東京で暮らす29歳の女性は同窓会で何を語る?

29歳の同窓会 東京・ある女子校の卒業生たち

1月28日(土)[BS1]後9:00~9:49

東京都心のとある女子校には、卒業10年後に母校で集い、「それぞれの10年」を語り合う伝統の同窓会があります。

2022年の同窓会はコロナ禍で一年遅れ、29歳という仕事でもプライベートでもさまざまな転機を迎える卒業生が集まりました。
彼女たちはバブルが崩壊した少し後の1993年〜94年生まれ。2011年東日本大震災の翌年に高校を卒業。スマートフォン・SNSが世界を変えジェンダー観が揺れ動いた2010年代を生きてきました。

高校卒業後11年という節目で行われる「同窓会」を舞台に、今の日本で生きる「29歳の女性たちのリアル」を見つめていきます。

今回は、番組ディレクターの中西 朋さんに見どころを聞いてきました。

これが私たちの生きる道!

同窓会の舞台は、東京都心にある中高一貫の品川女子学院です。

この女子校は、社会で働く女性を育てることを目指しておよそ100年前に創立されました。当時の女性には参政権がなく、「いつの日かこの国にも女性も男性と同じように好きな仕事をして活躍できる時代が来るはず。そのときのために種をまこう」という創立者たちの理想がありました。それは与謝野晶子が作詞した校歌に込められ、今も歌い継がれています。

いつもは10代の声であふれる校舎の入り口に、この日だけは29歳になる卒業生の姿が。学年のおよそ半数にあたる90人以上が集まりました。

彼女たちの29年間は、1990年代バブル崩壊からの経済成長が止まったとされる “失われた30年”とも重なります。果たして彼女たちの感じてきたリアルとは?

自らの人生を選択して
生きていく女性たち

“品女精神”を支えに
新たな夢を追うインフルエンサー すずさん

同級生は彼女のことを「破天荒」「やばいのの代表」と表現しました。確かに高校卒業後の人生は波乱万丈。現在は、Youtubeやインスタグラムで活躍する人気インフルエンサーです。

シングルマザーとして子育てもするという彼女の見た2010年代は?
2015年ごろに待機児童問題などについて痛烈な声をあげ社会を騒がせたブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」など世相も絡めて彼女の高校卒業後の生きざまを見つめます。

中西Dの取材メモ

彼女を取材していて印象的だったのは、「男受けか女受けかで言うと、絶対女受けしたい」と言っていたことです。例えば合コンなど異性が集まるところでも、こびたりせず下ネタを言ったり、大はしゃぎすることは、彼女が女子校のころからやっていたことだったそうで、インタビューでも自分の考えをそんたくなしに率直に話します。彼女の一貫した姿勢が世の中をひきつけて、今ではチャンネルの登録者は40万人以上。彼女の今を見つめ、そのたくましい生き方を描きました。

自分の生き方を模索する
勉強コンプレックスの横田かほさん

学年に2人しかいない特待生で、東京大学を本気で目指していた彼女。意外なことに、勉強のできる自分が大嫌いだったといいます。進路を巡り、父親との折り合いも悪くなり20歳でひとり暮らし。そのころから、「私にしかできない仕事」を探し始めます。現在は「自分の人生を肯定できた」という仕事を見つけ、未来を見つめています。

中西Dの取材メモ

彼女は、勉強をしてきたこれまでとは違う道を模索して、“自分にしかできない仕事”を追い求めているんですね。“品女”の理念でもある「女性が社会で活躍できる時代がきたときのために種をまこう」が現実となり、現代的な生き方をしているなと思いました。同時に“働く”だけでは満足せず“自分にしかできない仕事”を追い求める……。女性が社会に出て働くことが当たり前になったその先に生まれた新しい葛藤だと感じました。彼女の悩みには共感する方がとても多いと思います。

ほかにも番組には、人生を自らの手で選択してきた卒業生が登場します。

働くことで笑顔になれたという女性、仕事と家庭のどちらも手に入れた女性、学生時代から好きなことを模索してきた女性など、さまざまな29歳を等身大に描いていきます。

中西Dの取材メモ

「働くことで笑顔になれた」と言っていた女性は、自分の夢をかなえ、「仕事をすることで自分を好きになれた」と話してくれました。また、仕事も家庭も諦めなくていいように丁寧に人生の選択をしてきたと話してくれた女性、「生き方の選択肢が増えたいま、29歳で人生は決まらない」とアンケートに書いてきてくれた女性など。今回、彼女たちの夫や恋人にもインタビューを受けていただきましたが、女性の生き方が変わりゆくのと同時に、男性の生き方や考え方も変わっていることにも気付けました。女性はもちろん、ぜひ男性にも見てほしいなと思います。

映像や見せ方にも工夫あり

29歳の女性を多角的に表現するため、ミュージックビデオやコマーシャルで活躍するカメラマンと、ドキュメンタリーを得意とするカメラマンを織り交ぜて撮影しています。
頑張っているステキな女性たちの笑顔や真剣な表情を印象的にとらえています。

また、彼女たちの声を直に聞いてほしいという理由で、ナレーションは必要最低限。彼女たちの言葉を中心に、都市部で生きている29歳女性の輝きと葛藤をご覧ください。

視聴者へメッセージ

中西D

ダンスに青春をかける高校生を追った「勝敗を越えた夏2021~ドキュメント日本高校ダンス部選手権~」の撮影で品川女子学院を訪れていたころ。ディレクター仲間の大島有美子さんという“品女”卒業生から伝統行事である「10年後の同窓会」の話を聞いたことが、今回の企画が生まれたきっかけでした。取材当初は、例えば「日本のジェンダーギャップ指数は先進国最低」というような悪いニュースを見て、「今の若い女性は生きにくいのだろう」という前提がありました。しかし、実際取材を重ねてみると、それぞれが自分にできることを探して、悩みを抱えながらもイキイキとした魅力あふれる29歳でした。(無視できない社会問題は山積みですが)彼女たちは、多様になった社会の可能性を模索しながら生きていますし、工夫次第で人はいくらでも幸せになれるというメッセージを受け取りながら人生を撮影させてもらいました。番組を見てくださる皆さんには、自分の学生生活とも重ねて「あの子どうしてるかな?」と思い返したりしながら見ていただけるとうれしいです。


29歳の同窓会 東京・ある女子校の卒業生たち

【放送予定】
1月28日(土)[BS1]後9:00~9:49

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