「昔話法廷」脚本・森下佳子さんインタビュー

昔話法廷 ~「桃太郎」裁判~

3月29日(月)[Eテレ]前9:00~9:33
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3月29日(月)の放送で最終章を迎える「昔話法廷~「桃太郎」裁判~」。
脚本を手掛けたのは、数多くのヒット作を生み出してきた森下佳子さんです。侃侃諤諤かんかんがくがくの議論を重ねたという脚本執筆の過程や本作に込めた思いをたっぷりお聞きしました!

「昔話法廷」の印象と脚本執筆のエピソード

「昔話法廷」は、制作規模の大きさや知名度の高さ、放送される時間帯など、番組としてはマイナーかもしれないですが、そこに引けをとらない新しさを感じました。マスクなどの作り込みもすごいと思いましたし。すごくシュールな世界観ですよね。過去作を見ても、けっこう熱いセリフを言っているのに、「えっ動物!?」「動物マスクのままずっと?」というシュールさを感じて、脚本のお話をいただいたときはシンプルに、「おもしろそうだな」「やってみたいな」と思いました。

いざ脚本の打合せに入ると、まず『桃太郎』を題材に、何をどう視聴者にキャッチしてもらうのか、焦点を定めるのが大変でしたね。ぼんやりと目標は見えているのに、そこに行きつく道筋としてどれがベストなのか、ということは、侃侃諤諤かんかんがくがく議論してけっこうんだ気がします。
「昔話法廷」の特徴として、「判決」という結論は出さないじゃないですか。ディレクターから、「番組を見た子どもたちの考える判決が、五分五分に分かれるのが理想」とお聞きして、見たときの印象がどちらかに固まってしまわないようにしなければいけないというのが、他の作品と一番ちがう点でした。もちろんほかのテレビドラマでも視聴者に「判断するのはあなたです」と委ねることが無いわけではないですけれども、ここまで恣意しい的ではないですから。そうすると単に思い入れを呼び起こせばいいわけでもなく。「感想が分かれること」を意図的に考えるのは新鮮でしたし難しかったです。

永遠に残って永遠に見続けられることに責任を感じる

これは私だけでなくキャストの皆さんも同じように感じていたと思うんですけど、「昔話法廷」は、NHK for SchoolというHPに残るんですよね。ふつうのテレビドラマは放送期間にしか見られなくて、あとはオンデマンドや再放送でご覧いただくわけですが、Eテレのこの番組はNHK for Schoolの中に、学校の授業で使うための「教材」として保管されるから、永遠に残って永遠に見続けられるんですよね。成長に合わせて学校が変わる中で、もしかしたら小学校と中学校で(同じ作品に)2回触れる子もいるかもしれない。そうすると、はじめに見たときとその次とでは感想や着眼点も変わってくるだろうし。
子どもたちが何かを学ぶことになるかもしれないものだから、ただおもしろいことやればいいというわけではない。そう考えると責任重大だな、と背筋が伸びました。

豪華キャストの提案

この作品の検察官は、背が高くてクリーンなイメージだったので、「それなら天海祐希さんでしょう!」と提案させていただきました。そしてディレクターから天海さんに打診してもらったらOKをいただけて、驚きでしたね。佐藤浩市さんは、以前ほかの作品でご一緒したときに千利休を演じていただいたことがあり、作品作りに熱い方と知っていたので、この弁護人は浩市さんに! と思いました。思い入れを持ってぶつけてくる強さのある方に演じてほしかったので。
今回、クリーンなところからド正論を投げてくるのは検察官の天海さんなんですよね。それをものすごい力で受け止めて、武骨に投げ返せる人じゃないと、五分五分にならないと思ったんです。そう考えたときに、自分でいろいろ疑問を出して「こうなんじゃないか、ああなんじゃないか」と考えてくださる浩市さんにやってほしいと思いました。そこまで考えて投げてくださる方だったら、セリフの説得力がちがってくる気がしたんです。

仲野太賀さんはディレクターの発案でしたが、私も、彼の持っている少し古風な男の子っぽさが大好きなので、太賀さんの演じる桃太郎がすごく楽しみです。しかも桃太郎のふん装が、とても似合ってますよね! 仲 里依紗さんの鬼メイクもすてきだなと思いました。そしてこれはすごく個人的な印象ですが、収録スタジオでお二人を見たとき、「太賀さんと仲さんの顔が似ているな」と思ったんです。そのことは、じつは、作品にとってひとつのメッセージになるのではと思っています。

番組をご覧くださる子どもたちや視聴者の皆さんへ

素直に見ていただければいいなと思うんですよ。たぶん、自分が何か響いたところに、その人のコアになる「価値観」があると思います。でも、学校には、別のポイントを拾う人もいっぱいいるはずで。「自分のコアがここにある」ということにまず自信をもっていただいた上で、人の意見を聞くことを楽しんでいただけたらうれしいですね。それは、「世界が広がる」ということだと思うんです。「こういう考え方をする人がいるのか」って“想像力”を養っていく過程だと思うので、激論を交わしつつ楽しんでいただきたいです。自分の感受性に自信をもってストーリーを見てほしいし、でも人の感受性にも敬意を払ってほしいというところですかね。
私自身も、(今回の「桃太郎」裁判は)判決が決められないでいるんですよ。いまだに決められていないので、みなさんの意見やジャッジのポイントを知りたいし、いっしょに考えたいというのもあります。
収録に入る前、小中高いくつかの学校で、台本を子どもたちに読んでもらい判決について議論してもらったのですが、子どもたちは、判決を決める理由として、思いがけないところを拾ってくるからビックリしました。「そこ拾うのか!」というのがあって、「でも、そう言われれば確かにそうだな」と考えさせられるところがたくさんあって、私にとっては勉強でしかなかったです。いま放送中のドラマ(TBS系「天国と地獄」)でも、見てくださった方の頭の中にはいろいろなストーリーがどんどん広がっていっていて、「おおお!それおもしろいな!」と思いながら拝見していました。私って、自分が思っているよりノーコンピッチャーかも…と改めて(笑)。他人様が何をどうピックアップしてどう考えていくのか本当にわからないと思うところが大きいです。私の2021年は「自分がわかるのはこれだけ」って思い知らされるシーズンなんだなと痛感しています(笑)。

脚本を手掛けた森下さんご本人も「判決が決められない」という『桃太郎』裁判。
みなさんそれぞれの視点でお楽しみください!


昔話法廷 ~「桃太郎」裁判~

【放送予定】3月29日(月)[Eテレ]前9:00~9:33

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番組HPではシリーズの過去作が視聴できます。

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