「あさイチで痔について伝えた元“痔主”アナウンサーが、今度は便もれを担当しました」

アナウンサーの石井隆広です。

↑が石井です。(このポーズは今回の放送で私の人生に欠かせないものに。理由はのちほど)

突然ですが、ことし急に痔じになりました。
「肛門周囲膿瘍」と「痔じろう」という種類。か~なり痛いやつです。ほんと、泣くレベルです。
なんでしょうね、空がカラッと晴れていても、どんよりとした鉛色の空に感じるぐらい、といいますか、それを感じる余裕すらない日々、といいますか…。

しかも、「あさイチ」のリポーター仲間、矢崎智之アナも同じ時期に、同じ種類の痔に…。
ということで、「あさイチ」で5月に放送した「人には言えないハナシ お尻・痔の悩み」。

入院手術を自撮りリポした矢崎アナ

番組では、痔の対処法や予防法、手術法などもご紹介しました。

視聴者の方からは1600通! を超えるメールやFAX。
スタッフ一同、とってもうれしく、全身に力がみなぎりました!
あ、でも、お尻に力を入れる(イキむ)のは肛門によくないのでお気を付けて!

私も矢崎アナもその後完治して、晴れて元“痔主”として、日々リポーターを務めているわけですが、当初は「うわー、テレビでどこまで話せるかなぁ」と不安に思っていたのが正直なところです。
その頃は、自分が痔になったことは職場の同僚はおろか家族にもすぐには話せず、病院に電話するのも恥ずかしくてなかなか予約も取れないありさま。
ましてや、名前も顔も表に出して仕事をしていますので…
「ネットで何か書かれたらどうしよう…」
当然、葛藤がありました。

でも、誰かに知って欲しい・正しい情報を得たい、そんな当事者の皆さんの気持ちに寄り添えるのは、誰よりも自分なのかもしれない。

そんな思いから、腹をくくって自分をさらけ出したところ…いろいろあって、なんと4か月後、今度は「人には言えないハナシ」シリーズの続編「便もれ」を担当することに!
(実は人知れず深く悩んでいる人が多いんです、この症状)

この記事では、”人には言えない“悩みを持っていた私がそれを全国放送でぶっちゃけるまでのアレコレと、ぶっちゃけてみた感想を書きたいと思います。

ついでに、放送で大反響だった便もれに関する情報もまとめてみました。
実は、便もれは性別や年齢関係なく、誰もがなりうる症状。
自分は違うよ! という方も、読んでおけばいざというとき役立つはずです、きっと。

「あさイチ」の「人には言えないハナシ」シリーズで、いきなり私が当事者に!

あさイチで放送している「人には言えないハナシ」シリーズ。
なかなか人には言えないけれど、悩んでいることってありますよね?
そんな方の話を聞き、解決策を考えたり、モヤモヤを話し合ったりするという内容です。

5月放送の初回は「お尻・痔の悩み」。

きっかけは、石井と矢崎アナが痔になったことでもあったんですが、それを前面に押し出してリポートするかどうか、チームでは当然議論になりました。

だって、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか。
とはいえ、誰かに知ってほしい! という気持ちはあったんです。
といいますか、同じく悩んでいる人に自分の経験を共有したいと思っていました。

というのも、当初、痔になったときは、かなり不安に襲われて、もう四六時中ネットで調べていたんです。
でもなかなか自分の疑問にピシャリと答えてくれるようなページは見つからず…。
本当にもんもんとしていました。
だから、自分のお尻が完治した暁には、同じく不安に感じている人に向けて、自分のお尻の体験をすべて事細かに、ブログでも書こうと思っていたんです。もちろん匿名で。

ところが、それをいきなり全国放送で言うことに…。
なかなかの葛藤です。

お尻の悩みを放送することそのものには、何の文句もありません。人知れず悩んでいる人のためのヒントや解決策になるといいな、と思っていました。
でも、「私自身が経験者です」とまで言うことにどんな意味があるんだろう…。
そんなモヤモヤを抱えながらOAに向けて準備をしていきましたが、同時に通院や治療を進めていくにあたって、少しずつ自分の気持ちが変わってきたんです。
病院に行くたびに、少しずつ周りの人に言うたびに、なんでしょう、自分の中で、「受け入れ」られるような気がしてきました。
そして、こういう言いづらいことも言えるような世の中の雰囲気だったらいいな、とも思い始めました。
痔も普通の病気ですし。だったら、自分で言っちゃおう、と。
葛藤は正直ありましたが、視聴者の皆さんから、「大事な話をよく言ってくれた。とても参考になった」「あの痛みは経験した人しかわからない」など、励ましや共感の声をたくさんいただきました。
本当にありがとうございました。
この経験は2回目の「人には言えないハナシ」を担当するときにも、自分の中の大事な視点になりました。

