全世界で21兆円を売り上げるゲーム業界。ゲームの中で生き生きと動く、精細でリアルなCGキャラクターの動きを生み出しているのは、「モーションアクター」と呼ばれる生身の俳優です。
その第一人者が、古賀 亘さん。これまで700本以上のゲームに関わってきました。
今回、最新ゲームの制作現場に初潜入! 古賀さんが演じるのは、ブルースリーも学んだとされる中国武術詠春拳の使い手から、恐竜のような架空の生物までと超多彩。番組では、これまで明かされてこなかったモーションアクターの実像に迫りながら、世界に誇る日本のゲームを支える影のヒーロー・古賀 亘さんの素顔をドキュメントします。
自身もゲームが好きで、この番組を制作する田中志穂ディレクター(以下、田中D)の解説とともに、番組の魅力を紹介します!

古賀 亘さん(50)
モーションアクターの第一人者で、この道20年のパイオニア。幼いころの夢はジャッキー・チェンのようなスター。15歳のころアクション業界に飛び込んだ。現在はモーションキャプチャー専門の俳優として活動中。これまで関わってきたゲームは、「モンスターハンター:ワールド」「バーチャファイター4」「鉄拳7」「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」など多種多様。妻・桃仁さんも「艦これアーケード」などのモーションアクターとして活躍している。
最 新ゲームの制作現場に潜入!
今回番組が取材を許されたのは、さまざまな新作ゲームの制作現場です。
「“動き”でキャラクターの心を表現したい」
常にそう言葉にする古賀さんの職人技に完全密着しました。
ヒーローの戦闘シーン

古賀さんが挑むのは、敵の攻撃を受けて吹っ飛ぶ人のアクションです。1つ1つの演技に、細かく個性を肉付けしていきながら、納得する表現に近づけるため、仲間たちと何度もそのシーンにチャレンジします。
敵モンスターの動きを研究

次に古賀さんが演じるのは、するどい爪と牙を持つ恐竜のような敵モンスター。180パターン以上の動きに挑みます。“人っぽくない動き”をするにはどうしたらいいのか? モンスターの骨格から“人じゃない生き物”の仕草までも研究し、リアルな動きを追求します。
拳法の動きをゲームに昇華

近年、モーションアクターに求められ始めているのは、派手な演技だけではなく、よりリアルに近いアクション。今回古賀さんは、新作の撮影に向けて、実戦的なカンフーと呼ばれる中国武術・詠春拳の習得に励みます。自身が培ってきたアレンジも加え、ゲームの動きにどのように昇華させるのでしょうか。
田中Dのワンポイント解説
取材をしていて一番印象に残っているのは、古賀さんの仕事に対する熱さとパワフルさです。アクションや演技をおもしろがる心を忘れず、収録が終わるといつも「あ~楽しかった!」と言って帰られるんです。モーションアクターのパイオニアとして、20年もの間、前線で活躍できる“力の源”は一体何なのか。常に前向きで明るい、古賀さんのお人柄も含めて見ていただけるとうれしいです。
いま、年間にものすごい数のゲームが生み出されています。ゲームを作る人々は、そのひとつひとつに膨大な時間をかけて制作されています。今回取材させていただいた現場でも、モーションアクターの方々がひとつずつ大切に演技し、クリエーターの方々が動きを整え、声優さんが声を入れ、何段階もの過程を踏むことで、キャラクターを生み出されていました。今回ありがたいことに、そうした制作の裏側の部分も取材させていただいたので、ゲームが好きな方にもわくわくしていただけたらなと思います。
モ ーションアクターのスクールを開校
古賀さんは、この仕事の魅力を伝えるため、2年前にモーションアクター専門のスクールを立ち上げました。そこに通うのは、新たなモーションアクターを目指す9名の若者たちでした。

演技やアクションが得意な生徒もいれば、感情を表現するのが苦手な生徒もいます。「誰でも最初は素人」。古賀さんは、生徒たちに実践をまじえながら熱いエールを送ります。

田中Dのワンポイント解説
モーションアクターという言葉がなかった時代から、ゲーム業界の発展とともに道なき道を切り開かれてきた古賀さん。培ってきた技術や思いを、次世代の若者たちに引き継ごうとされる姿にも密着させていただきました。モーションアクターになるためには何が必要なのか。なぜ、ただ“動き”をこなすだけではだめなのか。古賀さんが生徒さんたちにぶつける言葉は、ご自身の経験から導き出された“人生のメッセージ”のようで、私自身も学ばせていただくことが多かったです。


田中Dのワンポイント解説
番組制作のきっかけは、大好きなゲームのキャラクターたちにモーションアクターと呼ばれる“動き”のもととなる人々がいることを知り、興味を抱いたことでした。取材を進め辿り着いたのが、20年もの間ゲームを支え続けてきた古賀さんでした。どれだけ技術が進歩しゲームCGの表現力があがっても、その裏側には必ず、モーションアクターをはじめとした、汗をかき知恵を絞る“人間”の姿がある。最新のゲーム制作現場を取材させていただきながら実感したのは、先進的なテクノロジーとはある意味で対照的な、熱い人間ドラマでした。
今年50歳になられた古賀さんが、今もなお夢を追い続ける姿を、ゲームファンの方々はもちろん、ふだんゲームが身近にない方々にも、見て、何か感じていただけたらうれしいなと思います。


「顔の見えないヒーロー ~モーションアクター 古賀亘~」
【放送予定】
11月23日(水・祝)[BS1]後9:00~9:49