中継車のヒミツ、紹介します。NHKふれあい局歩き!

こんにちは!
今回は、「NHKふれあい局歩き」と題して、NHK局内を旅人の目線で歩き、発見した「まだ見ぬ風景」をお届けします。

突然ですが、みなさん。コレ、街で見かけたことはあるでしょうか?

でかでかと「NHK」と書かれた”白くて・四角い”車。

「中継車」です。

どんな用途で使われているのか、車の中がどうなっているのか、って未知ですよね? 実は、私、(2年目ディレクター)も知りませんでした…恥ずかしながら…

ということで、今回は!

1.はじめまして!

マックスです。ふだんはあさイチでディレクターをしています。今回は、隆々しいフォルムと謎めいた車内がどうしても気になってしまった(ちょっと憧れもある…)ので、中継車の全貌をお伝えします。ワクワクしてきました。

というのも…
最近では、IP中継という比較的簡易なシステムが普及していて、中継車を用いない中継も多いんです。かくいう自分もこれまで中継車に乗る機会がありませんでした。

早速ですが、このゴツゴツとした車体!

初めて見たときは、「キャンピングカー」に似てるな~という印象。
そして車内は、こちら!

この「秘密基地感」!たまらないですね~。今回、中継車のヒミツを教えてくれたのは、同期の2人。
長尾カメラマン(写真左)と金崎VE(ビデオエンジニア・写真右)です。

長・金)よろしくお願いします!

2人が所属するのは、中継部。
いつもは、「おはよう日本」の中継やスポーツ中継などを行っています。

長)もともとはオリンピック・パラリンピックのような
国際的なスポーツイベントに関わりたいという思いで、志望して入りました。

金)僕も同じです(笑)中継部だと、そういう志望を持った先輩もたくさんいます。

長)この前、国立競技場のスタジオで撮影してきました。

金)自分もVEの仕事やってました。

2人とも、先日行われたオリンピック・パラリンピックで仕事をしてきたんだそう。羨ましい…それはさておき、本題の中継車のヒミツを教えてもらいました。

2.中継車の概要&ぐるっと一周!

まずは、概要から!

「2K中継車HM-2」全長5.9m、幅2.2m、高さ3.2mそして重量は7.6トン!!
製造年:2006年

中継車の「外側」から見ていきます。とにかく、扉が多いんですね、この車。

いま開けているのは、カメラの出し入れをスムーズにするための扉で、車内と車外が貫通しています。そしてこちらは、車両後方。またまた大きな扉を開くと…

金)これは電気を作っている場所(発電機)です。普通の車に比べて、容量が大きくなっています。

扉を開けるとゴォーーーというすさまじい音が…!
ばく大なエネルギーを生むための「心臓部」というべきところでしょうか。迫力あります!

そしてそして、こちらは!

見てください! この配線! 何が何だか全くわかりません(笑)こちらは中継車の「頭脳」というべきところでしょうか。

金)でもこれ、中継によっては配線を変えないといけないんです。
特にプロ野球中継のときは、カメラの台数も多くなったりして大変なんです。

番組に合わせて、この配線を差し替えることがあるのだというから驚きです。
そして、こちらには何やらよじ登れそうなステップがありますね~。

登ってみると…

中継にとって必要不可欠な「アンテナ」や「照明」などが置かれています。

この「アンテナ」にも秘密がありました。

金)はい、じゃあ行きますね~。

なんと、このアンテナ伸びるんです。とてつもなく…。ここまでではありません。

ここまで伸びちゃいます。想像以上の高さでした。衝撃です。(笑)

長)油圧でここまで伸びるようになってます。およそ9mです。

金)木や障害物をよけるために、ここまで伸びるんです。

これだけ、縦にも横にも大きい車体には周囲への配慮も欠かせません。

金)中継車を止める際に、通行する人や車の邪魔にならないように、常に注意を払っています。
もちろん、このアンテナも高さが必要なので、場所選びは慎重に行っています。

長)カメラも同じです。中継車から敷くケーブルのルートを一つとってみても、通行人の邪魔にならないようにしないといけません。周りの人への気配りは一番気を付けています。

私も実は「中継車」を使ったことはありませんでしたが、「中継」の経験はありました。
最近では、IP中継という簡易的な中継システムも広がっていて、
比較的簡単に中継を出すことができるようになっています。
そのような時代でも中継車が果たす役割は、どのようなものがあるのでしょうか?

