何度見てもおもしろい金田一耕助の名作!

悪魔の手毬唄【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

10月3日(木)[BSプレミアム]後1:00

昭和27年、旧知の磯川警部から20年前の未解決事件の調査を依頼され、金田一耕助は鬼首村にやってきます。そんななか、古くから伝わる手毬唄てまりうたになぞらえて、村の娘が次々に殺害される事件が…。
今回ご紹介するのは、横溝正史の映画化作品のなかでも、ひときわ評価の高い、市川 崑監督の傑作ミステリーです。

物語の重要なカギは・・・“活動弁士”

「犬神家の一族」(1976)が大ヒットし、2作目の横溝作品となった市川監督、この映画では、閉鎖的な小さな村で起きる悲劇を、色彩をおさえた冬枯れの景色のなかで描いていきます。金田一耕助が峠で遭遇する老女は絶品の恐ろしさ。手拭いを深くかぶり、つえをついて腰を大きく曲げ、「お庄屋さんのところへ戻ってまいりました」としゃがれ声でつぶやきながら歩く、おはんは強烈です。

物語の重要なカギとなるのは活動弁士。映画創成期・サイレントの時代、日本では、活動弁士は映画スターのような人気がありましたが、トーキーが登場、次第に姿を消していきました。市川監督は1915年生まれ、当時の映画をめぐる変化を、身をもって感じていたのだと思います。そんな時代を象徴するように、伊藤大輔監督・大河内傳次郎主演のサイレント映画「新版大岡政談」(1928)、トーキー・字幕スーパーで上映されたマレーネ・ディートリッヒ、ゲーリー・クーパー共演、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の「モロッコ」(1930)が登場します。

大きな魅力は出演者。石坂浩二さんは、鋭く理知的でありながら、お人よしで謙虚な名探偵・金田一耕助をさわやかに演じています。共演は岸 惠子さん。当時40代半ば、フランス在住で、洗練された美しさの岸さんですが、ひなびた旅館を気丈に切り盛りし、どこか陰のある女主人・リカはピッタリです。岡山県警の磯川警部を演じるのは若山富三郎さん。「子連れ狼シリーズ」はじめ数々の時代劇や任きょう映画で大活躍した名優ですが、人情味あふれる初老の警察官を見事に演じています。さらに、村の事情を深く知るお庄屋を演じる中村伸郎さんの不気味な存在感、シリーズ常連の草笛光子さん、そして、加藤 武さん、三木のり平さん、岡本信人さん、大滝秀治さん、といった抜群のバイプレーヤーが、暗く悲しい物語に絶妙のユーモアを添えています。見るたびに、市川監督の緩急自在の演出にうならされます。

7日午後9時からは、シリーズ第1作「犬神家の一族」、9日には、第3作「獄門島」(1977)も放送です。何度見てもおもしろい金田一耕助の名作、ぜひご覧ください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「悪魔の手毬唄」
10月3日(木)[BSプレミアム]後1:00〜3:25

プレミアムシネマ「犬神家の一族」
10月7日(月)[BSプレミアム]後9:00〜11:26

プレミアムシネマ「獄門島」
10月9日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:22

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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