始めてからNGが入ると時間もロスしてしまいますし、イメージを共有してから制作に入ることが一番大切なので。ただ、イラストの時は監督も僕らも「いいね、これ!」となっても、実際CGで作ってみるとちょっと違う、なんてことはありました。

デイノケイルスのデザイン画

──恐竜の色や質感は、どのように決めていくのでしょうか?

加藤:いま存在している生きものの中から進化の過程や生きている環境が似ているもの、大体は鳥ですが、そこからヒントと根拠を得ます。パーツごとに細かくどの生きものの何を参考にしているのか、写真などを添えて先生やディレクターに提案していきました。

例えば僕が担当した「トロオドン」は、実はもっと派手な感じでいろいろな色を使おうかという意見もあったんです。ですが、寒いところに住んでいる設定だったので、実際に寒冷地の鳥を調べてみたら色は白と黒が多いことが発覚。そこで、こんなイメージはどうですかと提案し、それが通ったりしました。

トロオドンのデザイン画。左が最初のイメージ、右は修正後

 「毛」の生えた恐竜を作ること、実はあまりないんです

──恐竜たちの色が決まったら、次の工程は?

加藤:モデルを制作していきます。今回40体くらい作らなければならなかったのですが、恐竜を分類した上で、各担当者の得意なものを割り振って制作しました。

遠藤:僕はティラノサウルス系を多くデザインしました。タルボサウルスなど、サイズは違うんですけれど、同じ系統で割と色も無難だったので作りやすかったです。

──作業するなかで一番苦労したところは?

加藤:恐竜たちの模様です。毛がある恐竜をカッコ良く見せることが難しかったですね。それから、考証の先生方はもちろんのこと、見ている人たちが納得する見た目にするにはどうしたらよいのかを終始考えながら作っていきました。

遠藤:僕はとにかく毛の感覚をつかめなくて大変でした。デザイン画通りに背中の毛の色を緑にしたら、サッカー場の芝生を背負っているみたいになっちゃって(笑)。カラフルな毛を生やしたとき、着ぐるみやぬいぐるみっぽくならないように心がけました。

左が芝生みたいになってしまったというパキリノサウルス、右は完成形

──制作中、楽しかったことは?

加藤:毛の生えたCGキャラクターを作る仕事って、実はあまりないんですよ。特に日本だとチャレンジングだし、おもしろいし、勉強にもなりました。恐竜たちにはいろいろな種類の毛が生えているので、その質感なども注目してみてください。

遠藤:僕も毛ですね。大変だったけれど、楽しかったので。あとは、子どもの恐竜。大人の恐竜たちとは比率も異なるので「可愛かわいくしたいね」とみんなで話し合って練っていきました。ぜひ見てみてください。


 骨を入れて動かすアニメーション!

アニメーションチーム:小川光悦さん、東 孝太郎さん、丹原 亮さん

──加藤さんたちのモデル制作をて、アニメーションチームではどんな作業をするのですか?

小川:簡単にいうと、恐竜モデルに骨を入れて動かす準備と、実際に動かすところを担当しています。骨を入れるというのは人間と同じで、ちゃんと正しい間接の位置に骨のようなものをいれて「ここを基点にするとこう動く」という軸を作るためです。

──小川さんは背景実写ロケにも同行されたとか。現場では完成映像をイメージしながら撮影したのですか?

小川:ロケでは、恐竜たちが歩く背景部分を撮影してきました。これは「恐竜がいる前提」で風景を撮らなければならないのですが、恐竜が歩いているスピードは、誰にもわからないわけです。

例えば体長5メートルの恐竜と、普通の牛が同じように歩いていたとします。すると恐竜は歩幅が大きいため、歩くスピードも意外と早いんです。人間が同じリズムで歩いていても足の長さで進める距離が変わってくるじゃないですか。それと同じですね。

なので、カメラが恐竜を追いかけるスピードや、スタッフが恐竜に扮して歩く姿を見ながら「それはちょっと早すぎます」など、アニメーションを想定し声をかけたりしていました。

現場では恐竜の大きさなどイメージしながら撮影

──その後の制作の流れは?

