OK牧場で決闘が始まる!
映画の神様ジョン・フォードの傑作西部劇

荒野の決闘【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

8月6日(金)[BSプレミアム]後1:00

今回ご紹介するのは映画の神様ジョン・フォード監督の西部劇。

弟を殺され、その復しゅうのために保安官となったワイアット・アープが、医師でガンマンのドク・ホリデイと友人となり、宿敵クラントン一家と対決する物語です。

OK牧場の決闘として知られるクラントン一家との戦いは140年前の1881年にアリゾナ州トゥームストーンで実際にあった出来事。アープもホリデイも実在の人物です。何度も映画やドラマの題材になっていますが、75年前のこの作品は、最高の西部劇の一つとして多くの人に愛されています。

アープを演じるのはヘンリー・フォンダ。数々のフォード作品に出演した名優です。長身で澄んだ瞳が印象的なフォンダは、椅子を傾け、長い脚を柱にあてて交互に動かしたり、床屋で身ぎれいにして香水をただよわせたりする場面や、クレメンタインにほのかに思いを寄せる場面など、ユーモアと純情を見事に表現しています。

ドク・ホリデイを演じるビクター・マチュアは数々の歴史劇で知られる大スターです。名医だったのにガンマンとなり、不摂生な生活で体調を崩すホリデイ。詳しい描写はありませんが、マチュアの演技、憂いに満ちた表情から、人生を後悔しているのが伝わってきます。そんなホリデイを愛する2人の女性、薄幸の酒場女・チワワを演じるリンダ・ダーネル、りんとしたクレメンタインを演じるキャシー・ダウンズも魅力的です。

酒場や商店、ホテルに教会の建設…。フォード監督は、西部開拓時代の市井の人たちの喜怒哀楽、素朴な暮らしを丁寧に描きます。ドイツ表現主義を思わせる映像美──とりわけ酒場の長いカウンターを効果的に使った奥行きある構図と照明にはため息がでてしまいます。

そして、フォークダンスや民謡をこよなく愛するフォード監督ならではの劇中音楽。オープニングでも流れる主題歌は「雪山賛歌」といったほうがピンとくるかもしれませんね。ほかにもフォスターの「草競馬」「おおスザンナ」など、日本でもよく知られている曲が流れます。アープとクレメンタインが青空のもと、町の人たちとダンスをする場面がありますが、ロバート・ゼメキス監督、マイケル・J・フォックス主演の「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」(1990)には、ドクとクララが「いとしのクレメンタイン」(「雪山賛歌」)にあわせて踊る場面があります。熱烈な映画好きのゼメキス監督らしい演出で、きっとこの映画の大ファンなのでしょうね。

詩情にあふれた傑作西部劇。どうぞお楽しみください。

プレミアムシネマ「荒野の決闘」

8月6日(金)[BSプレミアム]後1:00〜2:38


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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