男が生理の話をしたら「変態」って言われるんじゃないかって、思ってた【#生理の話ってしにくい】

はじめまして。栁川侑一郎と申します。
いま、長崎県の佐世保支局で報道カメラマンとしてニュースの取材やドキュメンタリー番組の撮影などをしています。広島―長崎市―佐世保市と転勤してきて今社会人6年目になりました。

今回なぜこの記事を書かせていただいたのかというと、わたしが生理について取材した経験があるからです。
取り上げたのは、生理をテーマにしたカルタについて。男性はもちろん、女性自身にも生理への理解を深めてほしいと企画した女性の思いを取材しました。

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最近は生理に関する報道やネット記事をよく目にするようになり、こうした取材自体は決して珍しいものではなくなっていると思います。ですが、男性が生理について取材しているということはあまりないことのようです…。
正直に言うと、わたし自身にも最初は若干の気恥ずかしさがありました。
“そういう話”について、今までほとんど考えてこなかった自分が取材してもいいのか…。
そんなわたしがずかずかと話を聞くことで、取材先にいやな思いをさせないか…。
そして、なにより生理の話をするのがシンプルに気まずい
こうして少しずつ進めていった取材でしたが、放送を終えた今、やってみてよかったと感じています。

▼男性も生理について学ぶ必要がある!
▼生理のことを知らなければ、実際に苦しんでいる人を気遣うことはできない
▼思い切って話すとパートナーをより深く知ることができて、仲良くなることができる気がする
▼大声で話す必要はないが、男性にも気軽に話してもらえるようになれば悩みは少なくなるはず。→男性が理解してくれると感じてもらえるような環境が必要。そのためには男性側も学ばなくてはいけない。(以下、無限ループ)

いったいどういうことなのか、書いてみたいと思います。

わたしが生理の取材をした理由

きっかけは、2020年4月にさかのぼります。新型コロナウイルスが流行し始めたころでした。
皆さんが不安な状況の中、少しでも安心できるニュースが出せないか探していたところ、長崎市で布の赤ちゃんグッズや生理用品を販売する店を営む大原万里亜さんという方に出会いました。

当時は不織布マスクをはじめ、布マスクでさえ、どこを探しても売っていない状況で、多くの人がマスク探しに苦労していました。そんな中、大原さんは自身の店で手作りの布マスクを販売したり、訪れるお客さんにマスクの作り方を教えたりしていました。
マスクが足りない中、自分たちでも作ることができるというのは多くの人の安心材料になるのではないかと、大原さんの活動を取材し長崎県内の放送でお伝えしました。放送では直伝のマスクの作り方まで紹介させていただきました。

とても気さくな大原さん、放送が終わってからもお店に顔を出してよもやま話をする仲に…。ある日、こんなことを言われました。

「栁川くん、実はいま生理カルタを作ろうとしているんだ!」

生理カルタ…?
生理って、女性に月1回ある、あの“生理”?
カルタって、あのカードゲーム?
なじみのない言葉の組み合わせに、最初はまったくピンときませんでした。
しかし、大原さんのお話を聞いていると…

▼どうやら生理に関する悩みを持っている女性はかなり存在している。
▼悩みがあってもそれを打ち明けられない、また打ち明けても周りの人(主にわたしを含む男性たちがほとんど)に理解されないことが多い
▼それを知ってもらうために、生理についてのエピソードを広く募集し、子どもから大人まで一緒に楽しめる「カルタ」という形で発信したい

ということがわかってきました。

よくよく考えてみると、わたし自身、生理がどういうものなのかまるでわかっていないことに気がつきました。
なけなしの知識といえば、月に1回血が出て、しかもそれがかなりきついらしい。ということくらい。小学校の保健体育の授業でさらっと習ったり、女友だちからなんとなく聞いたりしたことしかなかったし、そもそも男性であるわたしが深く知る必要があるとも思っていませんでした。

男のわたしが生理の話をしたら「変態」だと言われるんじゃ

思い返せば、小さいころから比較的“ニュートラル”に育ちました。
小学校のころは、男女意識せず接するようにしていたし、周りの友だちもわたしのことを「男の子」と特別意識して接することはなかったように思います。
生理に関する授業もありましたが、具体的にどのように習っていたのかは覚えていません。ただ、小学校のときから生理に関してはなんとなく話しにくかった記憶があります。

