守本奈実アナ&林田理沙アナ&小田切千アナが「青天を衝け」の“語り”を語りつくす!

青天を衝け

アナウンサーたちも語りたいぞーー!

というわけで、ドラマ本編の語りを担当する守本奈実アナウンサー、「青天を衝け」紀行のナレーションを務める林田理沙アナウンサー、そして、NHKプラス内のプレイリスト「#アナが見た!」で「青天を衝け」愛とともにドラマを紹介し続けてきた小田切千アナウンサーによる大河鼎談ていだんが実現!

「ナレーションやるって決まったときどう思った?」「どうやって収録しているの?」などなど、青天ウォッチャーの小田切アナが、守本アナと林田アナに根掘り葉掘り聞きたい放題。そして、話題は自ずと青天談義に…。

アナウンサーだからこその裏話満載の大盛りあがりトークをどうぞ!

ぶっちゃけ、大河の話を最初に聞いたときどう思いました?

小田切:2人は、大河関連で、現場で一緒になったりするの?

守 本:ほとんどないですね。普通にエレベーターとか廊下で会うくらいで。

林 田:会うと、「収録は、何回くらいまで進んだんですか」なんて聞いてますね。

守 本:そうそう。小田切さんとは、アナ室で会うたびに青天談義に花を咲かせてますよね。

林 田:えー! 楽しそうです!

守 本:「#アナが見た!」のサムネイルの文言が、毎回すてきすぎるんです。絶妙なひと言ですよね。

小田切:あのサムネイルは、いつも悩みながら考えているよ。ドラマも3回くらい見るかな。自分の気持ちが動いたところをメモしておいて、最後にいちばんいいものを選ぶという感じです。

守 本:「確かに、そこ気になった!」という絶妙のポイントをついてると思います。

小田切:視聴者の皆さんに、もっと「青天を衝け」(以下、青天)をご覧いただきたいので、それを意識しながら考えているかなぁ。ナレーションを担当する2人もここまでドラマを見てきて、思い入れもどんどん増しているんじゃないですか。そもそも、「大河のナレーションやるよ」という話になったときって、どういう心持ちなの?

守 本:最初、上司から電話で聞かされたんですけど、聞き間違いなんじゃないかと思って、「本当ですか?」と3回くらい聞き返しました。上司も「それが本当なんだよ〜」って。

小田切:上司も、ちょっと半信半疑(笑)。

守 本:そのときは、貴重な機会をいただけることへの喜びよりも、「本当に私にできるかなぁ」という不安のほうが大きかったかもしれないですね。それで、番組スタッフとの顔合わせの際に、「大河ドラマの語りをアナウンサーが担当するときって、ベテランの方が重厚で壮大なナレーションをするイメージですが、私、40歳くらいですし、加賀美幸子さんのようなナレーションではないということでよろしいんですよね」と確認までしたくらいです。そうしたら、「もちろんそういうことは求めていない」とのこと。さらに今回は、徳川家康役の北大路欣也さんがドラマ全体のナビゲート役で、ナレーションは合間合間でドラマを分かりやすく伝えるのが役割ということで、なんとか気持ちを立て直した記憶がありますね。

小田切:そうだったんだねぇ〜。

林 田:私も、上司にアナウンス室の会議室に呼ばれて、「紀行をやっていただきます」と言われたときは耳を疑いました。昨年の桑子真帆さんをはじめ、髙橋美鈴さんとか井上あさひさんとか森田美由紀さんとか、これまで紀行って、第一線でバリバリ活躍されている方が担当されてきたように思っていたので、「ええ! まさか私が紀行!?」と驚いてしまって。どちらかというとナレーションが得意というわけではないので、私も顔合わせのときに「ナレーションの経験が豊富というわけではないですが、大丈夫ですか…」と恐る恐るお話ししたんですよ。そうしたら、「幕末から明治の激動の時代が舞台ということで、紀行も勢いがあるものにしたい。なので、ぜひフレッシュさを出してほしい」と言われて、「ここでがんばっていくんだ」と覚悟を決めました。

青天だけ!? 独特のナレ録り方法

ナレ録り中の守本アナ。「青天を衝け」独自の録音方法とは!?

小田切:さきほど加賀美さんの話も出たけど、僕、守本さんの語りの声って、相当重厚だと思うよ。声の出し方とかテンポ感とか、どう意識しながらやってるんですか?

守 本:毎回、演出の方に「ここはこんな感じで」とリクエストされたことに精いっぱい応えるという感じですね。VTRを事前に見て、自分で「ここはこうしよう」とプランを立てて臨みますが、最終的には演出の方に言われたようにやったものが本編で使われることが多いですね。

小田切:どんな指示がくるの?

