※主人公の運び屋は料理は運びません。

運び屋【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

11月23日(月)[BSプレミアム]後9:00

退役軍人で、園芸を営むアールは、仕事に行き詰まり家族ともうまくいかず、孤独な日々を過ごしていました。ある日、アールは車で荷物を運ぶ簡単な仕事だといわれ、それを引き受けます。しかし、その荷物とは大量の麻薬だったのです…。
今回ご紹介するのは巨匠クリント・イーストウッド製作・監督・主演、実話をもとにした犯罪ドラマです。

1930年5月生まれ、今年で90歳のクリント・イーストウッド。先ごろ新作の製作を開始したというニュースが報じられるなど、今も現役真っ最中です。「グラン・トリノ」(2008)以来10年ぶり、88歳での監督・主演作となったのがこの作品。背中もやや丸く、足元が時折フラッとして『大丈夫かしら?』 と、ちょっと心配になってしまう場面もあるのですが、どうやら演技。頑固一徹、わが道をゆくアールをユーモアたっぷりに演じています。麻薬を運びながら余裕しゃくしゃく、鼻歌を歌いながらハンドルを握る表情は絶品です。

脇を固める名優たち、アールを追う捜査官を演じるブラッドリー・クーパーは「アメリカン・スナイパー」(2014)で主演し、イーストウッドを深く尊敬しているとのことで、監督作「アリー/スター誕生」(2018)でも、その演出を参考にしたということです。同じく捜査官を演じるローレンス・フィッシュバーンは「ミスティック・リバー」(2003)に出演しています。初の顔合わせとなるのがアンディ・ガルシア。ギャングのボスを楽しそうに演じていますが、イーストウッド作品ならどんな役でも出演したいと思っていたということです。さらにイーストウッドのまな娘、アリソンも出演しています。

人物の動きにあわせて機敏に動くカメラワークや、運転するアールの車を抜群の構図と色彩でとらえた空撮、美しく輝く夜の光と、イーストウッド作品ならではの映像がさえていますが、撮影はイーストウッド作品初参加のイヴ・ベランジェです。ベランジェは、グザヴィエ・ドラン監督の「わたしはロランス」(2012)やシアーシャ・ローナン主演の「ブルックリン」(2015)などをてがけたカナダ出身の撮影監督。自由かったつなカメラワークと、自然の光を計算した明暗を強調する色彩で、まるでイーストウッド作品を何度もてがけてきたかのような映像を作りあげています。ベランジェは次作「リチャード・ジュエル」(2019)でも撮影を担当しており、イーストウッドの信頼も厚い存在になっているのだと思います。

ラストには思わず笑みがこぼれる巨匠の名作、じっくりお楽しみください。

プレミアムシネマ「運び屋」

11月23日(月)[BSプレミアム]後9:00〜10:57


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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