テレビ番組の”レビューサイト”、始めました!

NHKPRサイトで掲載している「きのう何みてた?~NHK番組レビュー~」。このプロジェクトを立ち上げたのは、木村和穂ディレクターです。

木村和穂(きむら・かずほ)
2009年入局。初任の大阪局で障害者情報バラエティ『バリバラ』の立ち上げに関わる。東京異動後は『ドキュメント72時間』『サキどり↑』『日本人のおなまえっ!』を経て、2018年に『プロフェッショナル仕事の流儀』班へ。

木村ディレクターに、このプロジェクトについて聞きました。

Q1「きのう何みてた?~NHK番組レビュー~」ってそもそもどんな企画?

日々放送されている膨大なテレビ番組のなかから「これ!」という1本に出会うガイドになることを目指した企画です。本の世界には「書評」、映画の世界に「映画レビュー」、レストランに「クチコミサイト」があるように、テレビ番組にも「番組レビュー」があったらいいよねという発想です。

たとえば、
松坂桃李さんが大学のダメダメ広報マンを演じるドラマを、現役の大学教授はどう見たかを書いてもらったり…

笑うべきか泣くべきか、それが問題だ 土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」

現役の大学教授・河野真太郎さんが選んだのは、大学を舞台にしたドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」。アナウンサーから大学の広報課に転職した主人公を軸に展開されるコメディー・ドラマを、大学の「中の人」でもある河野教授はどう読み解くのか!?

アーティストのDaokoさんが、感性豊かな表現で、ドキュメンタリー番組の感想をつづってくださったり…

残していきたい大切な記憶の場所 ドキュメント72時間「能登半島 桜咲く無人駅で」

アーティストのDaokoさんが選んだのは、以前たまたま見つけ“自分にピッタリな番組”と心から感動したという「ドキュメント72時間」。ご自身が大切にされている人生のテーマにも深く分け入りながら、レビューを書いてくださいました。

小説家の吉本ばななさんは、お父さまの思い出とからめて「テレビのある風景」について書いてくださいました。

いつも観てきた

小説家の吉本ばななさんは、かなりのテレビ通。特に深夜番組が大好きだそうです。そして、意外(?)にも父親で哲学者の吉本隆明さんは、2時間ドラマファンだったとか…。吉本ばななさんに「テレビのある風景」について書いていただきました。

Q2 この企画を提案した理由・込めた思いは?

テレビ番組を見るのってちょっとギャンブル的要素があると思いませんか。おもしろいかどうかわからないものに30分とか1時間とかをかけるわけですから。なんだよこれ、時間返してくれよとがっかりすることは実際ありますし。テレビ離れが進む原因の1つのような気もします。

だったら信頼のおける目利きが「これは見るべし」とか「こういう視点で見たらおもしろい」とか、あるいは「これはちょっと」とか示唆してくれたら助かるなと。ちょうど昨年の4月から「NHKプラス」という配信サービスが始まり、総合テレビとEテレは放送後に1週間見ることができるようになりましたので、これからは番組レビューの必要性が高まるだろうと考えました。

読者の方には「きのう何みてた?~NHK番組レビュー~」略して”きのなに”を入口にして、見てよかったと思える番組に出会っていただけたらと願っています。

もう1つには制作者としての個人的な反省があって、「ぜひ見てください」と放送前のPRは頑張るのに、放送を出した後はそれで終わりになりがちだなと思ったんです。レビューする=ちゃんと振り返ることで、放送を出して終わりにせずに、むしろそこから対話が始まるというコミュニケーション回路を作りたいと考えました

ですからレビュアーの方々にはそんたくなしの意見をお伝えいただくことで、制作者に刺激を与えていただきたいとお願いしています。

Q3 レビュアーからの反応は?

始めてから気づきましたが、これはレビュアーの方にかなり負担を強いる企画なんです。「きのう何みてた?」というだけに、番組を見てほぼ即日に近いスピードで原稿を執筆していただかなくてはいけないので。ですから10人あたって1人くらいが引き受けてくださったらいいなと考えていました。

ところが実際にレビュアーの方々とお話をすると、みなさん前のめりに「ぜひやりましょう」とおっしゃっていただけるのがいい意味で想定外でした。名うてのライター、人気のミュージシャン、芥川賞作家など、当代きっての方々がこの企画に賛同して応じてくださっています。

そんたく無しでレビューして欲しいとNHK側がいっていることを好意的に受け止めてくださったようです。

Q4 番組制作サイドからの反応は?

これも想定外だったのですが、当初レビューされることを後ろ向きにとらえる番組もあるのではないかと思っていましたがそういう反応は1つもなく、新たな視聴者に見ていただけるチャンスだと前向きに捉える反応が多いです。

また私自身、番組制作者の一人として自分が担当した番組が放送されるときの一番の楽しみは、オンエア中にネット上をエゴサーチすることなんです。ひそかに込めたメッセージに気づいてくれている人がいたり、制作者が無自覚だった点まで深く読み解いてくれる方がいたりして、充実した気持ちになります。たとえ厳しい評価であったとしてもです。

ですから真剣に書かれたレビューを喜ばない制作者はいないと確信しています

Q5 「きのなに」のこれからの目標や挑戦したいことは?

今はまだ立ち上げたばかりで試行錯誤を重ねているところなのであまり大きなことは言うべきではないですが、挑戦してみたいことはたくさんあります。

例えば複数のレビュアーが1つの番組をみて★をつけるクロスレビュー、レビューに対して制作者が返答する企画、制作スタッフ(例えば音響効果、衣装、編集などの担当者)の目線でみどころをひもとく企画、局の垣根を越えた制作者の座談などなど、テレビのカルチャーマガジンみたいな場を作るとか

また、ウェブ版と連動したテレビ版「番組レビュー番組」がやれたらいいなと夢想しています。

Q6 ここからは”きのなに”からちょっと離れて…
NHKで働いていて、ここがいいところだなと思うところはありますか?

番組の評価軸が視聴率一辺倒ではないため、NHKでしか成り立たない番組を作れるところです。NHKは商業放送ではなく公共放送ですので、社会の公共性に貢献できるかどうかという点が大切です

例えば、ひきこもりの人たちの支援を続けている石川 清さんや、外国人労働者を支援している鳥井一平さんを主人公に『プロフェッショナル仕事の流儀』という番組を作ったことがあります。彼らは必ずしも著名ではありませんが社会的にとても大切な仕事をされており、その生き方を描くことを通して、埋もれてしまいがちな声の存在を多くの方に知ってもらうことを目指しました。多様な声を伝えていくのも公共放送ならではの役割ではないかと思います

Q7 NHKに入ろうと思ったきっかけはなんですか?

学生時代テレビを持っていなかったのですが、たまたま実家に帰ったとき深夜に再放送されていたETV特集『ひとりと一匹たち多摩川河川敷の物語』(2009年)というドキュメンタリーを見まして、雷に打たれたような衝撃をうけたことがきっかけです。あるディレクターと多摩川の河川敷に暮らすホームレスの人たちとの交流を記録した番組です。未見の方はぜひご覧いただきたいです。

わたしが衝撃をうけたのはその内容もさることながら、ディレクターがたった一人で小さなカメラをもって取材に通い、ナレーションもディレクターみずからが行うという完全DIYなやり方で、この世界のありようを鮮明に描き出していたことに対してでした。ドキュメンタリーってこんなすごいことが出来るのかと興奮して、朝まで眠れませんでした

「きのう何みてた?」はこちら。今後もさまざまなレビュアーが登場予定です。

▶︎ きのう何みてた?〜NHK番組レビュー〜

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