描きたいのは「光と影」
ディレクターが感じた “本木雅弘” とは──?

プロフェッショナル 仕事の流儀

3月28日(土)[総合]後7:30〜8:43

映画『おくりびと』で、アカデミー賞外国語映画賞を受賞。独特な存在感で世界的な評価を得る国民的俳優・本木雅弘さん(54)が、初めて密着取材を受け入れました。22年ぶりの出演となる大河ドラマ「麒麟がくる」の舞台裏にカメラが潜入し、その一部始終を記録。半年にわたる密着取材で、本木さんの知られざる素顔に迫る73分スペシャルです。

「長い間、役者として踏み迷っている感覚が抜けない。
あえて嫌なことをすれば、次に進むための“真実”が見つかるかもしれない」

本木さんは、人生初となる密着取材を受け入れた理由をこう語りました。意外にも、俳優としての“現在地”に迷いがあるといいます。それを吹っ切るための密着取材は、英国での休日、テレビ初公開となる自宅にまで及びました。本木さんは素直に私生活をさらしました。「実はただの凡人であることがさらされているだけ」としきりにぼやいていましたが、やがて私たちは、国民的俳優の“静かな変質”を目の当たりにしました。

「お尻出したら許してくれますか? 過激なことしたら許してくれますか」

「自分は役者としての“芯”がないんです」

「何者としても規定されたくない自分は何者ですか」

虚無と情熱。狂気と正気。混沌と秩序。
国民的俳優・本木雅弘の“光と影”。あなたは、その真実に陶酔する──。

番組ディレクターインタビュー

番組では、「麒麟がくる」齋藤道三役の舞台裏にも完全密着。リハーサルから本番収録の様子にとどまらず、自宅で役作りに没頭する姿も初めて公開されます。半年に及んだ密着取材を終えたばかりの東森勇二ディレクターに取材エピソードを聞きました。

──本木さんの取材で印象に残ったことは?

取材していて驚いたのは、本木さんの演技プランの細かさですね。大河ドラマの演出の担当も言っていましたけど、本木さんは現場で「本木コンピューター」と呼ばれるほど細かく計算して設計されてるんです。たとえば、そのシーンで斎藤道三がどういう状況に置かれていて、どんなセットで照明はどう当たるか、どういうカメラで、どの位置からどのサイズで撮るか、ということまで想定して、演技プランを組み立てていくんですよね。「ここはアップのだから、顔をこう作ったほうがいいよね」とか細かくイメージして、こうじゃないかな、ああじゃないかなって言って、ご自宅で演技プランを考える段階から仮説を立ててトライしていく。現場でカット割りが変わったらまた調整していく。水を飲むシーンでは、どのくらいの大きさのどんな食器で、どういうふうに飲んで…というイメージまで。
「心配症ゆえの予行演習ってだけで演技を計算しているわけではない」とご本人はおっしゃっていましたが、本番での臨機応変な対応も含めて、いま“怪演”と話題になっている道三の演技の裏には、さまざまな試行錯誤があるということは発見であり驚きでしたね。

“怪演”と話題の斎藤道三の役作りの舞台裏にも完全密着。

本木さんは、カメラが回っていないところでもよくお話をしてくれました。今回の「プロフェッショナル」が番組としてどうやったらおもしろくなるかとか、このシーンはどういう意味で撮るんだっけとか、そんなことをオフの場面で話すことができたので、取材者としての僕自身の覚悟が問われるし、自分の目線の浅さも見抜かれてしまうようでしたね。
本木さん自身、ドキュメンタリーの密着は初めてで、自分がどう描かれるか興味もあるし、覚悟を決めて出てくれました。本当は、密着ドキュメンタリーなんて絶対にやりたくないことだったらしいんですよ。でも、あえてイヤなことをやってみることで、化学反応が起こって新しい気づきがあるかもしれないなと思われ、この取材を受けてくださいました。
密着した6ヶ月の間には、一喜一憂したりネガティブになったり、本木さんも偶発的なことをきっかけに深く自分と向き合うことになったり、表層的には小さな変化だけど本木さんの中では大きく変わったものがあったんじゃないかなと思います。

オフのロンドン行きはマネージャーの方も同行せず、東森ディレクターとカメラマンのみで取材

──半年にわたる取材を終え、本木さんはどんな方だと感じましたか?

大河ドラマの撮影の舞台裏のほかにも、かつて暮らしていたロンドンでの休暇にも同行させてもらって、いろいろな場面を撮らせていただいたんですが、結局まだ本木さんがどんな方なのか、わからないんですよね。皆さんがお持ちのパブリックイメージでも「ミステリアス」というのがあると思いますが、未だにわからない部分も多いです。奥さんの内田也哉子さんにもお話を伺ったんですけど、結局也哉子さんも「わかりません。私もわからないから、東森さんも『本木迷宮』に入っちゃいましたね」って言われたんですよ。
「捉えどころのないところが彼の個性」というふうに、矛盾していたり捉えどころがなかったりすることを能動的にやっているところもあるし、自身の目指す姿として、メジャーな存在でいたいと言う日もあれば、もっととがった表現者でありたいと語る日もあって、インタビューしていても内容が変わることがありました。でもその両軸とも持っていて、本木さんの言葉を借りると「自分は何者なのか自分で決めてしまったら限界値を定められた気分になる」と。だからできるだけ規定されたくない。そういう彼の矛盾する中で揺れていることが、結果的にミステリアスな人を作っているのかもしれません。

現在は日本に拠点を置く本木さんだが、今でも長期のオフはロンドンの自宅で過ごすという

──番組をご覧くださる皆さんへ

あの斎藤道三がどう作られたかの裏側は見どころとしてぜひ。本木さんの役者魂のような部分は見ていただきたいし、存分に楽しんでもらいたいです。しかも、まだ「麒麟がくる」ではオンエアされていない部分も少しご覧いただけるかなと思うので、「麒麟がくる」をよりおもしろく見ていただけると思うし、斎藤道三の役の見え方もより深まるかと思います。
73分で描きたいのは、「本木雅弘の光と影」です。特に「影」の部分は見たことのない本木さんが見られると思います。見たあとに、重たいパンチを食らったような、クラクラしてしまうけど心地いい読後感が残る番組を目指しています。
あと、圧倒的なカッコよさもポイントですね。イケオジの急先鋒、本木雅弘のビジュアルだけでも楽しめます。54歳ですが同性から見ても、顔も心もイケメン。そこも楽しんでもらいたいです。

都内にある本木さんの自宅にテレビカメラが入ったことも初めて

ディレクター・東森勇二
2011年入局。初任の高知局時代に「プロフェッショナル~カツオ漁師・明神学武」などを制作。東京異動後、プロフェッショナル班に所属。「バイオリニスト・樫本大進」「脚本家・坂元裕二」などを手掛ける。現在は「本木雅弘スペシャル」を制作しながら、東京オリンピックを目指す体操選手・内村航平さんに長期密着中(今年7月放送予定)。班では「10 years 1 HIGASHIMORI」といじられる。

プロフェッショナル 仕事の流儀「本木雅弘スペシャル」

【放送予定】3月28日(土)[総合]後7:30〜8:43

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