金)映像を高い品質で視聴者に届けられることが一番だと思います。
たしかにIP中継は広がっていますが、一般の人が使う携帯と同じ回線(公衆網)を使っています。
なので、人混みの中では、映像が安定しないときもあります。
ですが、この中継車を使ってNHK独自の回線を用いることで、映像を安定させることができます。また、中継車の中で映像の色や明るさを調節できるのも利点ですね。

▼要するにこういうことらしい。※金崎君が作ってくれた資料▼

なるほど。災害時にも強い中継車、なんですね。
映像のクオリティを上げることもできるんですね…車内が気になってきました。

3.謎めいた車内へ

ということでやってきました。

とにかく機械、機械、機械。ところ狭しと並んでいます。
映像機器を操作するVE(ビデオエンジニア)が奥に、ディレクターが手前に座るのが通常の席順だとか。

長尾君にディレクター役を演じてもらいました。

金)ディレクター、そういうイメージなの?

長)いやいや(笑)

それにしてもVEが座る場所は狭すぎではないでしょうか…(笑)
よく見たら、ちゃんとした椅子ではなく、ケースの上に座っていますね。

壁から引き出されてきたのは、この操作盤。
カメラから送られてきた映像の”明るさ”や”色合い”などを調整しています。

運転席のすぐ後ろ? まで機械が並んでいます。
狭いスペースも有効活用して、無駄を一切省いた空間になっていますね。

4.中継部のやりがいと使命

中継車とともに過ごしてきた2人に、最後に聞いてみました。
「これまでで、中継車の仕事で印象的だったものは?」

長)僕は「震災キャラバン」っていう、被災地を回って中継する番組が心に残ってますね。
今年の3月8~11日に「おはよう日本」で毎日10分間の中継があって、岩手の宮古・宮城の気仙沼・福島の双葉町から中継を行いました。3月11日には、双葉北小学校という震災当時の状態で残っている小学校から中継したのですが、震災の生々しさを今でも感じる現場だったので、鮮明な記憶として残っています。中継でその空気感や出演した被災者の気持ちを、しっかりと視聴者に伝えないといけないという気持ちが自分の中にありました。

金)僕はオリンピックの壮行会ですね。コロナで開催するかしないか議論が続く中で、当日まで開催されるか分からなかったんです。
開催されることが決定して、いざ中継車で現場まで向かいました。
緊張感がある中で「生」で選手たちの表情を届けることになって、自分まで緊張しちゃって。でも、やりがいを感じましたね。

長)現場の空気感とかダイレクトに視聴者に届けられるのは、中継の良さだなと思ったりしますね。

一方で、こんな失敗談もありました。

金)この中継車って全部扉が閉まってないと、車が動かないようになっているんですけど、
扉の鍵を閉め忘れてしまったことがあって。先輩にめちゃくちゃ怒られました…
「そういう方が大事だから」と言われましたね。安全が第一ですからね。気を付けていきたいと思います。

さらに、中継車の役割について先輩によく言われることがあるんだそうです。

金)スポーツ中継のイメージが強いかもしれませんが、主に災害の現場にかけつける緊急報道こそが中継車の真骨頂だと、先輩から教えられます。

長)いつでも出動できるように僕たち技術の要員は、毎日日替わりでスタンバイしてますからね。

金)実は今日はスタンバイ担当なので、今呼び出しがあったらすぐ出ていきます!

長)大きな地震が発生したらすぐに中継車を出して、現場に向かうというルールがあるので責任感をもってやっています。


「生」でしか撮れない、その瞬間を撮影するための“使命感”をもって職務にあたる2人から刺激を受けました。2人ともありがとう!

皆さん、中継車の世界、いかがでしたか? 街で見かけた際には、どうかごひいきにお願いします!

筆者(写真左。偶然にも3人の服装が青ポロシャツかぶり…)

2020年入局→「あさイチ」に配属。この1年で、あさイチインスタグラムや福祉番組「ろうを生きる難聴を生きる」などを制作。
マックスというあだ名で部内では呼んでいただいているが、実は父親の名前だということは誰も知らない。
名字は「鈴木」だが、「鈴木~」と呼ばれても振り向けない体になってしまった。
最近一番テンションのあがった番組は「ワルイコあつまれ」

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