家康が戻ってきた岡崎城の周囲は、西に織田、東に今川、山を越えた先には武田、近くには有力武将が乱立する、カオスのような世界。家康だけでなく、誰もが生き抜くのに必死で、誰もが幸福を願っていました。
撮影現場にて、石川数正役の松重 豊さんが「毎日、こんな重い鎧を着て芝居していると、早く楽に生きられる時代がきてほしいと思うよね。家康もきっとそう思っていたはずだよ」とおっしゃっていました。
今回は2日間にわたり、家康とつながりがあった魅力的な人物たちを紹介します。それぞれに人生があり、ドラマがあります。家康だけでなく、みんなの「どうする」にも、ぜひご注目ください。
2022.7.13
《織田》

信長・秀吉・家康をつなぐ運命の女
お市
北川景子
信長の妹。織田と徳川が盟約を結ぶのをきっかけに、家康と数奇な運命を共にすることになる。近江・浅井家に嫁ぐものの、兄・信長のせいで乱世の渦に巻き込まれる。そして彼女が生んだ三人娘もまた、家康の生涯に大きくかかわることに……。
北川景子さんコメント
戦国の乱世で家系の存続のため、家族を守るため、自分の命を全うした人物です。そう言うとそこには自分の意志とか尊厳がないように聞こえますが、私はそうではなかったと思っています。戦国に生きた武将、そしてその家族たちにとって家系の存続は何よりも重要なことであり、自分がどう役に立てるのか、お市の方は常に考えていて、その生き方に誇りを持っていたと思います。
何のために生きて、どんな死に方をするか。冷静に判断できる聡明さと、強さ、家族に対する愛、家の誇りを表現していきたいです。

織田の礎を築いた信長の父
織田信秀
おだ・のぶひで
藤岡 弘、
尾張の戦国武将。どんな苦難にも負けない豪胆で勇猛果敢な人物で、領地を広げ、織田家繁栄の基礎を築く。岡崎城主・松平広忠と対立し、幼少時代の家康(竹千代)を人質に取る。信長にとっては厳格な父であり、彼の人格形成に大きな影響を与える。
藤岡 弘、さんコメント
かつて大河にて若いころ、二度も演じさせていただいた信長であり、その父親役は感慨深いものがあります。あの豪胆な息子、信長を育て上げた父とはどんな人物か、いろいろ想像すると楽しくなります。現在、4人の子どもの父親としての子育てに苦労しているので、どのような父親像であのような信長に育ち、影響を受けたのか、一瞬で納得できる父親像を、と考えてみると楽しくなりますね。

秀吉とは水と油の荒武者
柴田勝家
しばた・かついえ
吉原光夫
織田家家臣。体は熊のように大きく、声は柱を壊すほどデカい。小心者の家康をいつも怖がらせる。お調子者で機転が利く秀吉と対照的な、めっぽう強い武骨もの。急進的な信長を全身全霊で支えるが、やがて秀吉とは袂を分かつことになる。
吉原光夫さんコメント
適役…でしょう笑。織田家に忠誠を尽くす所存。一年を通すドラマ、しかも一人物の生涯の作品に関わっていくことは、体調やコンディションを整えてゆくことなどで多少の緊張感もありますが、自分の日々とどう関わってゆくのか楽しみでしかたないです。
《武田》

武田軍の最高指揮官
山県(飯富)昌景
やまがた/おぶ・まさかげ
橋本さとし
若きころより信玄を支えた筆頭重臣。川中島合戦では最前線で指揮し、上杉軍と対決。譜代家老の山県氏の名跡を継承、赤備え隊も引き継ぎ、やがて昌景の「赤備え」は武田最強部隊の代名詞となる。信玄より駿河侵攻を命ぜられ、家康はその強さに恐怖を感じる。
橋本さとしさんコメント
前回、大河ドラマでいただいた役柄は「平安のガンダム」と謳われた規格外に強い武将でした。この度も物凄く強い武将の役をいただき、画面からはみ出るくらいの気迫で演じたいと気合いが入ります。昌景は武力だけでなく策略や文官としても才能を発揮する、最強武田軍の中でも最強部隊を率いる猛将。「赤備え」の真っ赤な大波を起こし、阿部 寛さん演じる信玄殿に仕え、家康をガンガン追い込んでいきたいと思います。
《東海地域の領主》

世渡り上手で戦国を生き抜く
水野信元
みずの・のぶもと
寺島 進
織田家に味方する三河の国人領主。家康の母・於大の兄にあたる。乱世を渡り歩いた度胸とズルさの持ち主。時折、信長の代理と称して、家康のもとを訪れては物腰柔らかく脅しをかけ、ビビらせては楽しむ、愛嬌のある伯父。
寺島 進さんコメント
どんな状況下でも、楽しんで演じたい。そうであれば、お茶の間の方々も楽しんで観ていただけると思います。

