ふたりの絆を象徴する“レモンパイ”が食べたくなる...

ミリオンダラー・ベイビー【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

2月10日(月)[BSプレミアム]後1:00

ボクシングの名トレーナーでありながら、不器用で、家族にも教え子にも去られてしまったフランキーのもとへ、マギーという女性が指導してほしいとやってきます。はじめは申し出を断りますが、どん底の生活から抜け出したいというマギーの熱意に負け、トレーナーとなるフランキー。マギーは連戦連勝し、ついにタイトル・マッチを迎えますが…。

ストーリーを彩る「食べ物」にも注目

今年90歳、先月には最新監督作「リチャード・ジュエル」(2019)が公開され、現役真っ最中のクリント・イーストウッド。そのイーストウッドがフランキーを演じ監督も務め、2度目のアカデミー作品賞・監督賞を受賞、マギーを演じたヒラリー・スワンクが主演女優賞、フランキーの同僚で友人を演じたモーガン・フリーマンが助演男優賞に輝いたのがこの作品です。

絆、愛情、責任、人間の尊厳をドラマチックに描き、絶賛されたこの作品、見終わって、ことばにならない深い感情がこみあげてきます。ズシリと重いこの映画で、少し心が和らぐのがレモンパイの場面。フランキーは、マギーが父親とよく通ったという食堂で、本物のレモンを使ったパイを食べ、何ともいえない表情になります。ふたりの心が結ばれていることが感じられる、このすばらしい場面を思い出すと、私も食べたくなってしまいます。

イーストウッドの出演作品は食べ物が印象的です。「ダーティハリー」(1971)では、ハリー・キャラハン刑事が、なじみの店でホットドッグを食べている最中、事件が発生。キャラハンはホットドッグをほおばりながら現場に向かいます。
シーフードが名物のニューオーリンズが舞台の「タイトロープ」(1984)は生ガキ、「ザ・シークレット・サービス」(1993)ではカップのアイスクリームを食べますし、「ブラッド・ワーク」(2002)では、イーストウッド演じる元捜査官が持参したドーナツを、かつての同僚と食べる姿が何ともユーモアに満ちていました。「グラン・トリノ」(2008)では、ビールばかり飲んでいた主人公コワルスキーが、隣に引っ越してきたアジアの少数民族・モン族の料理に舌鼓を打ち、心を開いていきます。そして「運び屋」(2018)に登場するのは全米一というポーク・サンドイッチ。どれも庶民的ですが、おいしそうなものばかりです。

映画で何かを食べる場面というのは、演技も演出もかなり難しいと思うのですが、実に軽やかに食べてしまうイーストウッドには、何度見てもうなってしまいます。

アメリカ映画の巨匠の代表作、食べ物にもどうぞご注目ください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「ミリオンダラー・ベイビー」
2月10日(月)[BSプレミアム]後1:00〜3:14

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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