守 本:例えば、誰かが亡くなるシーンで、それまでの思いを全部のせて「うわ〜っ」という状態でやると、「ナレーションはもっと引いた立場で、事実を淡々と述べる感じでお願いします」と言われたりしますね。一方で、自分は「ここはさらっといったほうがいいな」と思う部分も、「もうちょっと気持ちをのせて」と言われることも。自分がプランしていたのと違うことが結構あるんです。

小田切:今しゃべっている声と、ナレーションのときの声って、トーンがだいぶ違うじゃない。それに、語尾にかなり重点を置いているんだなと思っていたんですよ。相当計算しながらやってるのかなって。

守 本:声のトーンについては、自分ではあまり意識していないんです。でも、語尾は「もっと重くしてくれ」などと指示されることが多いかもしれません。語尾の余韻によって全体のトーンが決まるからでしょうね。ドラマ全体を見たときにうまくいっているとすれば、制作陣の演出のたまものだと思います。

小田切:余韻をもたせるという意味でも、次にどうつなげるかという意味でも、語尾って大事だよね。

守 本:そうなんです。視聴者の皆さんは、当然次の展開を知らないわけじゃないですか。その中で、物語の前後の落差を生むために、ナレーションはまったく知らないふりで言葉を発したほうがいいところもあるでしょうし、かたや少し匂わせたほうがいいところもある。一文一文に意味がありますよね。

小田切:ふだんの番組なら、編集も終わって音楽もついた状態でナレーションを録るよね。聞いたところによると、今回は違うんだって?

守 本:そうなんです。これは私のやり方というか、私がたどりついた方法なんです。例えばドキュメンタリーなら、映像を流しながら、キューに合わせて言葉を発しますよね。だけど大河って、ナレーターはずっとしゃべっているわけではなくて、たまにポツポツとしゃべるだけ。ドラマの中でどんなふうに存在するかってすごく難しいと思うんです。最初のナレ録りのときに、映像を流しながらやってみたのですが、どうしても映像に引っ張られてしまって…。それで監督と、映像を流さずに文章だけに集中したほうがいいものが録れるんじゃないかという話になって、やってみたんです。そうしたら、映像を流さずに録ったもののほうが、言葉がちゃんと粒立つように感じて。それに、私が映像を見て感じた思いをのせて言葉を発するより、ドラマ全体の中でその言葉がどういう役割を持つかを分かっている監督の指示を反映させたほうがいいとも思いまして、今回そんな録り方をしているんです。

小田切:なるほどね〜、そのパターンは初めて聞いた。確かに、青天の語りは、物語を少しふかんしたところからの言葉だもんね。ドラマの中に入り込むというよりは、ちょっと上のほうで流れているほうがいいっていうことなのか。

守 本:私も初めてです、こんなやり方。ドラマが完成するまでの、かなり手前の段階でナレーションを納入するという感覚ですね。

林 田:なんだか、設計図を描いた建築士さんと一緒に、家のパーツを作っていくような感覚ですね。家にそのまま色をのせていくのではなくて、全体の設計図を理解している人が、パーツを各々を作って、その結果、家全体がちゃんとできあがるみたいな。

守 本:納入しているときは「これでいいのかな」と思うんだけど、出来上がりを見てみたら「すごくいい家だ!」みたいなね(笑)。「私のナレーションは、こういう役割を果たしていたんだ」って。

紀行のナレーションは、ブラタモリのように!?

「最初は、試行錯誤の連続でした」という林田アナ。

小田切:一方で、紀行は、映像も音楽も流れている中で、キューを出されたら話すという録り方でやっているんだよね。

林 田:そうですね。紀行の場合は、事前に音楽もついた状態で映像が送られてきて、それを見ながらイメージを作って収録に臨む…という感じです。

小田切:歴史の現場を旅するという内容ですよね。どういうふうに自分で整理してるの?

林 田:まずは、これまで担当された方のナレーションをいろいろ聞きました。大河の紀行って落ち着いた声でしっとり伝えるという印象だったので、最初はそれを目指していたんですね。ですが、先輩方に「これまでやってきた人と声の質もキャリアも全然違うんだから、あなたが現場を案内するような紀行にすればいいんじゃない」とアドバイスをいただいて、3回目ぐらいから、「ブラタモリ」のように、自分も視聴者の皆さんと一緒にその場を歩くような気分でナレーションするようになりましたね。時折「ここは和宮が用いたと伝わる草履があるんですよ」とガイドをしながら。

小田切:なるほどね。そういえば、紀行の音楽ってものすごく重厚だよね。僕も「真田丸」のときに紀行のナレーションを担当したんだけど、そのときは「のど自慢のようなノリでやってください」と言われたんですよ。でもBGMが、重厚感ある結構切ない曲調で、声がそれに引っ張られちゃって、めちゃくちゃ苦労した記憶があるのよ。

林 田:私も、実は同じような苦労がありましたが、小田切さんほどのベテランでもですか!

