戦後最大のミステリー「帝銀事件」の新たな真実に迫る衝撃のドキュメンタリー

NHKスペシャル 未解決事件 松本清張と帝銀事件

第1部ドラマ 事件と清張の闘い 12月29日(木)[総合]後9:00~10:30

【作】安達奈緒子 【音楽】川井憲次
【出演】大沢たかお、要潤、井川 遥、迫田孝也、榎木孝明、佐野史郎、豊原功補 ほか

第2部 74年目の“真相”(ドキュメンタリー) 12月30日(金)[総合]後9:00~10:00

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戦後最大のミステリーと言われる占領期の闇「帝銀事件」と、その謎に挑んだ作家・松本清張の知られざる闘いに迫るNHKペシャル「シリーズ 未解決事件」の第9弾。

事件の真相究明に奔走する清張の姿を描いた第1部のドラマ(→第1部の紹介記事はこちら)に続き、第2部のドキュメンタリーでは、6年におよぶ取材と検証で、事件の「謎」に挑みます。

清張の没後30年にあたる2022年。取材班は、彼が暴こうとした“闇”にどこまでたどりついたのか──。取材を担当した中川雄一朗ディレクターと企画の立ち上げからドラマ・ドキュメンタリー双方の制作を担当した新名洋介ディレクターのコメントを交え、第2部の見どころを紹介します。

帝銀事件 とは

事件DATA

発生日時:1948(昭和23)年1月26日

事件現場:帝国銀行椎名町支店(東京・豊島区)

事件の概要:厚生省技官を名乗る男が「近くで集団赤痢が発生したので予防薬を飲んでほしい」と言って行員らに液体を飲ませ、12人を殺害。男は、現金と小切手を盗んで立ち去った。

事件後:同年8月21日、画家・平沢貞通を逮捕。平沢は裁判で無罪を主張するも死刑が確定。1987(昭和62)年に獄中死するまで無実を訴え続けた。

Point1 真犯人はほかにいる!?
“平沢=犯人”の矛盾点を検証

帝銀事件の犯人とされている平沢貞通。平沢本人が獄中死した現在も、支援者や弁護団によって再審請求が続いている。

犯人みずからが手本を見せて毒物を飲ませ殺害するという巧妙かつ凄惨せいさんな手口で日本中を揺るがしたこの事件には、いまだ解明されていない多くの謎が残されています。

その謎の1つが、犯人とされた平沢貞通の自白。当初犯行を否認していた平沢は、一転して犯行を自供するも裁判では再び無罪を主張しました。一体なぜ、平沢は供述を二転三転させたのでしょうか? 供述記録を当時は不可能だった技術で徹底解析し、その謎に迫ります。

中川Dの取材メモ

今回、私たちが注目した点は大きく分けて2つ。1つは本当に平沢が犯人なのかどうかという点です。

平沢は、明確な物的証拠がないまま、取り調べでの自白が決め手となり有罪とされました。そこには多くの疑問や矛盾が生じるのですが、取材を進めると、その疑問をより深める資料が新たに見つかったんです。

さらに、74年経った今だからこそ発掘された貴重な資料や音声、映像を手がかりに、犯行に使用された毒物の正体や疑惑の人物などにもフォーカスします。

Point2 GHQの関与はあったのか?
事件の背後に戦争の影

帝銀事件を検証するうえで、もう1つ注目しなければならない大事なポイントは、事件発生当時の1948年、日本が連合国軍の占領下にあり、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が警察や報道機関に絶大な影響力を持っていた時代だったという点です。

当初、警察は軍関係者による犯行と見て捜査していましたが、突如、捜査方針を転換し平沢=犯人へとかじを切りました。この点に疑問を感じ、GHQの関与をいち早く唱えたのが松本清張でした。清張が追っていた警察やGHQの動向に着目しながら、戦後の日本を取り巻く当時の社会情勢に光を当てます。

中川Dの取材メモ

これまでの「シリーズ 未解決事件」の中で帝銀事件は最も昔の事件なので、当時の捜査状況を知る方が少なくなってきていますし、どんな事件だったのか知らない方のほうが多いかもしれません。

そんな中、今も平沢の無念を晴らそうと裁判のやり直しを求めている人々がいます。どう伝えたらこの事件の本質を多くの人に知ってもらえるだろうと考えながら取材を重ねてきました。

今回の取材ですべての真相が明らかになったわけでは、ありません。ただ、日本の戦後社会の起点となる時代に起きたこの事件を検証することで、戦後の日本の闇や、矛盾、問題点が浮き彫りになったように感じます。それは現代にも通ずる部分だと思うので、遠い時代の話ではなく身近な問題として感じながらご覧いただければ幸いです。

新名洋介 ディレクター メッセージ

2016年ごろ、最初に企画を提案したときは、帝銀事件を含め日本の占領期に起きたいくつかの未解決事件に焦点を当てようと思っていたんです。しかしその後、ドラマの演出を担当した梶原登城ディレクターと話していたときに、松本清張自身の生きざまと彼の視点で見つめた帝銀事件をテーマにしたらどうだろうという話になって。没後30年となる2022年の放送に向け制作が始動し、松本家の皆さんや文藝春秋の関係者をはじめ、清張先生をよく知る方々のご協力のもと細部まで取材させていただきました。

未解決事件には未解決のままになっている理由が必ずあるはずなので、今回も何が障壁になっていたのか、“未解決であること”が今の時代にどんな影を落としているのか、という部分にこだわって取材を積み重ねてきました。また、清張作品は、何十年も前に書かれたものなのに色あせることなく現代性を感じさせるテーマが大きな魅力だと思うので、ドラマもドキュメンタリーも現代性を意識して制作しています。

ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、戦争や国の在り方などさまざまな問題について考えさせられる機会の多かった2022年は、まさに清張先生が問い続けてきたテーマとリンクする1年だったのではないでしょうか。年の瀬、この番組が激動の1年を振り返るきっかけになればと願っています。

NHKスペシャル 未解決事件 松本清張と帝銀事件

【放送予定】
第1部ドラマ 事件と清張の闘い 12月29日(木)[総合]後9:00~10:30
第2部 74年目の“真相”(ドキュメンタリー) 12月30日(金)[総合]後9:00~10:00

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関連番組情報

新作の放送に合わせて、過去の「シリーズ 未解決事件」を3本連続アンコール放送します。

「File.08 JFK暗殺・前編」12月28日(水)[総合]後11:50~翌前0:50

「File.08 JFK暗殺・後編」12月29日(木)[総合]前0:51~1:45 ※水曜深夜

「File.03 尼崎殺人死体遺棄事件」12月29日(木)[総合]前1:46~3:15 ※水曜深夜

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