巨匠マーティン・スコセッシ監督が
モノクロ映像で描く傑作

レイジング・ブル【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

10月23日(水)[BSプレミアム]後1:00

映画への深い愛と教養をバックボーンに、凝りに凝った映像・演出で見るものを圧倒する名監督マーティン・スコセッシと、徹底的なリサーチで演じる人物に没入する名優ロバート・デ・ニーロ。「タクシードライバー」(1976)、「グッドフェローズ」(1990)、40年以上にわたって傑作を作りつづけてきた名コンビの最高の一つといわれるのが「レイジング・ブル」(1980)です。

大胆な演出と、ギリギリまで攻めた名演技の数々

1940年代から50年代にかけて活躍した、ニューヨーク出身の実在のボクサー・ジェイク・ラモッタ。抜群の体力とセンスで“怒れる牡牛おうし”と呼ばれ、ミドル級世界チャンピオンに輝きますが、嫉妬深く独善的なふるまいから、妻や深い絆で結ばれていた弟との関係をこわしてしまいます。引退し、不摂生な生活で丸々まるまるとなったジェイクは、芸人となり場末のクラブのステージに立ちますが…。

ラモッタの自伝をもとにしたこの作品、スコセッシ監督は、名撮影監督マイケル・チャップマンとともに、スローモーションやストップモーション、細かいカットを重ねたかと思うと、ラモッタがリングにあがるまでを長回しで追うなど、大胆なカメラワークと演出で、ジェイクの心象をも表現する迫真の場面を作りあげました。当時カラーフィルムの退色問題に取り組んでいたスコセッシ監督は、ボクシングが題材の「ボディ・アンド・ソウル」(1947)や兄弟の相克がテーマのノワール「悪の力」(1948)といった過去の傑作や、師と仰ぎ深く尊敬していた「赤い靴」(1948)などのイギリスの名監督・マイケル・パウエルの助言をうけ、あえてモノクロにしたということです。

そして、当時30代後半のデ・ニーロの名演技。体を鍛えあげファイトシーンを熱演、引退後のジェイクを演じるため、実際に20キロ以上も体重を増やして臨んだこん身の演技は絶賛され、アカデミー主演男優賞を受賞しました。
ファイトシーンはもちろんですが、胸をうたれるのが、芸人となったジェイクが、クラブの楽屋でエリア・カザン監督の名作「波止場」(1954)でのマーロン・ブランドのものまねを一人リハーサルする場面。元ボクサーのテリーを演じるブランドになりきるジェイクを、デ・ニーロが演じるという、一歩間違えば、陳腐で台なしになってしまう難しい場面ですが、栄光と転落を経て、すべてを失い、それでも生きていこうとするジェイクを演じるデ・ニーロの、ギリギリまで攻めた表現にノックアウトされます。

演技・演出・映像・音、まさに完璧な傑作をじっくりお楽しみください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「レイジング・ブル」
10月23日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:10

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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