適当こそわが人生・家康の義父
久松長家
ひさまつ・ながいえ
リリー・フランキー
家康の母・於大の方の再婚相手。織田家や水野家などその時々に同盟相手を変え、時代の風を読んで、節操なく乱世を生き延びる。美しき妻との間に3男3女をもうけ、家族を支えるために家康のもとに転がり込み、やがて徳川家のもとでヒモ同然で暮らすことに。
リリー・フランキーさんコメント
世渡りのうまい、生命力を感じるキャラクターだと思います。そういう人物なので、ユーモアも交えて演じられたらと思います。この不穏な時代に、戦を世からなくした家康の物語は必然だと思います。

家康覚悟! 我こそが松平宗家
松平昌久
まつだいら・まさひさ
角田晃広(東京03)
松平氏のひとつである大草松平家の当主。松平元康(のちの家康)が当主を務める松平宗家の地位をしたたかに狙う野心家。岡崎城に戻った元康に服従しつつも、今川家や三河の国衆たちと結びつき、転覆させる機会を伺う。
角田晃広さんコメント
戦国時代、武将たるもの野心があって当然です。そちらから見れば裏切りと見えることでも、こちらからすれば最初から騙していただけのこと。この松平昌久という男も己の野心にまっすぐな武将だったのでは。そんな野心家の武将を演じさせていただけてうれしいです。あの家康と早めに相対することができるのですから。早々に挑ませていただきます! 勝ちにいきます!
2022.7.14
《今川》

なすことすべて裏目に出る
今川氏真
いまがわ・うじざね
溝端淳平
今川義元の嫡男。坊ちゃん育ちのプライド高い御曹司だが、実は偉大な父を持つがゆえの劣等感に苦しみ、義元が目をかける元信(のちの徳川家康)にも、コンプレックスを感じている。今川家を譲り受けるが、桶狭間の戦いで義元が討ち死にしたことで、その運命が大きく揺らぐ。
溝端淳平さんコメント
役者を始めたころから、大河ドラマに出演するということは大きな目標でした。今川氏真は、研鑽を積みながらも自分に才能が無いことにもがき苦しむ、人間くさい人物という印象です。初心に返り丁寧に自分なりの氏真を創っていきたいと思います。

関東の雄・北条家から嫁いだ姫
糸
いと
志田未来
今川・北条・武田が三国同盟を結んだ折に、今川氏真に嫁いだ北条氏康の娘。義元亡きあと、家臣たちの裏切りが相次ぐ中、孤独を極める氏真を支える。物静かでおっとりとした性格だが、奥底には北条家の女らしく、強い意志を秘めている。
志田未来さんコメント
多くを語ることのない糸ですが、その中にも強さや優しさ、愛情をたっぷりと感じました。一度嫁いだ身、妻として夫となる今川氏真のそばで、命ある限り支えたいという強い思いに胸を打たれました。その思いを観てくださる方にしっかり届けられるように演じていきたいです。

愛娘には弱い筆頭家老
関口氏純
せきぐち・うじずみ
渡部篤郎
今川義元を支える、気品と強さを兼ね備えた筆頭家老。愛娘・瀬名にだけはめっぽう弱く、人質に過ぎない元信(のちの家康)との恋を容認、婚姻を後押しすることに……。桶狭間の戦いののち、家康が織田方に寝返ると、一転して今川家中で危うい立場に追い込まれる。
渡部篤郎さんコメント
前作から22年ぶりということですが、その時間にはとらわれず臨む次第です。今作の脚本を拝見し、とてもすばらしい作品に参加させてもらえることをうれしく思います。すばらしいエンターテインメントを、皆さまにお届けできるよう尽力いたします。

今川家の品格を守る気高き母
巴
ともえ
真矢ミキ
瀬名の母。今川家につながる出自の高貴な女性。愛娘・瀬名が格下の元信(のちの徳川家康)と結婚することに反対するが、のちに良き理解者となる。今川家を離反した家康と離れ離れになり、幼子を抱えて暮らす瀬名の不安を、精いっぱいに受け止める。
真矢ミキさんコメント
この時代生きる人々は覚悟が違うのだと思います、ですが、子を思う母の気持ちは戦国も今も変わらず大地のように広くあたたかいのだとも思います。平常心で心込めたいです。

