フランソワ・トリュフォー監督の長編デビュー作
カンヌ映画祭監督賞を受賞した名作

大人は判ってくれない【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

9月22日(木)[BSプレミアム]後1:00

半世紀以上前、フランスの映画作家たちが斬新な作品を次々発表した“ヌーベルバーグ”。
今回ご紹介するのはその代表作。フランソワ・トリュフォー監督の名作です。

主人公はパリに暮らす少年アントワーヌ・ドワネル。学校では教師に叱られ、家では父と母が口論、自分の居場所のないドワネルはある日、家出をします。友だちのルネと楽しく過ごしますが、やがてお金に困ってタイプライターを盗んでしまいます…。

監督・原案・脚本をてがけたフランソワ・トリュフォーは1932年パリ生まれ。親とは不仲で、孤独な少年時代を過ごし、夢中になったのが映画と読書でした。やがて映画批評家アンドレ・バザンと出会ったトリュフォーは、映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」に先鋭的な批評を執筆します。批評家仲間の中には、先日91歳で亡くなったジャン・リュック・ゴダールや、クロード・シャブロル、ジャック・リヴェット、エリック・ロメールといった、熱狂的な映画好きで、ヌーベルバーグの映画作家となる面々がいました。彼らと友情を育み、映画を作ることを決意したトリュフォー。長編第1作のこの作品はカンヌ映画祭監督賞を受賞するなど絶賛されました。1984年、52歳の若さで亡くなるまでに数々の名作を発表、スティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977)で科学者を演じるなど、俳優としても活躍しました。

トリュフォー監督自身の体験をモチーフにしたこの作品、分身ともいえるドワネルを演じたジャン・ピエール・レオは当時14歳。無理解な大人たち、理不尽な人生に直面しながらも、どうすることもできずにいらだち、非行に走る少年を演技とは思えないほど自然に表現しています。成人してからはゴダール監督やジャン・ユスターシュ監督などの傑作に出演したレオですが、トリュフォー監督とは深い絆で結ばれ、「アントワーヌとコレット<二十歳の恋より>」(1962)、「夜霧の恋人たち」(1968)、「家庭」(1970)、「逃げ去る恋」(1978)と、20年にわたってドワネルを演じ続けました。恋愛体質の何ともダメな大人になっていくドワネル。それでも見るものの心を打つのは、名優レオがドワネルに心から共感し、同化しているからこそだと思います。

ヒリヒリするようなパリの寒さをとらえた映像、切ない音楽も魅力的です。トリュフォーに映画批評家、監督への道を切り開いてくれたアンドレ・バザンは、この映画の前年40歳の若さで亡くなりました。トリュフォーは父親のような存在だったバザンに、この作品を捧げています。
じっくりお楽しみください。

プレミアムシネマ「大人は判ってくれない」

9月22日(木)[BSプレミアム]後1:00〜2:40


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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