アカデミー作品賞はじめ5部門を受賞
“映画の神様”ジョン・フォード監督の名作

わが谷は緑なりき【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

5月13日(木)[BSプレミアム]後1:00

今回ご紹介するのはアカデミー作品賞はじめ5部門に輝く、“映画の神様”ジョン・フォード監督の名作です。

19世紀末、イギリス南西部ウェールズの炭鉱で働くモーガン一家。父と母、6人の息子と姉の物語を、末っ子のヒューが少年だったころを回想しながら語られます。厳しい環境を改善しようと組合を結成する労働者たち、切ない恋、炭鉱での事故、学校でのいやがらせ…、さまざまな出来事がふりかかり、結束していたはずなのに溝ができていく家族。ヒューの脳裏に去来するのは…。

映画化をすすめたのはダリル・F・ザナック。アメリカ映画史にその名を残す大プロデューサーです。ザナックはこの映画の原作であるリチャード・リュウエリンのベストセラー小説の映画化権を破格の金額で取得し「風と共に去りぬ」(1939)のような超大作を構想していたということです。当初はウィリアム・ワイラーが監督の予定でしたが、脚本が難航するなど製作が遅れ、ワイラーに代わってジョン・フォードが監督となりました。脚本や美術、キャストはほぼ決まっており、途中参加だったフォード監督ですが、自身の両親や兄たちの思い出を登場人物に反映させ、感動にあふれる作品に仕上げました。

たとえば冒頭、炭鉱で真っ黒になったモーガン家の男たちが母親の真っ白なエプロンに給料のコインを投げ入れる場面は、家族の絆が映画ならではの表現で描かれ、何度見ても目頭が熱くなります。

巨額の製作費が投じられた映像は、ため息がでるほどゴージャスです。現地で撮影されたように見える炭鉱町ですが、実はカリフォルニアに建てられた巨大なセット。アカデミー賞受賞も納得です。撮影監督のアーサー・ミラーは、谷の傾斜を見事に表現した絶妙の構図と、モノクロなのに鮮やかな緑が伝わってくるかのようなシャープな照明で、完璧な映像を作りあげました。

そして出演者。何よりも家族を大事にする父を演じるドナルド・クリスプは、椅子にどっしりと座る姿が印象的です。美しい姉アンハードを演じるのは、フォード作品常連の名女優モーリン・オハラ。物語の語り手・つぶらな瞳が魅力的なヒューを演じるロディ・マクドウォールはイギリス生まれ。撮影当時12歳でしたが、それまでに20本近くの映画に出演しており、ベテランだったということです。大人になってからは「猿の惑星」(1968)のコーネリアス役で知られ、「ヘルハウス」(1973)など数々の名作で存在感をみせました。

映画でしか味わえない感動に包まれる名作。ぜひご覧ください。

プレミアムシネマ「わが谷は緑なりき」

5月13日(木)[BSプレミアム]後1:00〜3:00


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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