若き医師たち 成長の記録 語りは田中 圭

こうして僕らは医師になる~沖縄県立中部病院 研修医たちの10年~

12月3日(土)[BS1]後8:00~9:40

2012年、厳しい研修指導で知られる沖縄県立中部病院の研修医たちを密着取材したドキュメンタリー「こうして僕らは医師になる~沖縄県立中部病院 研修日記」が放送され大きな反響を呼びました。10年の時を経た今、30~40代となった彼らにカメラを向けると、そこに映し出されていたのは医療現場の最前線で壁にぶつかりながらも患者と向き合う医師たちの姿でした。

制作を担当した下村幸子プロデューサーの解説とともに続編となる今回の見どころを紹介しながら、前作に続いて語りを務める俳優の田中 圭さんからのメッセージもお届けします。

「何でも診られる医師」を育てる実践主義の研修医制度

番組に登場する医師たちの原点となっているのが、沖縄県うるま市にある沖縄県立中部病院での初期研修。戦後、沖縄では医師不足が続いていました。それを解消するために導入されたのが、アメリカ式の研修医制度です。中部病院の研修制度は、徹底した実践主義で知られ、頭で考えるよりも実際に患者と向き合うことで、技術を体にしみこませて学ぶことを目的としていました。

そんな臨床重視の研修で腕を磨こうと、全国各地の医学部を卒業した若者たちが集まってきます。

中部病院の研修方針は「何でも診られる医師」を育成すること。
10年前の取材では、救急救命センター(ER)から医師としての第一歩を踏み出した研修医たちが、先輩に叱られたり悩みながらも、がむしゃらに奮闘する姿を見つめました。

今回は、当時研修医だった4人の医師たちの現在地に光を当てます。

10年前の取材時には、血管に針を入れるのにも苦戦していた研修医たちも今や中堅医師に。

下村Pの取材メモ

前回の番組の最後に研修医の皆さんに10年後の自分へのメッセージを伺い、そのときから再び取材したいという思いを抱いていました。というのも、以前、私の先輩が同じ人を10年ごとに取材したドキュメンタリー番組を制作し、私もディレクターとして携わったのですが、一人の人生が10年でこんなにも大きく変わるんだと実感したんです。その経験も相まって、医師という命を預かる現場の人々がどう変わっていくのかを追いかけるべく、ことしの4月から取材を始めました。

彼らとはコンタクトを取り続けてきましたが、現場を取材するのは実に10年ぶり。
当時は血管に針を入れるのにも悪戦苦闘していた彼らが、各分野の第一線で活躍されている姿を目の当たりにして感慨深いものがありました。ただ、何とか患者さんを救いたい、患者さんのための医療を行いたいという志が10年前とまったく変わっていなかったのは、中部病院の教育の賜物たまものだなと思いましたね。

患者一人一人と真剣に向き合う医師たちの“中部スピリット”が、これから医療の道に進もうとしている方や現在闘病していらっしゃる患者さんに少しでも伝わればという願いを込めて制作しました。

パンデミックに立ち向かう医師たちの奮闘

下村Pが最初に取材したのは、国立広島大学病院の救急集中治療科の錦見満曉(にしきみ・みつあき)医師。中部病院での研修を終えた錦見医師は、念願だった脳外科医としてキャリアを重ねていましたが、アメリカに渡り救急医療の道へ進みました。その背景には、どんな心境の変化があったのでしょうか?

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、重症患者の「最後の切り札」ともいわれるエクモ(体外式膜型人工肺)のエキスパートとして昼夜治療にあたる錦見さん。その奮闘を通して、コロナ治療の現実に迫ります。

ほかの病院では対処できない重症患者が運ばれてくる国立広島大学病院の救急集中治療科。エクモによる治療にあたる錦見さんは、常に患者の状態に異変がないか神経をとがらせている。

そして沖縄県のコロナ対策の中核を担う中部病院でも、感染症内科の横山周平医師が懸命にパンデミックと闘っていました。患者で病床がいっぱいになる中、高齢者施設などを回って感染対策を指導し、病院と介護施設の連携強化に奔走する横山さん。
一方で、患者との対話に重きを置き、一人一人の生活状態に合った治療を探る様子を紹介します。

