巨匠ダグラス・サーク監督が描く、
映画史上最高のメロドラマ

悲しみは空の彼方に【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

1月20日(木)[BSプレミアム]後1:00

遊園地とビーチがにぎわうニューヨークのコニーアイランドで出会った白人のローラと黒人のアニー。同じ年頃の娘をもつシングルマザーという2人は、互いの境遇を知り、一緒に暮らすことになります。やがてローラは舞台女優として成功しますが…。今回ご紹介するのはアメリカ映画の王道・メロドラマの傑作です。

母と娘の絆、人種差別、女性と社会との関わり…、今も大きな問題を映画ならではのドラマチックな展開で描き、完璧な演出で見る者を涙させ、深い感動に包みます。公開当時大ヒットとなり、映画史上最高のメロドラマとも評価されるこの作品の監督はダグラス・サーク。クエンティン・タランティーノ、R・W・ファスビンダー、ジャン・リュック・ゴダール、ダニエル・シュミット…、世界中の映画作家から尊敬される巨匠の中の巨匠です。

1897年、デンマーク人の両親の元、ハンス・デトレフ・ジールクとしてドイツで生まれたサークは、30年代に映画界に入りますが、当時ナチスが台頭する中、妻がユダヤ人だったため、37年にアメリカに亡命。名前をダグラス・サークとしてハリウッドで活動をはじめます。美術や絵画を学び、教養あふれる知識人だったサーク。悲しみ、絶望、喜びといった感情を類まれな映像感覚で描く演出は、ほかに並ぶものがありません。この映画でも、鏡を効果的に使い、登場人物の心の機微を繊細に描きます。

俳優を大事にし、穏やかで紳士的な演技指導が有名だったというサーク監督。その演出に俳優たちが見事に応えています。
ローラを演じるのはラナ・ターナー。ブロンドと官能的な魅力で人気女優となりますが、私生活で8回の結婚、スキャンダルも大きく取り上げられました。30代後半で演じたこの役どころは、当時の彼女の私生活とも重なるといわれ、娘との関係に悩みながら幸せの意味を自問する母親を見事に演じています。ローラの娘スージーは、青春映画スターとして人気だったサンドラ・ディー。アニーを演じるファニタ・ムーアは黒人俳優の先駆けとして活躍した名優。幸薄い人生のなかで、時折見せる笑顔が印象的です。アニーの娘・サラジェーンを演じたスーザン・コーナーの演技も高く評価され、2人ともアカデミー助演女優賞にノミネートされました。

メロドラマ、といえば大事な要素が音楽。この映画では、ゴスペルの女王として知られるマヘリア・ジャクソンが出演し歌声を披露しています。

メロドラマの最高到達点ともいえる傑作。じっくりお楽しみください。

プレミアムシネマ「悲しみは空の彼方に」

1月20日(木)[BSプレミアム]後1:00〜3:06


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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