撮影日数は何と一か月!?
クリント・イーストウッド製作・監督・主演の西部劇!

許されざる者【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

7月23日(金)[BSプレミアム]後1:00

伝説のならず者と恐れられ、今は幼い子どもたちと静かに暮らすウィリアム・マニーは、ある日、しょう婦に暴力をふるい、賞金がかけられたカウボーイを殺す誘いをうけます。貧しい生活と子どもたちのため、マニーは、かつての仲間で黒人のネッドとともにカウボーイを追って町に向かいます。しかし町は、保安官のリトル・ビルが絶大な権力をもって牛耳っていました。賞金を目当てに、イギリス人のガンマン、イングリッシュ・ボブもやってきます。緊張の高まる町、そして…。

今回ご紹介するのはクリント・イーストウッド製作・監督・主演の西部劇。何度見ても震えるほどの傑作、映画芸術の最高到達点の一つだと思います。

ハリウッドを代表するスーパースターとして、数々のヒット作を生み出してきたイーストウッドは今年91歳。監督・主演を務めた最新作が完成し間もなく公開予定、と驚異的なペースで映画を作りつづけている現役最強の映画作家です。暴力の理不尽さ、恐ろしさを描ききったこの作品は、アカデミー賞をはじめ数々の映画賞に輝き、映画作家としての評価を確立。キャリアの転換点となりました。

問答無用の完成度のこの作品、撮影日数は何と一か月ほど。スピーディーで効率の良い撮影がイーストウッドの演出スタイルですが、そんな驚異的な演出ができるのはキャスティング・出演者の力も大きいと思います。

人のよさそうな笑顔を浮かべながらも、自分だけが正義だと信じて疑わない保安官・リトル・ビルを演じたのが名優ジーン・ハックマン。明るそうな表情の奥にある、傲慢さ・尊大さを表現しきっています。イーストウッドと同い年のハックマンは、刑事アクション「フレンチ・コネクション」(1971)でアカデミー賞を受賞。タフで直情的な人物を演じさせると抜群ですが、私生活では静かでシャイな人柄とのことです。本作への出演も、暴力的だと一度は断ったそうですが、イーストウッドのたっての希望で出演を決め、アカデミー助演男優賞に輝きました。

ネッドを演じたモーガン・フリーマンは舞台・ドラマ・映画で活躍してきたベテランです。落ち着いた立ち居振る舞いの中で心情の微妙な変化を表現する名演技、そして深く味わいのある声が印象的です。イーストウッドとはこの作品以降深い友情で結ばれ、ナレーションも担当した「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)でアカデミー助演男優賞を受賞しました。

映画でしか表現できない、暗く、深い映像美も魅力的です。
傑作中の傑作。じっくりご覧ください。

プレミアムシネマ「許されざる者」

7月23日(金)[BSプレミアム]後1:00〜3:12


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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