「気づくと、煮豆ほどの粒が…」

放送後、「よく公表したね!」「どれぐらい痛いの?」「これからの得意ジャンルは痔だね!」などと周りに騒がれる(?)のも落ち着いたころ、新たに立ち上がった企画が「便もれ」

「石井はお尻に詳しい」と担当ディレクターに思われたのか、白羽の矢がたち、再びお尻と向き合うことに…。
でも、正直、「そもそも便もれって当事者少なくない?」と思っていました。
ただ、取材をしてみると人知れず深く悩んでいる方が多いことがわかってきたんです。

「知らない間に下着が汚れていた」
「少し出てしまうことが年に何度かあるので、下痢止めの薬を常備している」
「煮豆ほどの粒が…」
「おならのつもりが…」

事前アンケートで寄せられた、“便もれ当事者”の声の数々。
「そんなに当事者いるの?」と内心思っていたけど、その反応の多さには驚きましたし、そして、皆さん…、赤裸々に語って下さる…!

排せつに関して悩んでいる人を支援してきた日本コンチネンス協会の西村かおるさんに聞いてみると。

ということなんだそうです。

便もれ自体は、命に関わる症状ではありません。
ただ、当事者になってみると、悩みが深い方も多いんです。

私、肛門周囲膿瘍になったときは、お尻からじわ~っと、しみだすことがありました。
(肛門周囲膿瘍は、肛門にうみがたまり、漏れ出すこともあるんです)
便もれとはちょっと違いますが、これはかなりのストレスでした。
もう二度と経験したくありません。

ですから、便もれ当事者の方は、ほんとに大変なんだろうな…と感じながら、放送に向けて準備をしていきました。

放送中にも多くのメールやFAXをいただき、その数1100通超えとなりました。
皆さま、たくさんの声を寄せていただき、ありがとうございました。

加齢で?手術で?出産で?便もれになぜなる?

では、なぜこんなたくさんの人に便もれが起きてしまうのか?
ちょっとややこしいのですが、便もれのカギを握る「仙骨神経」と「肛門括約筋」を、
それぞれ「センちゃん」「カッちゃん」と名付け、説明してもらいます!

仙骨神経の「センちゃん」は、便の硬さなどを脳に知らせるいわばセンサー。
肛門括約筋の「カッちゃん」は、肛門をしめてくれる筋肉です。

直腸にやってきたものが、便なのか?はたまたガスなのか?
硬いものか? いやいや、軟らかいものか?
じゃあそれをいつどのタイミングでどのように外に出すか…。

センちゃん、カッちゃんは、毎日、私たちのカラダの中で頑張ってくれているわけです。
いつもありがとう!(擬人化すると愛着がわきますね)

しかし、しかしです…。
カッちゃん(肛門括約筋)が傷ついていたり、(カッちゃーーん!泣)

センちゃん(仙骨神経)が加齢によって、センサーがうまく機能しなかったり、(センちゃーーん!泣)

さらに、カッちゃんも、加齢で衰えていたり、(ふたりともーー!泣)

その結果…。

起きてしまうのです。便もれが。

Eテレじゃないです。総合テレビ「あさイチ」なのです。

出演:劇団スーパー・エキセントリック・シアター
監修:亀田京橋クリニック 高橋知子医師
演出・脚本:徳田周子ディレクター

というように、肛門括約筋が傷ついていると、十分に肛門を締めることができません。
肛門括約筋の損傷は、女性の場合は出産のときに起きることがあり、また男女問わず、肛門周りのケガや、直腸がんの手術などで傷つくことがあるんだそう。
(難産などの出産で損傷した場合は適切に処置されますが、ごくまれにうまく修復されないケースもあるとのこと)

さらに、加齢は誰でも避けられませんよね。

つまり、男女ともに、起こりうる、ということなんです。

じゃあどうすればいいのーーーー!!(オンエア前に、ほんとにそう思いました)

便もれしたら、どうすればいいの?