小川:ロケで撮ってきた実写背景に、加藤さんたちが作った恐竜モデル(“毛”は生えていないもの)が合わさって、スーっと固まりのまま動いている映像が届きます。僕らはその恐竜モデルたちに、生きものらしいリアルな動きを一歩一歩つけていくわけです。

丹原:ザックリこう動かして欲しいという要望は、指示書としてもらうのですが、それに合わせて実際に動きをあてはめてみた結果、「もうちょっとこうしたほうがいい」とか「これは難しいので、こうするのはどうか」という提案を出したりもします。そこはお互い相談しあう感じで、動きが出来上がったら、毛や影などが合成されます。

 前代未聞の1分越えカットは必見!

──制作する上で苦労されたところを教えてください。

小川:陸上では地面のうえに恐竜が立っているので、常に重力を感じさせなければならない分、表現するのが大変というのはあります。今回はロケ現場で地形を3Dスキャンしてきたので、凸凹した実際の地形がCG上で存在するんですよ。だからその凸凹にあわせ、一歩一歩を処理する必要もありました。

あとカット数の多さですね。今回600カットくらいありまして…。カメラの切り替わりまでを「1カット」と数えるのですが、今回僕が担当したものの中には1カット1分ほどの長尺があるんです。

──前回の記事で植田ディレクターが語っていた、第1集の見せ場、恐竜たちのバトルシーンですね。

小川:アニメーションの世界では、1カット30秒で長いとされているので、1分越えは前代未聞です。1体の行動がもう1体に作用することを“インタラクション”というんですけど、2体が絡み合ったり噛みついたりするシーンが2カットあります。それをふたり(東さん、丹原さん)も担当しています。

アニメーションチームが制作中のバトルシーン

丹原:単純に恐竜が一方向に歩くだけならそんなに難しくないのですが、今回は本当にいろいろな動きがふんだんに盛り込まれているんですよ。

東:恐竜たちがぐるぐるまわったりすると、その分手数が必要になって、時間がかかりますしね。

小川:さらに今回はちゃんと地面が凸凹しているから、それにあわせて高さも軸も合わせないといけない。その3軸をちゃんと調整する大変さや難しさを感じました。

──逆に楽しかったところ、やりがいを感じたところは?

小川:先ほど話した長尺カットは、大変だった分、やりがいも感じました。それから今回、子どもの恐竜がいっぱい出てきます。恐竜って大人は何メートルもあるのに、子どもは10、20cmとかのサイズで作るんです。演出陣から大人の恐竜たちは「大きさを出したい」という希望をいただいていて、散々恐竜を大きく見せなければ! とやってきたので、ちょこちょこ動く子どもを作るときは楽しかったです(笑)。

東:恐竜映画や野生動物の映像を普段からかなり見て研究しているので、その中から体型が近い動物を探し、つぶさに観察して落とし込む。それを反復して実践で出来たことが良い経験になりました。

丹原:一般の方が見てもわからないレベルなのですが、「このワンアクションうまくいったな!」っていうのが個人的に何か所かあったりするんです。単純に恐竜が振り向くだけとか。

東:わかる! ちょっと鼻先を遅らせたことで動きに重さが出たな、とかありますよね。

丹原:本当に細かいところですが、そんなところに僕らは喜びを見出しています。それがアニメーターという人種かもしれません(笑)。

次回はいよいよ連載ラスト!
エフェクト、ライティング、CG合成担当者の声をご紹介します。お楽しみに!

NHKスペシャル「恐竜超世界」

【放送予定】[総合]後9:00~9:49
7月7日(日)第1集 見えてきた!ホントの恐竜
7月14日(日)第2集 史上最強!海のモンスター

【再放送】
第1集 7月17日(水)[総合]前0:35 ※火曜深夜
第2集 7月18日(木)[総合]前0:55 ※水曜深夜

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