4歳離れた妹がいて、今でも帰省したときは一緒に買い物をしたり電話で話したりするなど比較的兄妹仲は良好ですが、生理の話は29年間生きてきて、一度もしたことがありません。自分から進んで話題にすることはなかったし、できるだけ触れないようにしていました。
小学生って、何をするにも結構恥ずかしかった時期です。クラスで発言するにもどきどきしていたし、席替えで初めて隣に座った友だちにもなんとなく話しかけにくい。成長するにつれてだんだんそういう気持ちは薄れていきますが、生理に関してはずっと語りにくかった気がします。髪の毛が伸びるのが早いだけで、「エロい」とちゃかされるくらいセンシティブな小学校時代(そういったうわさがわたしの小学校でははやっていました)。ましてやそういう、女性の体に関することを口にすると変態だと嫌がられるに違いない!と思っていたのかもしれません。

中学は共学、高校では男子校に進学したあと、大学に入りました。学部は女性が7割ほどを占める国際系の学部でした。
女子の友人同士が近くで生理について話している場面に遭遇することは幾度もありましたが、詳しく突っ込んで聞くこともありませんでした。
中には冗談交じりで「つらい!」とわたしに訴えてくる友人もいました。しかし、なんと声をかけていいのかわからず、とりあえず口にするのはいつも「大丈夫?」。
一応心配する気持ちはあるのですが、何をどう気遣えばいいのかわからない。結果、いつも出るのは当たり障りのない「大丈夫?」という言葉でした。
…今思えば、気にかけたように装っていただけで、本当の意味で気遣えていなかったと感じます。当時のわたしは、「生理=つらいもの」だから気にかけなくてはいけない!くらいの認識で、具体的になにがどうつらいのか、人によってどのように違うのかを全く理解していませんでした。それどころか、気遣いさえしていれば理解する必要はないと考えてさえいたと思います。「大丈夫?」は、「つらい人」に、とりあえずかける反射的な言葉でしかなかったのです。

取材をしたら、なにか変わるかも?

あるとき、そんなわたし自身の体験を大原さんに打ち明けてみました。

すると、「意外とそんなもんだよね」という反応が。私のように振る舞っていた男性は多いのかもしれないと思う一方、その言葉からは、若干のあきらめのようなものが感じられた気がして、少し悲しい気持ちになりました。
ただ、続けざまに「だからこそ、カルタでみんなに考える機会を作ってもらいたい」と話してくれた大原さん。だんだん、男性であるわたしが取材するということに意味があるのではないかという気持ちが湧いてきました
生理を知ることで、いままで悩んでいても打ち明けられなかった人たちの気持ちが少しだけわかるのではないか。そして、男性であるわたしが取材することで、同じくらいの知識の男性たちが生理のことを少しでも考えるきっかけになったらいいなと思い、生理カルタを取材することにしました。
大原さんは生理の知識レベル0.5のわたしを優しく受け入れてくれたのでした。

「生理痛ってこんなに痛いのか!!」

取材を始めるにあたって、まずは生理がどのようなものなのか勉強するところから始めました。
勉強といえど、人によって感じ方が違うものをどのように学べばいいかわからなかったため、まずは簡単なものをと漫画を買ってみました。数年前に話題になり、映画にもなった漫画の1、2巻を購入。家で読んでみました。

なにより衝撃を受けたのは、その痛みの描写。擬人化された「生理ちゃん」がおなかを殴ってくる…。もし自分がこんなことをされたら、「痛い!」と叫んだり、絶対つらそうな顔をしてしまったりするだろうな…。強烈そうな描き方に衝撃を受けると同時に、個人差があるとはいえ女性は毎月こんな痛みに耐えているのかと思うと、手から力が抜けていくような感覚になりました。しかも作者の方は、男性! 頭が下がります。

さらに、生理や妊娠の仕組みをインターネットや本で学びなおしました。生理の血って、そういうことだったの? そんな量が出ているの? 知らないことが多すぎる…。これはわたし以外の男性もひょっとすると知らないのでは?とも思ったりもしました。

自分のパートナーに、生理の話を聞いてみた

なるほどなるほど。仕組みは大体理解できたのですが、生理は人によって、また体調によっても全く違うとのことでした。これはぜひ身近な人の話も聞いてみたい! そう思いましたが、なかなか聞く人がいなかったり、勇気が出なかったり。もしかしたら、小学生のころのように「男性である自分から生理の話をしたら、変態だと思われるんじゃないか」、そんなふうに尻込みしてしまった部分もありました。