安心してください。予防法や対処法はきちんとございます。

★まず、「カッちゃんをいじめない!」

カッちゃんこと肛門括約筋は、厚さは1センチほどと薄く、日頃から負担をかけていると、知らないうちに引き伸ばされて、弱ってしまう、いわば“消耗品”。
そこで大事なのは、自分の「姿勢」や「動き」のクセを見直すことなんです。

消化器外科医の高橋知子さんによると、ドシンと勢いよく座ったり、ドーンと寝転んだりなどの行動は、肛門括約筋を含む骨盤底筋が引き伸ばされてしまうからよくないんだそう。
1回ぐらい無理な動きをしても問題ないですが、毎日何年も繰り返すと衝撃が蓄積し、便もれのリスクになってくるそうで、一度手をついてから静かに動くのが理想、とのことです。

もうひとつ、「猫背」もよくありません。
みぞおちから恥骨(下腹部の骨)までの空間を腹腔というんですが、ここが曲がったり、ひしゃげていると、肛門括約筋に腹圧がかかってきます。その蓄積で、肛門括約筋が引き伸ばされてしまうんです。

(と、これを書きながら、石井は静かに背筋を伸ばしました)

消化器外科医の高橋知子さんによると、便もれになってしまって、どうしても改善しない場合は、肛門括約筋をつなぎ合わせる手術をする場合などもあるとのことです。

★さらに、「センちゃん、カッちゃんにうれしい便にする!」

便の硬さや形の一覧って、子供のころ、保健室などで見た方もいるかもしれません。
やっぱり「バナナ状」の便がいいんだそうです。こちら、4番の便ですね。

高橋さんによると、

「便は硬すぎても、軟らかすぎても、まとまりが悪く、直腸の中に少量残ってしまう。この便が、あとからもれて、便もれになる。バナナ便はまとまりがよく一度にスルンと出るから漏れにくい」

とのこと。

そして、おなかがゆるくて、軟らかい便がもれる方に、診療ガイドラインで推奨しているのは、
「食物繊維を摂取すること」
「アルコールと便を軟らかくさせる食事を控えること」の2つです。
参考になれば幸いです。

「おすすめ排便ポーズ」でクリーンヒット!

番組冒頭でこのポーズをご紹介しました。
なんとかマンのように、どこかに飛び立とうとしているわけではないです。

これ、理想的な排便の姿勢なんです。

詳しくはあさイチのインスタに。
https://www.instagram.com/p/CUZg64PP4qz/

※NHKサイトを離れます

これ! わたし、ずっと続けています。
野球で言うと、ボテボテのゴロかと思ったら、クリーンヒットが出るといいますか。
あんまりいきまずにスルッと出るんです。

皆さん、結構、試して下さっているそうで、
「うちの子供がいつもやっている!」「あれ、いいね~!変わるね~!」とうれしい反応がありました。

どなたも、どうぞお尻には優しく

2021年、「痔」と「便もれ」、お尻にまつわる特集を2つ担当して、学んだことがあります。
それは、当たり前ですが、「負担をかけない、無理をしない」「不安があったら病院へ」。
病院に行くのは恥ずかしいと感じる方もいるかもしれません。
でも、1回行けば、ずいぶん楽になります。当然ですが、病院の方は、毎日毎日お尻に向き合っているので、人のお尻を見ることは、もうなんてことはないそうです。
何より、症状が良くなったとき、不安が解消されたときの喜びと言ったら、
これはもう、心の底から「よかったああああああああ!」って感じですので。
ぜひ、この記事をお読みの皆さんも、これからもお尻にも優しくしていただければ幸いです。

そして、改めてですが、「人には言えないハナシ」を「あさイチ」で話して下さった皆さん、メールやFAXを寄せて下さった皆さん、本当にありがとうございました。
もちろん、話したくないことを無理に話す必要はありません。
ですが、人に話すことで、ちょっと自分の気持ちが軽くなったり、解決策が見えてきたりも。そんなふうになっていればいいな、今後もそうなればいいな、と思います。
おかげさまで、私は思い切って話してみて、前向きになれましたし、実感を込めてお伝えすることができたと感じています。そんな風に伝わっていればうれしいです。
今後も、話せる話はみんなで話して、視聴者の皆さん含めて一緒に考えていけたら、と思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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