総カット数は何と3600以上!
バイオレンス描写と哀愁漂う西部劇

ワイルドバンチ【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

7月2日(金)[BSプレミアム]後1:00

賞金稼ぎに追われながらも、仲間を救うため、強盗団“ワイルドバンチ”はメキシコ軍との命をかけた最後の戦いにのぞむ…。
今回ご紹介するのは人生の黄昏たそがれ にさしかかった男の心意気を描く傑作西部劇です。

監督はサム・ペキンパー。亡くなって40年近くになりますが、今も世界中のファンから熱狂的に愛される名監督です。ペキンパー監督のトレードマークともいえるのがバイオレンス描写。戦いの場面を、複数のカメラでスローモーションと通常スピードで撮影。短く劇的なカットを組み合わせて、アクションを重層的に描きだす斬新な映像美は今も多くの映画作家に影響を与えています。ペキンパー監督の代表作とされるこの作品、約2時間半の総カット数は何と3600以上。当時の最高のカット数だということです。銀行襲撃、橋の大爆破、そしてクライマックスの銃撃戦…、“死のバレエ”とも呼ばれた戦闘シーンは何度見ても圧倒されます。

暴力描写が強烈なペキンパー監督ですが、戦いの前の静けさの演出も傑出しています。ペキンパー監督の演出に応えたのがアメリカ映画を代表する名優たち。ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ベン・ジョンソン、ウォーレン・オーツ、エドモンド・オブライエン、ロバート・ライアン…、男臭い渋さがたまりません。とりわけ、決戦の直前、ウィリアム・ホールデン演じるパイクが“LET’S GO”とつぶやき、仲間のライル(ウォーレン・オーツ)がきつ然とした表情で”WHY NOT”と応じる場面は深い感動に包まれます。

敵役、メキシコのマパッチ将軍は、これ以上ないくらい野蛮で極悪ですが、演じるエミリオ・フェルナンデスはメキシコを代表する俳優で映画監督。監督作の「マリア・カンデラリア」(1943)は第1回カンヌ映画祭でグランプリを受賞しています。豪快で教養にあふれ、ペキンパー監督の親友だったフェルナンデス。冒頭で、子どもたちがサソリとアリを戦わせる、作品のテーマを象徴するかのような場面は、フェルナンデスのアイデアだということです。

さらに音楽。パイクたちの、死を覚悟した固い決意を表現する打楽器、哀愁漂うメキシコ民謡…。音楽監督ジェリー・フィールディングの名スコアが、ペキンパー監督の詩情を盛りあげます。

時代に取り残されながらも、みずからの信念に生きる男たち。それは、すべての情熱を映画に注いだ頑固一徹の映画作家、ペキンパー自身に重なっているようにも感じられます。荘厳なまでの傑作。ぜひご覧ください。

プレミアムシネマ「ワイルドバンチ」

7月2日(金)[BSプレミアム]後1:00〜3:26


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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