城マスター・千田嘉博先生が彦根城の“謎”を徹底解明!

絶対行きたくなる!ニッポン不滅の名城「彦根城」

7月2日(金)[BSプレミアム・BS4K]後10:00

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全国の名城の秘密を解き明かすシリーズ「絶対行きたくなる!ニッポン不滅の名城」の7月2日放送回では、国宝の天守を持つ「彦根城」の秘密に迫ります。見るものを圧倒するその美しさの裏に秘められた、徳川家の秘策とは、果たして…?

彦根城の3つの“謎”を解き明かすのは、ご存じ「城マスター」こと千田嘉博教授(奈良大学)。今回も、千田先生に番組の見どころをインタビュー! さらに、城巡りの達人ともいえる千田先生に“城歩きのコツ”を聞きました!

滋賀県の琵琶湖東北部に位置する彦根城と、その城下町。

華麗に飾られた天守、その理由とは!?

──彦根城はどんなお城ですか?

彦根城は、日本に5つしかない国宝の天守を持つ城として、広く知られています。城に現れる彦根市キャラクターの“ひこにゃん”も有名です。確かに、彦根城の天守はたいへん美しく歴史的な価値も高いものですし、ひこにゃんもかわいいですが、それは彦根城の魅力の一部にすぎません。彦根城には、ほかにも、多くのやぐらや門などが、江戸時代に建てられたままの姿で残っています。馬屋や能舞台などの珍しい建物もありますし、石垣や堀も良好に保存されている、とても貴重な城なのです。

ひこにゃんは、彦根藩井伊家二代当主・井伊直孝公をお寺の門前で手招きして雷雨から救ったと伝えられる“招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備えのかぶとを合体させて生まれたキャラクター。
表御殿内には、江戸時代につくられた能舞台も残っている。

──千田先生のおすすめスポットはどこでしょうか?

彦根城を訪れる多くの人が、表門から入って坂道を上り、天守を見学されると思います。実は天守のさらに奥に、オススメのスポットがあります。西の丸三重櫓です。西の丸三重櫓は、江戸時代に造られた建物がそのまま残ったもので、重要文化財に指定されています。中に入ることができるので、当時の三重櫓の様子がとてもよくわかります。
そして、堀に面してとても高い位置にありますので、中から琵琶湖を一望することができます。ここから琵琶湖を行き来した船を監視していたという記録もありますので、彦根城が琵琶湖の水運を押さえる城だったことを体感できる、印象的な場所です。ぜひ行ってみてください。

千田先生おすすめの西の丸三重櫓は、重要文化財に指定されている。
表門からのルートの中で初めて天守が見えるポイントも、千田先生のお気に入り。
「石垣の角を曲がると、突然、天守が目に飛び込んでくるんです」(千田)

──国宝に指定されている天守の特徴を教えてください。

彦根城は井伊家の城ですが、徳川に従った多くの大名が分担して石垣や堀を造りました。天守をはじめやぐらや門などは、近隣の城のいいところを取り入れて建てられました。つまり、彦根城は作り方自体がたいへん豪華なのです。
さらに、国宝に指定されている天守には、「破風はふ」と呼ばれる屋根飾りや、「花頭窓かとうまど」と呼ばれる装飾窓、金や漆の装飾など、さまざまな飾りが各階各面に施されています。江戸時代までに造られて今も残る現存天守の中で、これほど飾り立てた天守はほかにありません。1つ目の謎では、なぜこれほど装飾したのかを読み解いていきます。

彦根城の天守を優美に見せているのは、この立派な破風(屋根の装飾)! 3階建ての天守に、18もの破風が施されている。
天守の内部。柱に刻まれた謎の記号から、天守が優美な理由が浮き彫りに。

──彦根城を代表するやぐら「天秤櫓」とは?

「天秤櫓」は、江戸時代の姿をそのまま残した櫓です。長屋状の櫓の両端の隅に2階建ての櫓があって、まん中に門があります。いろんな要素を複合させた、特別な建物なんです。さらに、高い石垣の上に建っていて、門から入るには対面する区画に上り、そこから橋を渡らなくてはなりません。ほかの城ではまず見ることができない、とても複雑な造りです。
実は、この複雑な作りが、彦根城の守りの特色と大きく関わっていたということが、調査の中でわかってきました。2つ目の謎では、天秤櫓がなぜこんな形になったのかを解明し、彦根城の特色ある守りの秘密に迫ります。

「天秤櫓」は、姿が天秤に見えることから、その名前で呼ばれている。
天秤櫓にかかる橋。ここに秘められた恐るべき仕掛けとは…?

──彦根城には非常に多くの米蔵があったそうですね。

昔の絵図を見ると、彦根城には大規模な米蔵群があったことがわかります。大量の米を城内に貯蔵したり、運び出したりといったことが行われていました。
実はこのことは、彦根城がなぜこの場所に造られたのかという理由と、大きく関わっています。そして、彦根城が政治や軍事の拠点であるだけでなく、もう1つの大きな役割を果たしてきたことが読みとれます。3つ目の謎では、米蔵の謎をひもときながら、どうして彦根城が造られたのか、さらには彦根城ならではの特別な役割を探っていきます。

琵琶湖を望む立地であることが、彦根城の特別な役割に大きく関係している。

──今回、最も「見てほしい!」と思われる部分はどこでしょうか?

彦根城が築城されたのは、関ヶ原の戦いの直後です。豊臣家は健在で、徳川と豊臣との間に天下をめぐる大きな戦いが、いつ起こってもおかしくない情勢でした。そんな緊張感のある時代に、徳川の攻撃・防御の拠点、最前線基地として造られたのが彦根城です。そんな時代の要請に、井伊家や家臣団はどう応えていったのでしょうか。

彦根城は、華やかな天守や壮麗な石垣、堀や松などが美しい、すばらしい城ですが、今回の番組をご覧いただければ、その奥に秘められた、この城の歴史上の特別な位置や役割、そしてそのために実現された特色ある工夫を、あらためて感じていただけると思います。

城の北東部にある庭園「玄宮園」からは、広大な池の向こうに美しい天守を望むことができる。

連載コラム「教えて!千田先生」
“城歩きのコツ” その9

懐中電灯で、薄暗い城の内部も隅々まで観察!

彦根城の国宝天守など、今も昔のまま残る貴重な建物の内部は、薄暗いところが多く、見えにくいものがたくさんあります。そんなときに“懐中電灯”があれば、さまざまなものがくっきり見えてきて、天守ややぐらを見る楽しさが何倍にも広がります。例えば、屋根裏などのはりや柱に記された記号や、自然の木の使い方、そして、使われている木の加工の痕跡などが、懐中電灯によって浮かび上がり、そこからいろんな歴史の謎を読み解くことができるんです。

柱に懐中電灯を当てると、柱の加工痕跡=手斧ちょうなで仕上げた跡が、波紋のように浮かび上がる。

絶対行きたくなる!ニッポン不滅の名城「彦根城」

【放送予定】7月2日(金)[BSプレミアム・BS4K]後10:00

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