第二次大戦の敗戦目前、ヒトラーが何を思い、どう過ごしたかのか?

ヒトラー ~最期の12日間~【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

9月13日(月)[BSプレミアム]後1:00

ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラー。

今回ご紹介するのは、第二次大戦の敗戦目前の1945年4月、ヒトラーが何を思い、どう過ごしたかを描く歴史ドラマの名作です。

何といっても最大のみどころは、ヒトラーを演じる名優・ブルーノ・ガンツの熱演、名演です。この作品は事実をもとにしたフィクションですが、まるでカメラがその場に居合わせているかのような、ドキュメンタリーのような迫力に満ちています。怒鳴り激高し、笑顔を見せたかと思うと、自らを後悔し深く沈みこむ…。ヒトラーのさまざまな心の移ろいを演じ切っています。

アドリブのようにも感じられますが、爆発する感情をどう表現すれば見るものに伝えられるのか、高度に計算された演技は何度見ても圧倒されます。

映画・ドラマで国際的に活躍したブルーノ・ガンツは1941年、スイス・チューリヒ生まれ。フランスの巨匠エリック・ロメール監督の歴史劇「O侯爵夫人」(1975)、スイスのアラン・タネール監督の「白い町で」(1983)、ドイツの鬼才・ヴェルナー・ヘルツォーク監督が、サイレント時代のホラー映画の古典をリメイクした「ノスフェラトゥ」(1978)などでたしかな演技を見せました。

そして、彼が世界的に注目された作品といえば、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督の傑作「ベルリン・天使の詩」(1987)。ガンツは人間たちの暮らしを優しいまなざしで見つめ、人間になろうとする主人公、天使・ダミエルを演じました。何ともいえないほほ笑みを浮かべる表情、とりわけ、温かいコーヒーを初めて味わったときの顔は絶品でした。

その後も、ガンツはギリシャの巨匠・テオ・アンゲロプロス監督の「永遠と一日」(1998)やジョナサン・デミ監督のスリラー「クライシス・オブ・アメリカ」(2004)、フランシス・フォード・コッポラ監督の「コッポラの胡蝶の夢」(2007)などで幅広く活躍。2年前、77歳で亡くなりました。

アドルフ・ヒトラーは、これまでも何度も映画に登場し、さまざまな俳優が演じています。イギリスの名優アレック・ギネスやアンソニー・ホプキンス、最近では「帰ってきたヒトラー」(2015)でドイツのオリバー・マスッチ、「ジョジョ・ラビット」(2019)ではニュージーランドのタイカ・ワイティティも挑戦しています。「チャップリンの独裁者」(1940)で、チャップリンが演じたのもモデルはヒトラーです。その複雑な人間像は、映画作家を刺激するものがあるのかもしれません。

数あるヒトラーを扱った作品の中でも評価が高い名作。じっくりご覧ください。

プレミアムシネマ「ヒトラー ~最期の12日間~」

9月13日(月)[BSプレミアム]後1:00〜3:36


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

関連記事

その他の注目記事