アガサ・クリスティー映像化作品の最高峰

情婦【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

9月11日(水)[BSプレミアム]後1:00

ミステリーの女王といえば…、まず思い浮かぶのはアガサ・クリスティーではないでしょうか。1890年生まれ、灰色の脳細胞・エルキュール・ポワロが活躍する『オリエント急行殺人事件』や、ミス・マープルの名推理がさえる『予告殺人』など、代表作の多くは1920~50年代に発表されましたが、その作品は今も読み継がれ、映像化もさかんです。そんなクリスティーの映像化作品の最高峰ともされるのが「情婦」(1957)です。

“どんでん返し”&名優たちの名演技が魅力の法廷ミステリー

ロンドン法曹界の長老ウィルフリッド卿は、裕福な未亡人の殺害容疑で逮捕されたヴォールの無罪を信じ、弁護を引き受けます。ところが、法廷でヴォールの妻・クリスティーネが述べたのは、夫に不利な証言でした…。

ミステリー映画の大きな魅力といえば、あっと驚く展開“どんでん返し”ですが、この作品は“どんでん返し”こそがテーマとも思えるほどです。

クリスティーが自身の短編小説を戯曲化した舞台劇「検察側の証人」をもとに、監督・脚本をてがけたのがビリー・ワイルダー。コメディー「お熱いのがお好き」(1959)、ノワール「深夜の告白」(1944)、ロマコメ「麗しのサブリナ」(1954)、それぞれのジャンルの金字塔ともいえる映画を発表した、アメリカ映画を代表する巨匠です。軽妙な会話、精緻なプロットは、多くのクリエーターたちから尊敬され、日本では三谷幸喜さんが深くリスペクトしていることでも知られています。

物語はもちろんですが、魅力的なのは名優たちの名演技。ミステリアスなクリスティーネを演じるのはマレーネ・ディートリッヒ。スレンダーで官能的、脚線美でも知られ、サイレント時代からドイツで活躍、1930年代からはハリウッドにわたり、数々の名作に出演、歌手としても活躍した20世紀を代表する大スターです。ヴォールを演じるのはタイロン・パワー。ハンサムなスターとして知られていましたが、この映画での演技は高く評価されました。ウィルフリッド卿を演じるのは、巨体が印象的なイギリス出身の重鎮・チャールズ・ロートン、ロートンの妻で「フランケンシュタインの花嫁」(1935)などに出演し、この作品でアカデミー賞にノミネートされたエルザ・ランチェスターも印象的です。

何度見ても、巧みな語りにうならされますし、まだ見たことがない、という方がいらっしゃったら、うらやましい限りです。クリスティーとワイルダー、名優たちの魅力、法廷ミステリーの名作を存分に味わっていただきたいと思います。

【放送日時】
プレミアムシネマ「情婦」
9月11日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:57

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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