保険会社の男と美しい人妻 不倫の果てに…

深夜の告白【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

5月14日(木)[BSプレミアム]後1:00

深夜のオフィス。保険会社の男が録音機に告白を始めます。それは、不倫の果てに起きた犯罪でした…。
今回ご紹介するのは名匠ビリー・ワイルダー監督の傑作です。

“フィルム・ノワール”の古典 黒と白の大胆なコントラストの映像美

告白をするフレッド・マクマレイはコメディーで知られていましたが、犯罪に手を染めてしまう保険外交員をシリアスに演じ、高く評価されました。再びワイルダー作品に出演した「アパートの鍵貸します」(1960)でも不倫する会社員を演じているのもおもしろいですよね。マクマレイを誘惑する美しい人妻を演じるのはバーバラ・スタンウィック。1920年代から活躍した、当時のハリウッドを代表する大スターです。30代半ばでのこの作品では、ブロンドの髪とアンクレットが印象的、官能的で大人の魅力にあふれた悪女を見事に演じています。そして、ギャング映画でスターとなった名優エドワード・G・ロビンソンが、事件の真相に迫る調査員をキビキビした早口で演じています。

この作品をはじめ、1940年代から50年代にかけて製作された、犯罪を題材にした映画は“フィルム・ノワール”とも呼ばれます。ドイツ表現主義の影響を受けた、黒と白の大胆なコントラストの映像美が特徴で、この映画もブラインドの斜光が登場人物の不安な心理を効果的に表現しています。

原作はジェームズ・M・ケイン。ジャーナリストだったケインは、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」や、この映画の原作となった「殺人保険」など、実際の事件をモチーフにした犯罪小説を発表し、文学界に新風を吹きこんだ作家です。

そのケインの小説を脚本化したのが、ワイルダー監督とレイモンド・チャンドラー。チャンドラーといえば、名探偵フィリップ・マーロウを創造し、「さらば愛しき女よ」、「長いお別れ」といった名作で、ミステリー・文学ファンにはおなじみの、ハードボイルド小説の巨匠です。当時ハリウッドで仕事をしていたチャンドラーは、このほかにも、アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作「見知らぬ乗客」(1951)の脚本にも参加しています。残念なことに、チャンドラーは、ワイルダー監督ともヒッチコック監督とも良好な関係にはならず、映画の仕事は楽しいものではなかったようですが、この映画では前半にチラッと出演、エドワード・G・ロビンソンのオフィスの外のソファーに腰かけていますので、ご注目ください。

ワイルダー監督ならではの緊張感ある語り口が魅力的なフィルム・ノワールの古典、じっくりお楽しみください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「深夜の告白」
5月14日(木)[BSプレミアム]後1:00〜2:49


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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