地獄の入り口で老人は言った
「天国にふさわしい人生を送らなかった」と

天国は待ってくれる【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

12月3日(木)[BSプレミアム]後1:00

年老いて死んだヘンリーは、自分は天国にふさわしい人生を送らなかったと地獄の受付に語ります。少年時代、結婚、子どもが生まれ妻を亡くし、迎えた晩年。ヘンリーが歩んだ人生とは…。
今回ご紹介するのはロマンチック・コメディーの傑作です。

1943年、77年前のこの作品、監督はエルンスト・ルビッチ。ソフィスティケーテッド・コメディーと呼ばれる都会的なセンスの洗練された作品を作りあげ、今なお及ぶもののない天才映画作家として高く評価されています。

1892年、ドイツ・ベルリンで生まれたルビッチは、俳優として活動後、監督となり、映画草創期のドイツで活躍。後にハリウッドに招かれ、1920年代にアメリカへわたります。三角関係や不倫など、ともすると泥沼のようなテーマを、軽妙でしゃれたコメディーに仕立てるルビッチ監督、トーキーになってからはウィットに富んだセリフでも観客を魅了しました。小津安二郎監督もファンの一人で、ルビッチ監督と同じようにドイツから渡米したビリー・ワイルダー監督は、ルビッチ監督のもとで脚本を執筆し、師匠として深く傾倒していたということです。1947年、ルビッチ監督は新作の撮影中に55歳で急逝しましたが、51歳のときに手がけたこの作品も軽やかな演出で、主人公・ヘンリーの誕生日を軸に、彼の人生を語っていきます。ヘンリーを演じるドン・アメチーは1908年生まれ。スリムで端正な容姿と、品のあるユーモアで、数々の映画や舞台・テレビに出演。70代後半で出演し、精力あふれる老人を演じた「コクーン」(1985)で、アカデミー助演男優賞に輝きました。

そんなヘンリーが心から愛する妻、マーサを演じるのがジーン・ティアニーです。澄んだ瞳、スラリとしたスタイル、高い演技力で、犯罪映画の名作「ローラ殺人事件」(1944)「哀愁の湖」(1945)「街の野獣」(1950)、ファンタジック・コメディー「幽霊と未亡人」(1947)など、数々の名作に出演。ハリウッド最高の美女ともいわれた大スターです。この作品では20代前半、輝くような美しさは、ため息がでてしまいます。さらに、ヘンリーの理解者となる祖父ヒューゴを演じるチャールズ・コバーン。大きな体で、地獄行きか天国かを判断する、えんま大王のような受付を演じるレアード・クリーガーと、共演者も魅力的です。

そして、この時代ならではの鮮やかな発色のカラー映像も見るものを魅了します。
ハリウッド映画を代表する傑作コメディー。じっくりお楽しみください。

プレミアムシネマ「天国は待ってくれる」

12月3日(木)[BSプレミアム]後1:00〜2:54


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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