小田切:難しかったんですよね〜(笑)。ナレーション業務のとき、僕の場合はたいてい音楽を聴いてどういう声を出すか定めるんですよ。台本の下読みももちろんするけど、実際現場に入って音楽を聴くことで声の出し方を変える。それが、大河の紀行の場合は通用しなかったんだよね。あれは僕も未体験ゾーンでした。

林 田:一つ思うのが、紀行の音楽って、必ずオープニング曲のどこかのフレーズを生かしたものになっているんですよね。青天の場合も、メインのメロディーラインを生かした音楽になっていますよね。実は、オープニングから紀行までが一連でつながっているんじゃないかなと勝手に思っています。

小田切:さすが楽理専攻! 深いね〜!

林 田:そういえば、12月に放送する紀行の音楽は、栄一のふるさと深谷の小学生の鼓笛隊の演奏なんです! これまでとはまた違う表現ができるといいなと思っています。

小田切:なぜ鼓笛隊なのかも、ドラマ終盤のストーリーに関わってくるかもしれないなぁ。そういうのをいろいろ探るのも楽しみだよね。

3人の「青天、ここが好き!」

小田切:さて、いよいよ青天も終盤を迎えるわけですが…。

守 本:ここは青天ウォッチャーの小田切さんの好きな場面を聞きたいです!

小田切:正直言って、これまで大河をここまで深く見たことがあんまりなかったんです(笑)。幼いころ「徳川家康」や「武田信玄」という名作もたくさん見てきたけど、あくまで一視聴者として毎週見ていたわけで。NHKに入って、ドラマに出演される方からお話を伺う仕事もあるので、そのためにドラマは見てはいたんだけど、時間に追われて一気にまとめて見ちゃうという感じだったんです。そこへきて「NHKプラス」が本当に便利! いつでも自分が落ち着いた時間に見られるんですよ。僕はたいてい、日曜に「のど自慢」の仕事でヘロヘロになって帰宅したあと、夜寝床につきながら自分のスマホで青天の見逃し配信を見ています。そうしたら、ゆ〜っくり見られるんだよね。その中で気づいたのは、メインキャスト以外にも、魅力的に演じてらっしゃる方がものすごく多いこと。中でも、川村恵十郎(波岡一喜)が大好き。

平岡円四郎の部下として活躍した川村恵十郎。

守 本:「#アナが見た!」のサムネイルにも、何回か登場しましたよね!

小田切:いちばん最初に川村が出てきたシーンって、江戸に出てきた栄一たちが、横浜焼き討ち計画の相談をひそかにしている場面。そばで栄一たちの話を聞いている川村が、一瞬ちらっと映るわけ。そのときの眼光が、めちゃくちゃ鋭い!

林 田:そうそう、実はそこにいたんですよね!

小田切:いるのよ! セリフが一切ない中で、あの目つきだけでキャラを作れるってすごいなあって! あのときから、これは主要人物以外もしっかり見ていかないとダメだなって思ったんだよね。

守 本:川村、いいですよね〜! 円四郎(堤 真一)を討った水戸藩士に斬られた傷が顔に残っているじゃないですか、だんだん薄くなってきてはいるものの、まだうっすら消えずに残っていて、そのうえで語られるセリフに、ぐっとくるんですよね。

小田切:最終的には、慶喜(草彅 剛)を頼って駿府へやってくる。「刀を捨てろ」と栄一に言われたとき、まっさきに刀を差し出す川村…。

守 本:「何から始めればいいか教えよ!」あそこ、本っっ当にいいですよね〜!

林 田:かっこよかった!

小田切:あの時代の侍の思いって、きっとあんな感じだったんだろうね。ぐっとくるんだよなぁ〜! 林田さんはどう?

林 田:私は、家康が気になりすぎています! 毎回「今回くるかなどうかな」とドキドキしてますね。時代が明治に移ってからは、もう家康に会えないのかな…と勝手に心配していたんですけど、まるで、天上から時代を見るような視点がまたおもしろい! これまでの大河にないキャラクターなので、大好きです。

小田切:なんだか、家康が自分の責任を果たしているような気がするよね。自分がつくった世の中の行く末を、少し責任を感じながら見ているっていう。すごく不思議な感覚になる。

林 田:そうですよね。現代と江戸時代をつなぐパイプ役のような存在でもあって、すごく新鮮ですよね。

守 本:つながっている感じがあるよね。

小田切:そう、あるある。江戸、明治…と確かに時代の区切りはあるけど、つながっているんだよね。僕は、幕臣があんなに明治政府の中で活躍していたんだってことも知らなかったもんなぁ。守本さんはどう?

