「通り名を緋牡丹のお竜と発します」

緋牡丹博徒【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

5月26日(火)[BSプレミアム]後1:00

半世紀ほど前の1960年代から70年代前半に一世を風びした任きょう映画。
当時、鶴田浩二さんや高倉健さんといった大スターと並び、多くのファンから熱狂的に支持されたのが富司純子さんです。富司さんの人気を決定づけたのは「緋牡丹博徒」シリーズで演じた“緋牡丹のお竜”。
今回はそのシリーズ第1作をご紹介します。

富司純子の初主演にして代表作。高倉 健、若山富三郎、脇を固める豪華共演者

明治の中頃、熊本の博徒、矢野組の一人娘・竜子は、殺された父のかたきを討とうと、組を解散し、旅に出ます。各地を流れ“緋牡丹のお竜”となった竜子が、旅先で仲間と出会い、卑劣な悪党たちをやっつける義理と人情の物語は大ヒット。合計8作が作られました。

りんとしたたたずまい、気風きっぷがよくて美しく、曲がったことが大嫌いな、お竜さんを演じた富司純子さん。富司さんの父・俊藤浩滋さんは、数々の任きょう映画の名作を製作したプロデューサーで、1963年に藤 純子の名前で映画デビュー。本格的な主演作となった、このシリーズで大スターとしての地位を確立しました。

共演は高倉 健さん。当時30代後半、お竜さんを助ける旅の博徒・片桐を演じています。義理堅く、どこか陰があり、ひたすら強い、健さんならではの抜群の魅力です。お竜さんに一目ぼれ、お竜さんのためなら何でもする、という四国の熊虎親分を演じるのは若山富三郎さん。鼻を黒くメイクし、大いに笑わせてくれますが、あまりの人気に熊虎親分が主人公のスピンオフ作「シルクハットの大親分」(1970)も作られました。

テンポのよい脚本は、「トラック野郎」シリーズで知られる、娯楽活劇の名匠・鈴木則文監督、そして演出は山下耕作監督です。中村錦之助さん主演、涙と感動の傑作「関の彌太やたッペ」(1963)、三島由紀夫も絶賛し、任きょう映画の頂点ともいわれる鶴田浩二さん主演の「博奕打ち 総長賭博」(1968)をはじめ、時代劇、戦争映画、晩年は教育映画と、さまざまなジャンルの作品を発表した巨匠です。

「タクシードライバー」(1976)の脚本や「アメリカン・ジゴロ」(1980)など数々の作品の監督で知られるアメリカの映画作家・ポール・シュレイダーも、映画評論家として活動していた70年代に発表した任きょう映画を分析する論文で、山下監督の演出を高く評価しています。

1930年、鹿児島県阿久根市生まれ、幼いころから自然が身近だったという山下監督の作品は海や川、花を使った演出が印象的です。この作品でも、白のぼたんが赤く染まる場面にご注目いただきたいと思います。

思わず“お竜さん”を応援したくなる娯楽映画の名作、どうぞお楽しみに。

【放送日時】
プレミアムシネマ「緋牡丹博徒」
5月26日(火)[BSプレミアム]後1:00〜2:39


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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