生死に関わるさまざまな感染症と対じする中、指導医となった横山周平さんが、不安や葛藤を抱える研修医たちをどのように導くのかにも注目。

離島での経験が現在の糧に

中部病院では、研修を終えた医師たちを離島に派遣する取り組みを行っています。現在、神奈川県で在宅医として診療を行っている長嶺由衣子医師もその一人。10年前、島民の3分の1を高齢者が占める離島に派遣され、2年もの間たった一人で島の医療を支えました。島での経験から、地域の人々と密接に関わり信頼関係を築くことで、医療の質をより向上させられることを学び在宅医療の道へ進んだ長嶺さん。さまざまな事情から自宅で診療を受ける患者たちとの心の交流に光を当てます。

診療が終わると、患者の家族を交え、たわいないおしゃべりをしたりお茶を飲んだりしながら、コミュニケーションを深める長嶺さん。

一方、島での経験が思わぬ形で現在のキャリアにつながっている医師もいます。国立がん研究センターの横山和樹医師は、中部病院での研修医時代から人の死とどう向き合うべきか悩み続け、赴任先の離島であるがん患者と出会ったことなどをきっかけにがんの専門医を目指しました。腫瘍内科医として治療と研究に明け暮れる横山さんが、研究が進まない焦りや葛藤を抱えながらも患者と寄り添い、ともにがんと闘う姿を追います。

横山和樹さんが治療を担当するのは頭頸部がん。新たな治療の研究に励む今も、患者一人一人に合わせた治療や診察をモットーにする姿勢は変わらない。

下村Pの取材メモ

私は長年在宅医療の現場を取材してきたので、患者の希望に沿った医療を行う在宅医療と、失われかけている命を救うために手を尽くす救急医療は対極にあるものだと考えていました。ですから正直なところ、エクモを装着した患者さんを最初に取材したときは、たくさんのチューブにつながれている姿を見て抵抗があったんです。

でも取材を続ける中で、一時は助からないかもしれないと危惧されていた患者さんが先生たちの懸命な治療で回復し、食事や会話ができるようになっていく光景を目の当たりにし、命を救うことの大切さを改めて感じました。エクモによる治療は、装着や離脱だけでなく患者さんの状態を管理するのが非常に難しく、24時間体制で挑まなければならない大変な治療なんですね。それでも何とか命をつなぎたいという皆さんの熱意と、患者さん自身の生きようとする生命力に感銘を受けました。

重症化したコロナ治療の難しさも浮き彫りに。

専門分野によってアプローチはそれぞれ違っても、どの先生も患者の命を扱うという同じゴールに向かって活動されているんだなということに気づかされました。

医療って誰もが必ずお世話になるものなのに、どこか医者と患者との間に距離感があるような気がするんですね。でも、医師だって一人の人間です。私たちと同じように悩んだり、つまずいたりすることもあると思うんです。そんな彼らが何を考え、どこを目指して進んでいるのか――。
そうしたことも含めて、それぞれの医師たちの生身の姿が皆さんに伝われば幸いです。

中部病院で厳しい研修を乗り越えた友と久々に再会し、今後の目標を熱く語る横山和樹さん。人間味あふれる医師たちの素顔も生き生きと映し出されている。

ナレーション 田中 圭 さんから メッセージ

この番組は、医師を目指す人、そして現在医師である皆さんを心から尊敬するきっかけになった作品です。

10年ぶりにナレーションをさせていただき、当時のことを思い出しましたし、一緒に10年、みんな頑張っているんだな!とうれしくもなりました。
そしてみんなの成長を目の当たりにし、経験もいろいろ積んできて頼りがいは増しているのに、それでいて熱意はあのころと変わっていないことに尊敬と驚きを覚えました。

コロナ治療の現場は、実際に身近に起きた出来事なので特に強く印象に残っています。
最終治療手段とされているエクモを実際に処置されているのを見て、本当に医師も患者も精いっぱい頑張っているんだなと思いました。また、一人一人の患者に対して誠実に向き合っている皆さんの姿に、心が救われました。

ショッキングな映像や出来事もありますが、命の大切さや、病気と戦うということ、そしてそこには医師という僕らの味方になってくれる皆さんがいるということが伝わると思います。
大人はもちろんですが、子どもたちにも見せたい番組です。ぜひ見てみてください。

「こうして僕らは医師になる~沖縄県立中部病院 研修医たちの10年~」

【放送予定】12月3日(土)[BS1]後8:00~9:40

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