日本のものづくりの神髄に迫る群像ドキュメンタリー

玉鋼の十二人 奇跡の鉄を生み出せるのか

6月26日(日)[BS1]後7:00~7:49

世界中で島根県の奥出雲にしかないものづくり、たたら製鉄。そこに、日本刀の原料となる奇跡の鉄・玉鋼たまはがねを生み出すべく、12人のスーパー職人 が集結します。

毎年冬に3回だけ行われてきた、たたら製鉄ですが、ことしはコロナ感染の拡大で1回かぎりに。リーダー格の熟練職人が病で操業から離脱するという事態も重なり、不安を抱えての操業となりました。果たして渾身こんしんの玉鋼づくりは無事成功するのでしょうか。職人たちにスポットを当て、日本のものづくりの神髄に迫っていきます。

片岡利文ディレクターに見どころや取材裏話を聞きました。

たたら製鉄とは―

銀色の輝きをまとう玉鋼

砂鉄を原料、木炭を燃料とし、粘土製の釜を用いる日本古来の製鉄法。「たたら」とは、釜に風を送るふいごを指す。釜に絶えず風を送りながら砂鉄を木炭で加熱することで、不純物が取り除かれた鉄の塊(けら)が生成され、その中から日本刀づくりに欠かせない鋼鉄・玉鋼が得られる。戦後途絶えていたたたら製鉄は、1977年に復活して以来、その技法を残すべく毎年操業が行われている。

三日三晩、釜に砂鉄を装入し続ける職人たち

渾身の玉鋼づくり、
3つのポイント

その①→ CG映像で、たたら製鉄の仕組みを分かりやすく解説! 実際の映像でも、釜のどこに注目すれば、玉鋼づくりがうまく行っているのか苦戦しているのか、わかるポイントがいくつも!


その②→ 職人12人の群像劇! 集まったのは、地元・島根県にある製鉄工場で働いている8人の職人と、全国から集まった4人の刀匠たちです。たびたびトラブルに見舞われながらも、それぞれが何を思って釜に向き合っているのか、ディレクターと4Kカメラがその心中を引き出します。


その③→ 釜から鉧を取り出す瞬間は緊張の一瞬です。本来、3回行う操業のうち、1回目の鉧からはなかなか良質な玉鋼がとれないといわれていますが、今年はその1回目だけの一発勝負。果たして、世界に誇る日本刀文化をも支える玉鋼づくりは、うまくいくのでしょうか。

▶ 片岡Dの見どころポイント

奥出雲のたたら製鉄に強い関心を抱いたのは、今から7年前の2015年です。中国地方が日本を代表する良質な砂鉄の産地であり、明治初期まではそこで日本の鉄の8割以上が生産されていたという事実を知り、深い感慨を覚えました。その感慨をエネルギーに、当時「サキどり」という番組でこの地方の鉄文化を特集しましたが、その際、たたら職人のリーダーである木原 明さんと出会い、そこからのご縁で今年のたたら製鉄の密着ロケが実現しました。
今年は、熟練の職人の1人がご病気で参加できなくなったり、12人中8人の職人が帰属している製鉄工場がファンドに売られることになったりと、不安の中での玉鋼づくりです。また、昨年は良質な玉鋼が多くは採れなかったため、思い切って砂鉄の配合や釜の形、粘土の材質を変えての挑戦となりました。操業中は、釜に風を送る管が詰まったり、燃焼がうまくいかなかったりとさまざまなピンチに見舞われますが、培ってきた経験や挑戦心でどうやって乗り越えていくのか、職人たちのそれぞれの思いとともに浮かび上がるチームワークに注目していただけたらと思います。

主人公は5人の職人たち

今年3月、たたら製鉄に挑んだ12人の職人たち。番組では、その中のリーダーと、操業の中心を担う4人の職人にカメラを向けます。

村下むらげと呼ばれるリーダーであり総監督

木原 明さん(86歳)

国の選定保存技術保持者のレジェンドです。操業には総監督として主に日中のみ参加し、現場は4人のベテラン職人に任せていますが、弟子たちに任せざるをえないもどかしさも感じているような…。

“現場の”村下むらげ役を任された4人の職人たち

堀尾 薫さん(52)※画像左上

釜には「表」「裏」と呼ばれる2つのポジションがあります。表の1番手を務めるのが堀尾さんです。地元奥出雲町の出身で、24歳のときに木原さんに弟子入り。次期村下候補の筆頭で、ことしは思い切って砂鉄の配合から釜土の種類を変えるなど新たな一歩を踏み出すも、その挑戦に一喜一憂する場面も。


三上高慶さん(66)※画像右上

裏の1番手。たたら歴は34年、本業は、「無鑑査」という最高の称号を持つ刀匠です。全日本刀匠会の前会長でもあり、2012年には弟子と一緒に「新世紀エヴァンゲリオン」のロンギヌスの槍を作ったことでも話題になりました。釜に向かうときは鬼の表情、インタビューに答えるときは仏の表情を見せる、人間味あふれる方。


佐藤秀行さん(41)※画像右下

裏の2番手。4人の村下役の中では最も若く、次世代のエースとも言われています。大阪大学大学院に研究員として派遣され、金属精錬と熱力学を学んだ経験を持ち、操業では、三上さんから託された釜のトラブルを解決に導く手腕が見どころです。


三浦靖広さん(58)※画像左下

表の2番手。2日にわたる徹夜の操業で疲労困憊こんぱいの堀尾さんに代わりトラブルを抱えた釜を任されます。操業中、仲間への感謝の言葉を発することが多く、かつての自分自身の傲慢な振る舞いに対する反省からだと自身の過去を明かす一幕にも注目です。

大きな鉧から一体どれほどの玉鋼がとれるのでしょうか

▶ 片岡Dの見どころポイント

この方々のたたらと向き合う姿には、みなさんも共感する部分があると思います。例えば、現場で後輩たちを見守る立場にある人は木原さん、独り立ちを考えている人は堀尾さん。過去の出来事を悔やんでいる人は三浦さん、60歳を越えてこんな人間でありたいと思えるのが三上さん、これまでとは違ったやり方でプロジェクトに取り組もうとしている若い人なら佐藤さんです。
職人たちを見つめていると、あのカーリング女子日本代表チームと重なるなと感じる瞬間が多々ありました。炎を絶やさないようバトンをつなぎ、トラブルも全員で向き合う。それぞれがそれぞれの役割を果たしながらチームとして大事を成し遂げていくんですね。その姿に、応援したくなったり勇気をもらえたりすると思います。

▶ 片岡Dのまとめポイント

私は、ものづくりの中にこそ、日本人のよさが凝縮されていると思っています。今回は12人の人としてのありように、例えば、決して手を抜かないというような、日本人が大切にしてきた職業人としての誇りを見せていただきました。ぜひみなさんも職人さんたちの姿から、言葉から、何か感じていただけたらと思います。
それから、今回久しぶりにリーダーの木原さんにお会いしましたが、“生きている限りは村下をやる”といった気迫や情熱は以前と変わらず感じました。番組では、30年前の木原さんの貴重な映像も現在の映像と合わせて登場します。私自身も老いということを意識せざるをえない年齢になりつつありますが、年を取ることをどう受け入れ、解釈して前に進んでいくのか、そんな人生の課題を考える機会もこの番組からは得られそうです。

「玉鋼の十二人 奇跡の鉄を生み出せるのか」

【放送予定】
6月26日(日)[BS1]後7:00~7:49

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