これ、なんか見たことある?
後世の映画に影響を与えた傑作!

市民ケーン【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

6月15日(火)[BSプレミアム]後1:00

新聞・ラジオ、さまざまな企業を経営する大富豪チャールズ・F・ケーンが亡くなります。最後のことばは“バラのつぼみ”。一体何を意味しているのか、記者たちはケーンを知る人たちを取材します。そして浮かび上がったのは…。
今回ご紹介するのは映画史上の傑作中の傑作です。

この作品で製作・監督・脚本・主演を務め、25歳で映画デビューを飾ったのがオーソン・ウェルズです。1915年生まれのウェルズは10代から舞台俳優として活動し、劇団「マーキュリー劇場」を主宰。シェークスピアをはじめ、斬新な舞台作品を次々発表します。そして1938年、伝説的とされるラジオドラマ「宇宙戦争」を放送。H・G・ウェルズのSF小説をもとに、火星人襲来を伝える臨時ニュースや目撃証言、効果音など、迫真の脚本と演出で製作されたこのドラマは“本当に火星人が来た”とパニックになった人が続出したとされ、センセーションを巻き起こしました。若き天才として一躍注目の的となったウェルズに、映画会社は、作品の全権を任せるという画期的な条件で製作を依頼。当時メディア王として絶大な権力のあった実在の人物、ウィリアム・ランドルフ・ハーストやセレブたちをモデルにし、複数の視点からケーンを回想する語り口で、この映画を作りあげました。

革新的だったのが映像と演出。実際のニュースを加工し、ヒトラーとケーンが会談しているようにみせる“フェイク”映像や、建物や背景を絵で描き、撮影した映像と合成してスケールの大きな映像を作りだすマット・ペインティング。画面の奥も手前もピントを合わせ、深い奥行きを生みだすパン・フォーカス、老人になった姿を演じるための特殊メークなど、全編、最新の技術が使われています。映画は初めてだったウェルズのアイデアを、名撮影監督グレッグ・トーランドをはじめ熟練のスタッフが実現し、それまでになかった映像を作りだしたのです。こうした技法は今も映画やドラマで使われており、この作品がいかに先駆的だったかがわかります。

この映画の脚本を執筆したハーマン・J・マンキーウィッツをゲイリー・オールドマンが熱演した「Mank/マンク」(2020)はことしのアカデミー賞で最多10部門にノミネートされ2部門を受賞し、話題になりました。公開からことしで80年。この映画は今も多くの映画人を刺激し魅了しつづけています。不滅の傑作をじっくりお楽しみください。

プレミアムシネマ「市民ケーン」

6月15日(火)[BSプレミアム]後1:00〜3:00


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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