9月は石原裕次郎 特集!

嵐を呼ぶ男 4Kデジタルリマスター版 ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

この夏、渡 哲也が亡くなる少し前に石原裕次郎と共演する新しいCMが流れ、1987年の夏、7月17日に亡くなった裕次郎を懐かしく思い出していた。そんなとき、石原裕次郎の映画が9月にはまとめて5本オンエアされることに気がついた。デビュー作『太陽の季節』(1956)に始まり、『嵐を呼ぶ男 4Kデジタルリマスター版』(1957)、『あいつと私』(1961)、『若い人』(1962)、『夜霧よ今夜も有難う』(1967)。いずれも公開当時大きな話題になった大ヒット作。『太陽の季節』が公開された直後から日本中で裕次郎ブームが巻き起こっていた。

プレミアムシネマ「太陽の季節」

9月9日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:30

『太陽の季節』は石原慎太郎が55年の7月に「文学界」に発表して文学界新人賞を受賞。続いて第34回芥川賞を受賞して日活で長門裕之、南田洋子主演による映画化が決まった話題作。慎太郎は自分が主演したかったようだが東宝と契約(3本の出演契約があったよう、と当時のスポーツ紙が書いている)していたために叶わず、その代わり、弟の裕次郎が主人公の友人の大学の拳闘部員という端役で出演することになった。小さな役だったが映画が公開された途端に主役を押しのけて人気が炸裂、一躍時代のアイドルになった。このとき慎太郎23歳、裕次郎は21歳だった。それまでの日本映画にはいなかったタイプで、スラリと伸びた長い脚、ダイナミックな存在感、どこかに可愛かわいげのある不良っぽさが魅力の新スターの誕生となった。ただちに慎太郎の脚本で裕次郎の初主演作『狂った果実』(1956)が製作され、スター街道を驀進することになった。

プレミアムシネマ
「嵐を呼ぶ男 4Kデジタルリマスター版」

9月2日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:41

58年の正月映画『嵐を呼ぶ男』は爆発的な大ヒット。これは66年に渡 哲也主演、83年には近藤真彦主演でそれぞれリメークされている。本格的に活躍が始まった57年にはテイチク専属の歌手としての活躍も始まり、映画より一足先に主題歌が製作、発売された「俺は待ってるぜ」は、たちまち10万枚を超えるヒットになった。

プレミアムシネマ「あいつと私」

9月23日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:46

61年には、これまでに「乳母車」「陽のあたる坂道」で成功をおさめてきた青春小説の人気作家・石坂洋次郎原作の『あいつと私』に主演。『太陽の季節』のような不良青年のイメージで大人たちの眉をひそめさせた裕次郎だったが、石坂洋次郎の作品では好青年ぶりを発揮、新たな魅力を生み出している。

プレミアムシネマ「夜霧よ今夜も有難う」

9月16日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:34

16日に放送の『夜霧よ今夜も有難う』の裕次郎が演じるのは横浜でナイトクラブを経営する男。当時の彼は33歳だった。そのクラブにかつての恋人が現れ、彼女の夫で東南アジア出身の革命指導者の国外脱出に力を貸して欲しい、と頼む、というストーリーはどこかで聞いたことがある?そう、これはハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが共演して第16回アカデミー作品賞とマイケル・カーティスが監督賞を受賞した名作「カサブランカ」(1942)の焼き直しだ。まだこの頃の映画界は著作権意識が薄く、同じ裕次郎映画では「赤い波止場」(1958)がジャン・ギャバンの名作「望郷」(1937)を下敷きにしている。日本で著作権問題が大きく取り上げられたのはセルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」(1964)のとき。この映画を買い付けで見た人が黒澤明監督の「用心棒」(1961)がそのままであることに気づき、盗作として訴え、勝利した。「もちろん原作料はもらったわよ」と黒澤映画のスクリプターで、監督亡きあとは黒澤映画を語り続ける野上照代さんが言っている。

プレミアムシネマ「若い人」

9月30日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:31


渡辺祥子

【コラム執筆者】
渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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