最終的に白羽の矢が立ったのは、2年近くお付き合いしていたわたしのパートナーでした。出会ってから今まで一度も生理の話をしてこなかったわたしたち。

なのに、いきなりそんなことを聞いたら嫌がられないかな。距離をとられたらどうしよう。びくびくしつつも、できるだけ自然に疑問をぶつけてみました。

「そういえばさ、生理の時ってつらいの?」

…なんて聞こうか迷ったあげく、なんてド直球な質問をしてしまったんだろう。
さらに答えるまでの空白の間を埋めるように、どんな感じで痛いのか、生理になるとどのような気分になるのかなど続けざまに質問してしまった…。
すると、彼女は意外にも具体的な答えを返してくれました。
生理になると食欲が出てきて眠くなることや、おなかが痛くて動けなくなること、さらに痛みを抑えるために薬を飲んでいることなど、今まで知らなかったことをたくさん教えてくれました。こんなにも素直に症状を話してくれたことに驚いたと同時に、自分自身のことが情けなくなりました。ずっと身近にいた自分のパートナーが、毎月生理がくるたびに食欲や眠気に襲われ、薬を飲まなければならないほどの痛みを抱えていたことに、気がついていなかったからです。
今思い返すと、寒い屋外で長話してしまったときや、少し嫌そうにしている彼女を長距離の散歩に連れ出してしまったときなど、ひどいことをしていたなと反省したくなることがたくさんあります。もっと早く聞いていたら、体調を気にかけたデートプランも考えられたのに。

この会話以降、彼女は母親以外にはほとんど話したことがなかったという生理のことを、わたしにも少しずつ話してくれるようになりました。いままでは、人前でする話ではないと思っていたそうです。しかし、今回男性であるわたしから尋ねたことで、「生理について話してもいいんだ。わかってくれようとしているんだ」と感じ、気軽に相談しやすくなったと言ってもらえました。
一緒にいるときは、わたしは以前よりも彼女の体調に気を配るようになったし、彼女もつらいときは気軽に打ち明けるようになりました。
生理についての話し合いを経て、ひとつ学んだことがあります。
知識はあまりなくたって、もっとパートナーのことを知りたい!思いやりたい!という気持ちが一番大切。
心を開いて真剣に耳を傾ければ、きっと答えてくれると実感しました。

少しの優しさが世界を変える!

生理になった人自身がどのように生理と向き合っているか。特に身近な人がどのように感じているかというのはかなり重要なことだと感じてきました。そんなメッセージを広く発信することができれば。そんな思いで、本格的な取材に取り組み始めました。が、次なるハードルがありました…。

今回の「生理カルタ」は、子どもから大人まで一緒に楽しめるゲームを通して、生理を学ぶ機会を作るという取り組みです。
生理に関して男性のみならず、女性自身の理解を深めたいとカルタの句は一般の方から「生理あるある」エピソードを募集し、制作しています。

そこでエピソードとして自身の生理の悩みを投稿してくれた女性たちに話を聞くことにしたのですが…これがやっぱり、なんとなく気まずい。
カルタの企画者で、付き合いの長い大原さんにはざっくばらんにできる質問も、初対面の方を前にすると…少し、恥ずかしいと感じてしまうのです。たとえば本人の生理の症状を聞くとき。具体的にどのようなことがつらいのか聞くのは、プライベートに踏み込んでいる気がして、なかなか聞きにくかったです。昔の体験談は聞くことはできても、今現在の話は聞きにくくて、深く突っ込めなかったこともあります。

やはり、パートナーや友人など、既に信頼関係のある相手と、そうではない相手。生理の話のみならず、きっとそれぞれの距離によって話せることも変わってくると思います。関係を深めるには、こまめに顔を合わせることも大切だし、逆に初めて会うからこそ聞けることもある。これからも取材者として・人間として考え続けていきたいと思っています。

「生理」というと、身構えてしまう男性は多いと思います。わたしもその一人でした。
でも、もし職場や学校で具合の悪そうな人がいたら「風邪? 早く帰って休みなよ」などと声をかけて気を配りますよね? 生理の話も一緒だと思うんです。風邪でも生理でもつらいということは同じ。
ただ、生理のつらさは男性には体験できないからわからない。それなら少しでもわかろうと勉強すればいい。相手を思いやる優しい気持ちがあれば、きっといやな顔をする人はいないと思います。
生理による身体や心の不調に対して、気遣ったり、声をかけたりすることも自然なコミュニケーションの一つとして考えられるようになればいいなと思います。
「大丈夫?」と声をかけるちょっとの勇気と優しさが世界を変えていくんだ!と大げさだけど、本気で思っています。これからも、「男性だけど」と思わず、取材を深めていきたいです。

栁川侑一郎

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