瀬名と命運を共にする少女
たね
豊嶋 花
名門関口家の侍女として、瀬名の世話をする。元康(のちの家康)が織田方に転じたことで、瀬名と共に捕らわれの身となる。武家の娘らしく、信念を持ち義理堅く、苦しい中でも瀬名やその子たちを献身的に支え続ける。心細い瀬名にとっては、頼りになる家族のひとり。
豊嶋 花さんコメント
たねは、侍女として名門関口家に仕えているものの、自分の芯をしっかり持った強い少女だと思います。瀬名の側近であるたねは、どんな人だったのか自分の中で想像力を膨らませて、精いっぱい演じたいです。

椿姫と謳われる女城主
お田鶴
おたづ
関水 渚
鵜殿長照の妹。瀬名とは幼少からの友人で、元康(のちの家康)との結婚も祝福。のちに今川と徳川が敵対関係となっても、瀬名との友情関係は続いた。今川家の家臣・飯尾連龍に嫁ぐが、夫亡きあとは城主として曳馬城(のちの浜松城)を守った芯の強い女性。
関水 渚さんコメント
正義感が強く、自分の気持ちに正直で、人に対してもまっすぐ向き合える、そして意志の強い少女という印象です。このすばらしい役を初出演の大河ドラマで演じさせていただけること、大変うれしく思います。お田鶴として生きられる日々を楽しみながら、生き生きと演じたいと思います。

家康と激戦を繰り広げる知将
鵜殿長照
うどの・ながてる
野間口 徹
今川家の重臣。今川と織田の激戦の中、大高城(名古屋市)城代として元康(のちの家康)から兵糧補給の援護を受ける。その後、上ノ郷城(蒲郡市)では、敵となった家康と一大決戦に臨むことに。服部半蔵が繰り出す忍者部隊を翻弄する知性派。
野間口 徹さんコメント
まさか、自分が武将を演じることになるとは。しかも最後まで忠義を尽くす人間で…。初めての役柄、丁寧に演じたいと思います。
音楽
◆稲本 響(ピアニスト・作曲家)

1977年大阪・堺生まれ。3歳でピアノを始め、5歳でステージデビュー。18歳でドイツへ留学し、ピアニストの巨匠:アルフレッド・コルトーの奏法を身につけ独自の改良を加える。本人仕様の特注ピアノ「STEINWAY&SONS(NEW YORK)」を全国の各コンサート会場やレコーディングスタジオに毎回持ち運ぶというスタイルを持つ。また、映画・ドラマ・舞台・CM等の作曲・音楽監督も務める。
主な作品は、映画『長い散歩』『グラスホッパー』、ドラマ「私という運命について」、舞台『海の上のピアニスト』『君と見る千の夢』。本人発明のピアノ音色変換装置「ピアノミュート」は特許取得済(特許第4572092号)。DMG MORIとの共同プロジェクトとしてデジタルコンテンツや製品に使用する音響デザインとオリジナル音楽の制作なども行っている。
NHKにおいては「眩 〜北斎の娘〜」「平成細雪」「ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜」「ノースライト」など。
物語
貧しき小国・三河の岡崎城主・松平広忠の子として生まれた松平元康(のちの家康)は戦乱で父を失い、母とも離れ、駿河の大国・今川家のもとで人質として暮らしていた。今川義元に見込まれた元康は不自由ない生活を保障され、十分な教育も受け、やがて今川家重臣・関口氏純の娘・瀬名と恋に落ちる。そんな今川家に染まる姿を、元康に付き添っていた石川数正、鳥居元忠ら三河の者たちは苦々しく思っていた。
ある日、父の墓参りに三河・岡崎を訪れた元康は、そこで父に仕えていた酒井忠次など旧臣たちと再会。彼らが今川家に不満を抱き、松平家再興の思いがくすぶっていることを知る。しかし、義元を慕う家康にとって、彼らの思いは重荷でもあった。
1560年(永禄3年)、今川義元は、織田領である尾張へ進撃する。元康は妻子たちに別れを告げ、織田軍の攻撃を受ける大高城に、兵糧を送り込む任務に就いた。敵方の猛攻をくぐり抜け、大高城にようやくたどりつき、喜んだのもつかの間、桶狭間から衝撃の知らせが届けられる! しかも、大高城に押し寄せるのは、あの織田信長! 幼いころ、信長と一緒に過ごした時の忌まわしい記憶が、元康の脳裏によみがえる。織田軍に包囲される中、家族が待つ駿河に戻るか、故郷の三河へ進むか、それとも籠城か。
どうする家康!
この決断が、ピンチとガマンの連続、
壮絶な家康の人生の幕開けだった。