ドラマをナビゲートする徳川家康。「こんばんは、徳川家康です」のセリフが話題に。

守 本:川村恵十郎もすごく好きですが、猪飼勝三郎(遠山俊也)も好きですね。

林 田:猪飼さん、おもしろいですよね!

守 本:たまにあの笑顔を見るとほっとするんです。それと、登場のしかたが江戸時代と明治時代とで変わってくるじゃないですか。時代を超えて一人の人生が描かれていくところが、味わいがあっていいなあと。そうそう、こないだ小田切さんと盛り上がったのは、「やっぱり吉沢さんってすばらしい」ということでしたよね。

小田切:そうだったね。僕は、彼が「仮面ライダー」に出演しているときに見ていたんだけど、あのときの役と栄一がまったく重ならないんだよ。映画『キングダム』のときもどちらかというと、感情を表に出さない役だったから、栄一とまったく違う。見事に演じ分けていらっしゃるよね。

武士から実業家へ──。運命を切り開いていく渋沢栄一を、吉沢亮が見事に演じている。

守 本:栄一の若いころと、年齢を重ねた今とも全然違いますよね。どのくらい先を計算して、演じ分けているんだろうって。もう栄一にしか見えないし、あの吉沢さんが私たちの渋沢栄一ですよね。

林 田:新しい一万円札の肖像も、吉沢さんの栄一で…なんで思ってしまいますよね。

小田切:はははは! でも本当にすごいよね。これだけ長期の撮影だから、演じている本人も年齢とともに雰囲気も変わっていく。そこも計算して演じるっていうのが、実は俳優さんのプロとしての力の見せどころなのかなとも思うよね。吉沢さんの演技を見てると、つくづく感じる。

守 本:あと、実は滑舌がいいんですよね〜!

小田切:そうそう、めちゃくちゃいい! 栄一のセリフって、長尺が多いし専門用語も使うし、まくしたてる場面も多い。それを、あれだけきれいに聞かせられるってすごいよね。

守 本:吉沢さんのアフレコに居合わせたことが何度かあるんですけど、最初はやっぱり吉沢 亮さんなんです。でもブースに入って録り始めると、一気に栄一になるんですよね。アフレコのパターンもご自身からいくつも出されるし、監督から「今のもいただきますが、こういうのもいただけますか」とリクエストされたら、見事に応えるんです。才能ってこういうことなんだなって思いました。

林 田:私は、草彅さんが慶喜にしか見えないです!

守 本:変化でいうと、草彅さんも、最近変わってきましたよね。たたずまいから表情から、将軍のころと全然違いますもんね。

小田切:慶喜って、何を考えていたのかよくわからない人物だといわれている中で、どうやって役を作っていくのかなあと思っていたのよ。その点、青天は、説明的なセリフをあまり入れず、その分、草彅さんの表情と間だけで見せていく。台本もすばらしいけど、セリフのない間をちゃんと埋めて、見せられる草彅さんって本当にいい役者さんだよね。

林 田:円四郎の死を知ったときの表情なんか、忘れられないですもんね。しゃべらないけど、思いのすべてが伝わってくるというか。

守 本:円四郎もよかった〜! だから亡くなったときは、すごく悲しかったんですよね。それこそ事前に映像を見たときは号泣でした。準備ができないまま、ナレ録りの本番に突入したこともあります。ブースの中でも「このシーン、本当に無理だな」って。

小田切:戦ってるなあ!

守 本:「泣かずにこれを言えと!?」という感じでした。泣けるシーンがいっぱいありましたよね。

数奇な運命をたどる江戸時代最後の将軍・徳川慶喜。
慶喜の側近・平岡円四郎。栄一を見いだす。

小田切:青天の話なら何時間でも話せそうだね。それぞれに仕事していて、アナウンサー同士なかなか接点ない中、きょうは、こんなふうに話せてよかったです。

林 田:小田切さんはすごく尊敬する先輩で、話しかけるのも遠慮するくらいだったんですけど、きょうは楽しく話せてうれしかったです。

守 本:私も、小田切さんに話しかけるときは、ちょっと勇気を出してたんです。だから、きょうはこんな機会をいただけてありがたかったです。

林 田:今度、私も勇気だして話しかけます!

小田切:そんなこと言わずに、普通に話しかけてください。また、青天の話をしましょうね。

いよいよ大詰めをむかえる「青天を衝け」。“語り”にも耳を傾けつつ、栄一の人生を最後まで見届けてください!

2021年 大河ドラマ「青天をけ」

【放送予定】
2021年2月14日(日)〜12月26日(日)<全41回>
毎週日曜[総合]後8:00 [BSP・BS4K]後6:00

▶︎ 番組ホームページ

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